Mark McGuire - VDSQ - Solo Acoustic Volume Two (2009)
Mark McGuire「VDSQ - Solo Acoustic Volume Two」レビュー
Mark McGuireの「VDSQ - Solo Acoustic Volume Two」は、2009年にUSのVDSQから登場したソロ・アコースティック作品。レーベルはSteve LowenthalがキュレーションするVin Du Select Qualititeで、21世紀のギター表現を掘り下げる流れの中に置かれた1枚です。McGuireにとっては、ソロ表現を外へ開いていく時期の重要な記録であり、のちの活動を考えるうえでも外せない位置にある作品です。
Mark McGuireというプレイヤー
Mark McGuireは1986年生まれ、オハイオ州クリーヴランド出身のギタリスト。Emeraldsのメンバーとして知られ、ソロではギターを軸にしながら、声やテープ、キーボードなども使ってきた人物です。このレコードでは、その中でもギターの手触りが前面に出ている。バンドでの活動と比べると、音の重なり方よりも、一本のギターから立ち上がるフレーズの流れがはっきりしている。
VDSQというレーベル自体が、いわゆる“ギター・アルバム”を丁寧に扱う場所として知られていて、McGuireのこの作品もその文脈にきれいにはまる。ソロ・ギターの細かなニュアンスを、録音の空気ごと残すような作りが、このレーベルの持ち味と重なる。
作品の印象
この作品は、アコースティック・ギターの響きが中心にある。指の動きがそのまま音になるタイプの演奏で、フレーズは急がず、音の余韻を残しながら進む。短い断片を積み上げる場面もあれば、長めの流れで時間を引っ張る場面もある。とくに12分を超える曲を含む構成は、曲ごとの展開を追うというより、演奏の呼吸そのものを聴かせる方向に寄っている。
音の処理は過度に飾らず、アコースティック・ギターの生々しさが出やすい。弦の立ち上がり、指板の移動、音が消えていくところまでがそのまま記録されている感じがある。派手な技巧を見せる場面より、フレーズのつながりや間の取り方に耳が向く内容。聴き進めると、即興の気配と、きちんと組み立てられた流れの両方が見えてくる。
2009年時点での位置づけ
McGuireのキャリアの中では、この時期の作品群は、まだ「思いついたものをその場で形にする」感覚が強い段階にあるとされる。後年になると、より作曲された形へ移っていくため、この2009年作はその前段階にあたる。ソロ・ギターの表現を試しながら、作家としての輪郭を固めていく途中の記録として読むと、流れがつかみやすい。
また、VDSQからの発表は、McGuireにとって別レーベルでの初リリースでもある。Emeraldsでの活動や既存のソロ作品とは別の場所で、自分のギター演奏を前面に出したことに意味がある。のちの再発時にも注目を集め、当時から評価が高かったことがうかがえる。
同時代の文脈
2000年代後半のアメリカでは、アコースティック・ギターを使ったインストゥルメンタル作品が、フォークの伝統だけでなく、実験音楽やアンビエント寄りの聴かれ方もしていた。McGuireのこの作品も、そのあたりの境界にある。伝統的なフォーク・ギターの延長としても聴けるし、ロックや即興演奏の感覚を持ったソロ・ギター作品としても受け取れる。
同じVDSQの周辺では、ギターの音色や間合いを重視する作品が多く、McGuireの演奏もその流れの中で際立つ。後年の紹介では、Hot ChipのAl Doyleがこの作品を賞賛したことも伝えられていて、ギター好きの耳だけでなく、別のシーンからも注目されたことがわかる。
盤の情報と再発について
オリジナルは2009年リリースで、初回は500枚の限定プレス。その後、枚数不明のセカンド・エディションも出ている。オリジナル盤と再発盤の違いとして大きいのは、まず流通量の差。初版はかなり少なく、のちの再発で手に取りやすくなった形だ。内容面では同じ作品として扱われている。
この盤は、ヒット曲を押し出すタイプのアルバムではない。けれど、Mark McGuireがソロのギタリストとしてどの地点にいたかを示す記録としては、かなり重要な1枚。Emeraldsの活動を知っている人にも、ソロ作品の入口としてこの時期を押さえる意味は大きい。
まとめ
「VDSQ - Solo Acoustic Volume Two」は、アコースティック・ギターの音そのものと、演奏の流れを丁寧に追った作品。派手さよりも、指先から出る音の連なりに重心がある。Mark McGuireのソロ表現が、即興の感覚から作曲的な方向へ移る前後の空気を残した1枚として、静かに存在感を持っている。
トラックリスト
- A1 At First Sight
- A2 Vitamins
- A3 Second Thoughts
- B1 Front Porch Breeze
- B2 Burning Leaves