Massive Attack - 100th Window (2003)
Massive Attack『100th Window』
ブリストル・サウンド/トリップホップの開拓者Massive Attackが、世界的大ヒット作『Mezzanine』(1998年)に続いて2003年2月にVirgin Recordsから発表した通算4作目のスタジオ・アルバム。前作制作時の激しい摩擦によりアンドリュー・“マッシュルーム”・ヴァウルズが脱退し、グラント・“ダディ・G”・マーシャルも育児休暇のため制作から離脱。本作は事実上、創設メンバーのロバート・“3D”・デル・ナジャ(Robert Del Naja)と長年のプロデューサーであるニール・デイヴィッジ(Neil Davidge)のタッグによって完成された。
制作背景とサンプリングの完全排除
本作における最大の特徴は、初期からグループの創作の核であったサンプリングを完全に排除し、生演奏と緻密なシンセサイザーのプログラミングのみで全編を構築した点にある。
ゲスト・ボーカルにはアイルランドの歌姫シニード・オコナー(Sinéad O'Connor)を迎え、「What Your Soul Sings」「Special Cases」「A Prayer for England」の3曲で神聖かつ張り詰めた歌唱を披露。また、グループの象徴であるレゲエの重鎮ホレス・アンディ(Horace Andy)が「Everywhen」「Name Taken」で深遠な存在感を放ち、「Small Time Shot Away」にはブラー/ゴリラズのデーモン・アルバーンがバッキング・ボーカルで参加した。ストリングスのアレンジメントはクレイグ・アームストロングが手掛けている。
時代の文脈と監視社会への警鐘
アルバム・タイトルは、デジタル情報社会における監視とプライバシーの危機を論じた書籍『The 100th Window』に由来している。2003年2月という発表時期は、米英軍によるイラク戦争開戦の直前であり、3D自身が熱心な反戦活動家として最前線で声を上げていた緊迫した時代背景と完全にリンクしている。
冷戦後の監視社会、情報過多、テクノロジーと人間の孤独といった不穏なテーマが全編を貫いており、前作までのダークな内省から、より冷徹でグローバルな社会的批評性へと踏み込んだ作品となった。
サウンドと聴きどころ
冷気を放つクリニカルなシンセ・ドローン、微細なエレクトロニック・ノイズ、深海を思わせる重低音ベース、そしてクレイグ・アームストロングによる幽玄なオーケストレーションが交錯する音響空間は圧巻だ。
静謐な緊張感の中でシニード・オコナーの切実な声が響きわたる「Special Cases」や、アラブ/オリエンタルな旋律とエレクトロニクスが壮大に高揚する「Butterfly Caught」「Antistar」など、極限まで研ぎ澄まされたダーク・アンビエンスがリスナーを深い陶酔へと誘う。
後世への影響
トリップホップの枠組みを完全に解体し、冷徹なエレクトロニクス、ミニマルなポストロック、アンビエント/ダーク・ダブを融合させたサウンドスケープは、全英アルバムチャートで見事1位を獲得。従来のオーガニックなソウル/ヒップホップ色を期待した層からは賛否両論を呼んだものの、サンプリングに頼らない徹底的な音響構築の美学は、2000年代以降のインダストリアル、ダーク・ウェーヴ、ダブステップ、レフトフィールド・エレクトロニカに決定的な影響を与えた。
トラックリスト
- A1 Future Proof 5:38
- A2 What Your Soul Sings 6:37
- B1 Everywhen 7:36
- B2 Special Cases 5:09
- C1 Butterfly Caught 7:33
- C2 A Prayer For England 5:44
- D1 Small Time Shot Away 7:57
- D2 Name Taken 7:47
- E Antistar 8:17
- F Untitled 10:44
動画プレイリスト
このアーティストについて
Massive Attackは、イギリス・ブリストル出身の音楽プロダクション・グループだ。現在の中心メンバーとしては、Robert Del Naja、Tricky、Daddy Gが知...
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