Marianne Faithfull - Marianne Faithfull (1965)
Marianne Faithfull 1965

Marianne Faithfull - Marianne Faithfull (1965)

Rock Pop Folk, World, & Country Ballad

Marianne Faithfull『Marianne Faithfull』(1965) レコード紹介

マリアンヌ・フェイスフルのデビュー・アルバム『Marianne Faithfull』は、1965年のUK Deccaから登場した作品で、当時18歳の彼女の初期像をそのまま記録したような1枚だ。のちにダークで内省的な表現者として語られることの多い彼女だが、このアルバムでは、1960年代半ばのロンドン・ポップの空気の中で、やや端正で、曲によってはかなり可憐な歌声を聴かせている。作品の性格としては、同時期に出たフォーク寄りの『Come My Way』と並ぶデビュー期の重要作であり、こちらはよりポップ寄りの立ち位置にある。

UKオリジナル盤はDeccaのカタログ番号LK 4689で、モノラルのみのリリース。録音はロンドンのLansdowne StudiosとDecca No. 2 Studioで行われた。レーベルはDecca、リリース国はUK。ジャケットと盤面の番号表記が異なり、カバーに最初のカタログ番号、ラベルに2つ目の番号が入る仕様も、この時代の英Deccaらしいところだ。60年代中期の英ポップLPとしては、こうした細かな表記差がコレクター目線では重要になる。

作品の位置づけ

このアルバムの中心にあるのは、当時のヒット曲や話題曲を軸にした構成だ。代表曲としてまず挙がるのは「As Tears Go By」。もともとローリング・ストーンズ周辺の文脈でも知られるこの曲は、Faithfullの初期キャリアを決定づけた1曲で、彼女の名前を広く知らしめた重要な楽曲だろう。ほかにも「Come and Stay With Me」など、1965年前後のシングル期を支えた曲が並ぶ。アルバム全体としては、のちの彼女の作品に見られるような強い個性の前段階というより、当時の英国ポップのフォーマットの中で歌い手としての輪郭が見える内容になっている。

制作面ではMike Leanderが関わり、バロック・ポップ的な編曲が入ることで、単なる歌唱集以上のまとまりが出ている。フレンチ・ポップの気配もあり、60年代半ばのロンドンで流行していた上品な編曲感覚がよく出た一枚といえる。カバー曲とオリジナル曲を混ぜながら、当時のヒット・シングルとアルバム用の流れをつないでいく作りで、シングル中心の時代らしさもはっきりしている。

UK盤の表記とマトリクスの違い

このUK 1965年盤には複数のラベル差異があり、同じカバーでも判別ポイントがいくつかある。今回の盤は、ラベル上のマトリクス表記に括弧がなく、価格コードはK/T、B2の出版社表記がMills、BIEM/NCB表記が右側、M.C.P.S.表記がB面でRSの下に中央配置という特徴を持つ。60年代Deccaの初回期らしい細部で、同じタイトルでもラベル違いが複数存在するあたりに、当時のプレス事情が見えてくる。

なお、同年UK盤には、出版社表記やマトリクスの括弧有無、価格コードの有無などで別バリエーションも確認されている。こうした差は音そのものより、プレスや流通の段階で生じた表記の違いとして見るのが自然だ。

US盤との違い

アメリカではLondon Recordsから別アートワーク、別曲順で出ており、LL 3423のモノ盤とPS 423のステレオ盤が存在した。US盤では「This Little Bird」が入る一方で、「Down Town」「Can’t You Hear My Heartbeat」「They Never Will Leave You」は外されている。つまり、同じ1965年作品でも、UK盤とUS盤ではアルバムの顔つきがかなり違う。さらにやや紛らわしいことに、UKフロントカバーの画像が別の1965年USリリースにも使われているため、見た目だけで判断しにくいケースもある。

曲の聴こえ方

実際に聴くと、Faithfullの声はこの時点ではまだ後年ほど低く沈まず、楽曲の輪郭に沿って素直に前へ出てくる。「As Tears Go By」のような曲では、メロディの流れと歌声の距離感が近く、1960年代中盤の英国ポップの録音としてはかなり記憶に残りやすい。アルバム全体でも、派手な演奏で押すというより、歌とアレンジの位置関係を丁寧に作っている印象が強い。のちの彼女の作品群と比べると、ここにはまだ“若いスター”としての整った姿がある。

その後の再発と評価

このアルバムは1989年に初めてCD化され、その際はオリジナルのUK曲順にボーナストラックを加えた形で再発された。2013年には日本のみでSHM-CD化され、モノ/ステレオ両方を収めた仕様で再登場している。さらに2025年には、新たにリマスターされたステレオ/モノ版がLPとボックスセットで再発され、Faithfull自身が寄稿したライナーノーツ付きで再評価の流れが続いた。オリジナルの1965年UKモノ盤は、その出発点としての意味がいっそうはっきりしている。

1965年のMarianne Faithfullは、同時代の英国女性シンガーの中でも、フォークとポップの両方の入口に立っていた存在として見えてくる。ここで聴けるのは、後年の重い表現ではなく、デビュー当時の時代性を強く背負った歌声と選曲だ。ローリング・ストーンズ周辺の文脈、そして「As Tears Go By」の存在を抜きにしては語りにくいが、それだけで終わらないアルバムでもある。1960年代半ばのUK Decca盤らしい作り込みと、若い歌い手の記録としての性格、その両方が残る1枚だ。

トラックリスト

  1. A1 Come And Stay With Me
  2. A2 If I Never Get To Love You
  3. A3 Time Takes Time
  4. A4 He'll Come Back To Me
  5. A5 Down Town
  6. A6 Plaisir D'Amour
  7. A7 Can't You Hear My Heartbeat
  8. B1 As Tears Go By
  9. B2 Paris Bells
  10. B3 They Never Will Leave You
  11. B4 What Have They Done To The Rain
  12. B5 In My Time Of Sorrow
  13. B6 What Have I Done Wrong
  14. B7 I'm A Loser

動画

Share
記事一覧に戻る

あわせて聴きたい "Ballad"

toast