Leonard Cohen - Songs Of Leonard Cohen (1968)
Leonard Cohen 1968

Leonard Cohen - Songs Of Leonard Cohen (1968)

Folk, World, & Country Folk

Leonard Cohen『Songs Of Leonard Cohen』について

Leonard Cohenの『Songs Of Leonard Cohen』は、1967年12月27日にリリースされたデビュー・スタジオ・アルバムで、翌1968年に広く流通した初期の代表作として扱われる作品だ。詩人としてすでに名を知られていたCohenが、フォーク・シーンに本格的に入ってきた最初の一枚でもある。もともと詩と小説で評価を得ていた人物が、自作の言葉を歌として提示したところに、このアルバムの出発点がある。

このUS盤はColumbiaのCS 9533。赤い“two-eye”の360 Degree Soundラベルが確認できる初回プレスで、歌詞シートが付属する仕様。ラベル上部にはStereo CS 9533とMono CL 2733の表記があり、当時のColumbiaらしいモノラル/ステレオ併売期の空気が残っている。ランアウトにはCustomatrix系の判別材料が見当たらないという点も、初期盤らしい情報として押さえておきたい。

作品の位置づけ

Cohenは1967年にアメリカへ移り、フォーク・ミュージシャンとして活動を始めた。そんなタイミングで出た本作は、作家としてのCohenと、歌い手としてのCohenが重なった最初期の記録になる。のちの作品で見られる語り口、距離感のある視線、宗教的・文学的な比喩は、この時点ですでにかなりはっきりしている。

収録曲では「Suzanne」「Sisters of Mercy」「So Long, Marianne」「Hey, That’s No Way to Say Goodbye」などがよく知られている。特に「Suzanne」は、1966年の詩「Suzanne Takes You Down」をもとにした曲で、ジュディ・コリンズが先に録音していたことでも知られる。Cohen自身の歌では、言葉の切れ目や間の取り方が前に出て、旋律よりも文章の流れが先に立つ印象が強い。「So Long, Marianne」や「Hey, That’s No Way to Say Goodbye」も、ヒドラ島で出会ったマリアンヌ・イーレンとの関係を背景にしたとされる曲として語られてきた。

編曲と制作の話

制作面では、ジョン・ハモンドがCohenをコロンビアに結びつけたものの、体調不良でプロデューサーがジョン・サイモンに交代したという経緯がある。Cohenは簡素で静かな伴奏を望んでいた一方、サイモンはストリングスやホルンを加えた編曲を志向し、両者の意図にはずれがあったと伝えられる。完成盤に対してCohen自身が「Suzanne」の編曲を過剰と感じたり、「Hey, That’s No Way to Say Goodbye」を軟弱すぎると評した、というエピソードも残っている。

実際に聴くと、歌詞の輪郭がかなり前面に出る。声は大きく張り上げないが、語尾の置き方やフレーズの区切りで意味が変わるタイプの歌唱だ。伴奏は派手に動き回らず、曲によっては弦やコーラスが入っても、中心にあるのはあくまで言葉の密度。フォークの形式を使いながら、単純なシンガー・ソングライター作品とは少し違う場所に立っている。

同時代の文脈

1960年代後半のフォークは、ボブ・ディラン以降の流れの中で、歌詞の自立性が強く意識されていた時代だ。その中でCohenは、ディランほど荒さを前面に出さず、むしろ文学的な語彙と静かな語りで勝負している。ジョニ・ミッチェルやニック・ドレイクのように、後年再評価が進むタイプの作家性とも並べて語られることが多いが、Cohenはさらに詩人としての経歴が前景化している点で独特だ。

発表当時の評価は割れた。ローリング・ストーン誌のアーサー・シュミットは厳しい評価を下した一方、のちの再評価はかなり高く、Pitchforkは9.6点、AllMusicは5つ星を与えている。商業面では米国よりヨーロッパで支持が厚く、UKアルバムチャートでは最高13位を記録し、1年以上ランクインし続けた。米Billboard 200では83位にとどまったが、英・米・カナダ・仏・独・スイスでゴールド、オーストラリアでプラチナを獲得している。

この盤で聴こえるもの

この1968年US初回盤は、Cohenのデビュー作が持つ初期の輪郭をそのまま伝える一枚だ。後年の録音よりも素朴で、録音の空気感も含めて、言葉の置かれ方がよく見える。代表曲の原型を、過度に磨かれていない状態で聴けるのが大きい。Cohenのキャリアを追う上では、ここが出発点としてかなり重要な位置にある。

トラックリスト

  1. A1 Suzanne
  2. A2 Master Song
  3. A3 Winter Lady
  4. A4 The Stranger Song
  5. A5 Sisters Of Mercy
  6. B1 So Long, Marianne
  7. B2 Hey, That's No Way To Say Goodbye
  8. B3 Stories Of The Street
  9. B4 Teachers
  10. B5 One Of Us Cannot Be Wrong

動画プレイリスト

公開: 2026年8月
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