Mike Oldfield - The Complete (1985)
Mike Oldfield『The Complete』(1985年・UK Virgin)
Mike Oldfieldの『The Complete』は、1985年にUK Virginから出た2枚組コンピレーションである。タイトルどおり“総集編”の体裁を取りつつ、単なるヒット集には収まっていないのがこの作品の面白さだ。70年代の長大な組曲で知られる初期作品から、80年代前半のシングル曲、さらに当時まで未発表だったライヴ音源までをまとめ、Oldfieldの活動10年以上をひと続きで見せる構成になっている。
キャリアの節目に置かれた総括盤
Mike Oldfieldは、1973年の『Tubular Bells』で一躍知られた英国のマルチ奏者で、プログレッシヴ・ロック、フォーク、アンビエント、ニューエイジ、ポップまでを横断してきた人物だ。『The Complete』が出た1985年は、『Moonlight Shadow』のヒットを経て、ソロ作家としての認知が広く定着していた時期にあたる。そうした流れの中で出た本作は、初期の大作志向と、80年代に入ってからの比較的コンパクトな楽曲を並べ、作家としての変化を見せる役割を担っている。
収録内容は4つのセクションに分かれている。A面は短いインストゥルメンタル中心の「Instrumental Section」、B面は1982年から1984年のヒット曲を集めた「Vocal Section」、C面は初期4作からの抜粋と『The Killing Fields』の一部を含む「Complex Section」、D面は1981年と1982年のツアーからのライヴ音源を集めた「Live Section」である。曲の並べ方自体が、Oldfieldの作風の幅をそのまま示している。
シングル曲と大作のあいだをつなぐ編集
B面には『Five Miles Out』『Crises』『Discovery』期の代表曲が入り、Oldfieldの80年代らしいポップな輪郭がはっきり出る。とくに『Moonlight Shadow』のようなヒット曲は、彼の名前を広く知らしめた楽曲として外せない存在だ。一方でC面では『Tubular Bells』『Hergest Ridge』『Ommadawn』『Incantations』といった長尺作品の断片が置かれ、70年代の構築的な作曲スタイルが確認できる。ここでの編集は、アルバム単位で聴かれることの多い作品群を、要点だけ抜き出して見せる形になっている。
この手のコンピレーションは、どうしても“ベスト盤”の印象が強くなりがちだが、『The Complete』はそこから少し外れている。実際、当時の評でも「完全」ではないが、Oldfieldの魅力的な場面をよくまとめた2枚組として受け止められていた。長大な組曲の断片と、シングル向けの楽曲が同じ作品内に並ぶことで、作家としての二面性が見えやすい。
ライヴ音源の存在感
この盤で特に重要なのはD面のライヴ音源だろう。1981年から1984年の公演で演奏された未発表テイクが収められており、当時のツアー・バンドの力量をそのまま記録している。『Sheba』から『Mirage』、『Platinum』、『Mount Teide』といった曲は、スタジオ版とは違う展開や演奏の張りがあり、ファンの関心を集めた部分でもある。とくにライブでの演奏は、元の録音よりも構成が整理され、音の抜けもよく感じられる場面がある。
ブックレットには各アルバムの簡単な解説と経歴も載っており、当時のリスナーにとっては入門編としての役割も大きかったはずだ。Oldfieldは作品ごとの性格がかなり異なるため、こうしたガイド付きの総集編は、彼の全体像をつかむ足がかりになっている。
盤ごとの差異と1985年盤の位置
このUK盤は1985年のオリジナル仕様で、Virginの当時のリリースとして位置づけられる。Virginは80年代後半にかけてラベル意匠が変わっていくが、本作の時点ではまだ同レーベルの80年代らしい流通形態の中にある。なお、この作品は後年のCD化や別フォーマット展開もあるが、1985年の2枚組LP版は、曲順と面構成そのものが作品の性格を決めている。
また、収録曲の扱いには細かな注記もある。センターラベル上の表記ゆれや曲長の誤記が確認されており、発売当時の物理メディアならではの情報差も残る。こうした点も含めて、1985年という時代のパッケージ作品として見ておくと理解しやすい。
まとめ
『The Complete』は、Mike Oldfieldの多面的な活動を1枚のベスト盤的な流れに押し込めるのではなく、インストゥルメンタル、ヴォーカル曲、長尺作品、ライヴという4つの見方で整理した編集盤である。『Tubular Bells』の作家、80年代ポップ・ヒットの作り手、そしてツアー・バンドを率いる演奏家、その3つの顔がまとまって見える構成だ。70年代プログレの文脈と、80年代英国ポップの文脈が同じ盤の中でつながっているところに、この作品の性格がある。
トラックリスト
- A1 Arrival 2:46
- A2 In Dulci Jubilo 3:52
- A3 Portsmouth 3:15
- A4 Jungle Gardenia 2:45
- A5 Guilty 3:57
- A6 Blue Peter 2:07
- A7 Waldberg (The Peak) 3:24
- A8 Wonderful Land 3:37
- A9 Etude (Theme From The Killing Fields) 3:04
- B1 Moonlight Shadow 3:37
- B2 Family Man 3:45
- B3 Mistake 2:54
- B4 Five Miles Out 4:17
- B5 Crime Of Passion 3:38
- B6 To France 4:34
- B7 Shadow On The Wall (12" Version) 5:07
- C1 Excerpt From Ommadawn 7:04
- C2 Excerpt From Tubular Bells 8:34
- C3 Excerpt From Hergest Ridge 4:20
- C4 Excerpt From Incantations 4:41
- C5 Excerpt From The Killing Fields (Evacuation) 4:07
- D1 Sheba 3:28
- D2 Mirage 4:49
- D3 Platinum (Including North Star/Platinum Finale) 14:16
- D4 Mount Teide 4:07