Mauro Pagani - Mauro Pagani (1978)
Mauro Pagani / Mauro Pagani(Japan, Seven Seas GXF 2041, 1979)
マウロ・パガーニの名をそのまま冠した本作は、1978年にイタリアで発表された初のソロ作品で、1979年に日本盤としてSeven Seasから発売された。PFM(Premiata Forneria Marconi)の元フルート/ヴァイオリン奏者として知られる人物が、自身の音楽語法を前面に出した一枚であり、プログレッシブ・ロックの枠に収まりきらない内容になっている。ジャズ、ロック、フォーク、民族音楽的な要素が混ざり合い、演奏の密度と構成の緻密さが同時に立ち上がる作品だ。
パガーニは1946年生まれ、イタリア北部ブレシア出身のコンポーザー/マルチインストゥルメンタリスト。PFM在籍期の1970年代前半から中盤にかけて、すでに演奏面でも作曲面でも重要な役割を担っていたが、このソロ作ではその経験が別の方向へ展開している。バンドの推進力よりも、旋律の運び、音色の選び方、曲ごとの空気の切り替えが際立つ構成で、ロックの手触りを残しながらも、地中海圏の響きや室内楽的な組み立てが前に出る。
作品の位置づけ
このアルバムは、PFM脱退後のパガーニが、自分の音楽的関心をまとめて提示した出発点として重要だ。後年の代表作「Crêuza de mä」で深めることになる、地中海的な音階感覚や民族音楽への視線は、この1978年作の時点ですでに輪郭を見せている。つまり本作は、単なるソロ・デビューというより、のちの活動につながる研究と試行の入口にあたる一枚として扱われてきた。
同時代のイタリアでは、AreaやCanzoniere del Lazio周辺の動きに見られるように、ロック、即興、民謡、政治性のある表現が近接していた。本作もその文脈の中に置くと理解しやすい。演奏は技巧を見せるためだけに走らず、曲の中で音色や間を変えながら進む。プログレの複雑さと、フォーク由来の旋律感、ジャズ寄りの自由度が一つの盤面に並ぶ印象だ。
日本盤ならではの仕様
今回の日本盤は1979年リリース、Seven SeasのGXF 2041。ライナーにはイタリア語と日本語の本文が入り、帯付きで流通した。イタリア盤のオリジナルに対して、日本盤は国内向けの解説や表記が加わるため、当時の日本のリスナーがこの作品をどう受け止めたかを知る手がかりになる。録音は複数のスタジオで行われ、ミックスやトランスファーにも別工程が入っており、制作面でも手間のかかったタイトルだ。
バックカバーには「Ciao 2001」の批評家に評価された旨が記されている。発売当時の受け止め方としては、広く売れるタイプの作品というより、音楽的な挑戦として注目された盤だった。パガーニ本人も後年、この時期の音楽がすぐには理解されなかったことに触れている。PFM的なロックを期待した耳には、より内省的で、地中海の響きへ寄った方向が意外に映ったはずだ。
聴きどころ
この盤の面白さは、派手なリフや歌メロの強さではなく、音の置き方にある。フルートやヴァイオリンの線が前に出る場面でも、単純にメロディをなぞるだけで終わらず、周囲のリズムや和声と絡みながら少しずつ形を変える。録音の質感も含めて、空間の使い方がはっきりしているため、各パートの動きが追いやすい。
また、ロック的なバンド演奏が土台にありながら、フォークやワールド・ミュージックの要素が装飾ではなく構造の一部として入っている点も重要だ。単に異国情緒を足したものではなく、曲そのものの進行やフレーズの組み立てに、その感覚が深く染み込んでいる。結果として、1970年代後半のイタリアン・プログレの中でも、かなり独自の位置を占めるアルバムになっている。
まとめ
「Mauro Pagani」は、PFMの名手として知られるパガーニが、ソロ・アーティストとして自分の音楽の輪郭を明確にした初期の重要作だ。1979年の日本盤は、イタリアでの1978年作を国内仕様で受け止められる形にしたもので、帯や対訳的な情報も含めて当時の輸入盤文化を感じさせる。プログレ、ジャズ、フォーク、民族音楽が交差する内容は、派手さよりも構成の積み重ねで聴かせるタイプ。後年の地中海音楽志向を知るうえでも、この一枚は外せない位置にある。
トラックリスト
- A1 Europa Minor 6:03
- A Argiento 4:41
- A3 Violer D'Amores 2:39
- A4 La Città Aromatica 3:32
- B1 L'Albero Di Canto (Part 1) 4:50
- B2 Choron 5:23
- B3 Il Blu Comincia Davvero 5:13
- B4 L'Albero Di Canto (Part 2) 3:51