Message - From Books And Dreams (1973)
Message『From Books And Dreams』——ドイツ産プログレが内側へ沈み込む1973年作
Messageの『From Books And Dreams』は、1973年にドイツで発表された2作目のアルバムで、同時代のクラウトロックやヘヴィ・プログレの流れの中でも、かなり印象の強い一枚だ。バンドはドイツを拠点にしながら、編成面では英国人メンバーも交えた混成グループで、重さのあるリフ、展開の多い構成、サックスやメロトロンを含む音の広がりが同居している。単なるハードロックに寄らず、曲の進み方そのものにプログレらしい組み立てがある作品で、当時のドイツ産作品らしい硬質さも感じられる。
録音と制作の背景
録音は1973年3月、ケルン近郊のDierks Studiosで行われた。プロデュースはPeter Hauke、エンジニアはDieter Dierks。Dierks Studiosといえば、同時代のドイツのロック作品に深く関わった現場として知られていて、このアルバムにもその空気がよく出ている。音像は厚みがあり、各楽器の輪郭が比較的はっきりしている一方で、空間の使い方には少し陰りがある。そうした質感が、作品全体の内省的な流れにつながっているように聞こえる。
オリジナル盤はドイツのBellaphonからのリリースで、カタログ番号はBLPS 19159。ゲートフォールド仕様で、初回ラベルは未枠囲みのBellaphonロゴを使ったタイプ。1973年頃のベルラフォン盤によく見られる、時期を示す仕様としても興味深い。のちの再発ではラベル表記が変わるため、初期盤と見比べる楽しみもある。
作品の位置づけ
Messageにとって本作は、初期代表作として語られることが多い一枚だ。バンドは1970年代を通して複数のアルバムを残すが、この時期の作品は特に、バンドの方向性がはっきり形になっている。重いギターを軸にしながらも、演奏は力任せに押し切るのではなく、曲の中で起伏を作っていくタイプ。ブリティッシュ・プログレの要素と、ドイツの実験的な感触が同じ盤面で共存しているところが、この作品の核にある。
後年の回顧では、Jethro Tull、King Crimson、Uriah Heep、Wishbone Ash、Nektarあたりを連想させるという言及も見られる。実際、メロトロンの使い方やサックスの入り方、リフの置き方には、その時代の重厚なプログレ/ハードロックの文脈が確かにある。ただし、単なる模倣にとどまらず、もっと暗い色調に寄っているのが特徴だ。
聴きどころ
収録曲の中では「Sigh」や「Dreams And Nightmares」がよく挙げられる。どちらも、曲の進行が一方向ではなく、静かな部分から緊張感のある展開へ移っていくタイプで、バンドの構成力が見えやすい。ギターのリフだけで押し切らず、管楽器や鍵盤を織り込んでいくあたりに、70年代前半のプログレらしい組み立てがある。
また、「The Myth」はMary Stewartの小説『The Crystal Cave』を発想源にしているという案内もあり、歌詞や題材の面でも、神話や夢、無意識といったイメージに引き寄せられている。タイトルそのものが示す通り、現実よりも内面や幻想の側へ軸足を置いた作品で、そこがアルバム全体の統一感にもつながっている。
この盤ならではのポイント
オリジナルの1973年盤は、Bellaphonの初期ラベル仕様で流通した点がまず重要だ。後年の再発ではラベルデザインや表記が変わるため、コレクション面では見分けのポイントになる。さらに、この時代のBellaphon盤は、作品ごとのプレス差やレーベル仕様の違いもあり、初回盤を追う楽しみがある。Gatefold sleeveも含めて、1973年という年のドイツ盤らしい作りだ。
チャート実績については、確認できる範囲では目立った記録は見当たらない。一方で、後年になってクラウトロック/ヘヴィ・プログレの文脈で再評価されているのは確かで、商業的な大ヒットというより、じわじわと聴き手を増やしてきたタイプのアルバムといえる。派手な売れ方ではないが、音の密度と陰影のある構成が、今でも耳を引く。
まとめ
『From Books And Dreams』は、Messageの中でもとくに輪郭のはっきりした作品だ。重いリフ、展開の多い構成、サックスやメロトロンが作る空気感、そして夢や神話へ寄る題材。1973年のドイツ産プログレとして見たとき、同時代のブリティッシュ勢と並べて語られるだけでなく、Dierks Studios由来の音の硬さや、Bellaphon盤らしいローカルな色合いも含めて記憶される一枚だと思う。アルバム全体に、外へ向かう勢いより、内側へ沈み込む感触が残る。
トラックリスト
- A1 Sleep! 2:51
- A2 Dreams And Nightmares (Dreams) 12:45
- A3 Turn Over! 4:02
- B1 Sigh 8:07
- B2 Dreams And Nightmares (Nightmares) 13:30