Altın Gün - Gece (2019)
Altın Gün『Gece』(2019)について
Altın Günの『Gece』は、アムステルダムを拠点に活動するトルコ系サイケ・フォーク・バンドが、2019年にGlitterbeatから発表した2作目のアルバムである。70年代のトルコ・サイケデリックやアナトリアン・フォークの流れを、現代の録音感覚とバンド編成で再構成した作品として知られている。前作『On』で注目を集めた後、その延長線上でさらに輪郭をはっきりさせた一枚、という位置づけがしっくりくる。
メンバーはJasper Verhulst(bass)、Thijs Elzinga(guitar)、Erdinc Ecevit(vocals, saz, keys)、Chris Bruining(percussion)、Daniel Smienk(drums)らを中心にした編成。トルコの伝統音楽に根を持ちながら、ロック、ファンク、現代的な録音の感触を前面に出している点が、このバンドの大きな特徴である。アムステルダム発という出自も含めて、地域のフォークをそのまま保存するのではなく、都市のバンド感覚で組み替えているのが面白いところだ。
作品の立ち位置
『Gece』は、Altın Günにとって初期の代表作として扱われることが多い。デビュー作『On』で見せた方向性を保ちながら、演奏の推進力やアンサンブルのまとまりがより強く出ている。制作面ではNYのATO Recordsとも関わりを持ちつつ、国際的なリスナーに届く規模へと一気に広がった時期の作品でもある。後に2020年のグラミー賞でBest World Music Album部門にノミネートされたことからも、この時期の評価の高さがうかがえる。
収録内容では、伝統曲を軸にしつつ、オリジナル曲として「Şoför Bey」が含まれている点が目を引く。全体としては民謡の素材をそのまま並べるというより、バンドとしての一体感の中で再解釈していく構成になっている。古い旋律の持つ反復性と、ロックのリズムの押し出しが自然に重なっていく流れが、このアルバムの核だろう。
サウンドの特徴
AllMusicでは、Jasper VerhulstがBarış Manço、Selda Bağcan、Erkin Korayらからの影響を意識しつつ、シンセや現代的な録音技法とトルコの楽器を組み合わせている点が触れられている。実際、『Gece』を聴くと、電気サズの音色、打楽器の細かな動き、そして女性/男性のツイン・ヴォーカルが、曲ごとの輪郭をはっきり作っているのがわかる。録音は密度がありながら、各パートが埋もれにくい。
とくにリズムの進み方が印象に残る。ファンク寄りの反復がある一方で、単純なグルーヴの押し切りにはならず、フォーク由来の旋律が常に前に出てくる。そのため、ロックやワールド・ミュージックの文脈で語られることが多くても、聴感上はかなりバンド音楽としてまとまっている。サイケデリックという言葉がつきやすいが、音の広がりよりも、演奏の推進力で引っ張るタイプの作品だ。
同時代の文脈
Altın Günが参照しているのは、トルコの1970年代サイケ・ロックやアナトリアン・フォークの系譜である。Barış Manço、Erkin Koray、Selda Bağcanといった名前が挙がるのも自然で、彼らの楽曲が持っていた大衆性と実験性の両方を、現代のバンド編成で再提示している。近い文脈では、欧米のインディーやサイケ・ロックの聴き手にも届きやすい形に整えられている点が特徴的だ。
Bandcampの紹介でも、『Gece』はデビュー作『On』に続いて一気に注目が広がった作品として扱われている。映像の拡散をきっかけに国際的な認知が進んだことも、このバンドらしい広がり方だったと言えそうだ。伝統曲の再演でありながら、単なる復古ではなく、現在進行形のバンドとして鳴っているところに評価が集まったのだろう。
盤の仕様について
この2019年盤は、シュリンク包装のカバーに前面ステッカーが2枚付いた仕様で、インナー・スリーブにはダウンロードコードが貼付されている。レーベルはGlitterbeat、カタログ番号はGBLP-072。Glitterbeatは2012年にGlitterhouse Recordsのサブレーベルとして始まり、のちに独立したレーベルで、アフリカ以外も含むグローバル・サウンドを扱うことで知られている。Altın Günのようなバンドは、そのレーベルの方向性をよく示す存在でもある。
まとめ
『Gece』は、Altın Günがトルコの民謡やサイケデリック・ロックの遺産を、2019年時点のバンド・サウンドとして再構成したアルバムである。伝統曲の素材感、電気サズの響き、タイトなリズム隊、男女ヴォーカルの組み合わせが、作品全体の軸になっている。後年の評価やグラミー・ノミネートまで含めると、この作品はバンドの初期を代表する一枚として見てよさそうだ。
トラックリスト
- A1 Yolcu
- A2 Vay Dünya
- A3 Leyla
- A4 Anlatmam Derdimi
- A5 Şoför Bey
- B1 Derdimi Dökersem
- B2 Kolbastı
- B3 Ervah-ı Ezelde
- B4 Gesi Bağları
- B5 Süpürgesi Yoncadan