Naxatras - V (2025)
Naxatras『V』について
ギリシャ・テッサロニキのサイケデリック/ストーナー・ロック・バンド、Naxatrasによる『V』は、2025年に発表されたアルバム。John Delias(ギター)、Kostas Harizanis(ドラム)、John Vagenas(ベース&ヴォーカル)、Pantelis Kargas(キーボード&シンセサイザー)という編成で、セルフリリース作品として届けられている。バンドは2012年結成で、地中海圏のロック・シーンに根ざしながら、宇宙的な広がりをもつサウンドを続けてきたグループだ。
『V』は全8曲、約42分の収録。冒頭の「Celestial Gaze」から「The Citadel」まで、曲名だけでも一貫した物語性が見えてくる。Bandcamp上のクレジットでは、録音、ミックス、マスタリングの担当者も明記されており、制作面まで含めて丁寧に作り込まれた作品であることが分かる。収録曲の中核を担うのは、長尺で展開を積み重ねるタイプの楽曲群で、アルバム全体を通してひとつの旅のように聴こえる構成になっている。
作品の輪郭
Naxatrasの音楽は、単純なストーナー・ロックの枠だけでは収まらない。重心の低いギター・リフを土台にしながら、鍵盤とシンセが前面に出てくる場面が多く、ロックの推進力とプログレ的な構築感が同居している。『V』でもその傾向ははっきりしていて、バンドの骨格であるリフとリズム隊の粘りに、スペースロック的な広がり、そしてギリシャらしい旋法感のあるメロディが重なっていく。
Bandcamp Dailyでも本作は取り上げられており、ギリシャのハードロック/サイケデリック・シーンの文脈の中で注目されている。紹介では、Naxatrasのサウンドを単なるストーナーではなく、伝統楽器を思わせる響きや、ドリア旋法的な進行、Vangelisを想起させるシンセの使い方を含む「ヘレニックな」サイケデリアとして捉えていた。実際、『V』はその言葉どおり、英米圏のストーナー・ロックとは少し違う輪郭を持つ。リフの押し出しだけで終わらず、旋律の運びに土地の匂いが残る点が印象的だ。
アルバムの位置づけ
バンド名義の通算作として見た場合、『V』はNaxatrasが持っていた要素を整理し、さらに前へ進めた作品として位置づけられる。初期から続くジャム感やサイケデリックな浮遊感に加えて、今回は曲の設計がより明確で、展開の切り替えもはっきりしている。バンドの持ち味である生々しい演奏感を残しながら、シンセやキーボードの比重を上げることで、スペースロックとプログレの接点がより見えやすくなった。
特に「The Citadel」を含む終盤は、アルバム全体のテーマをまとめる役割が強い。提示されているリリースノートの断片には、星の門、古代の部屋、Spacekeeper、Narahmonといった語が並び、作品世界が宇宙神話のような形で組み立てられていることが分かる。歌詞カードには暗号化されたテキストも収録されており、聴くだけでなく、読み解く楽しみも意識されたパッケージになっている。
同時代の文脈の中で
Naxatrasは、King Gizzard & The Lizard Wizardのような多作で変化の大きいバンドや、欧州圏のプログレッシブなサイケ/ストーナー勢と並べて語られることが多い。とはいえ『V』では、単に影響源をなぞるのではなく、ギリシャのロック史や地中海圏の旋律感を踏まえた独自の方向が見えやすい。Vangelis的なシンセの質感や、東地中海の旋法を思わせるフレーズが、バンドの重いグルーヴに自然に溶け込んでいる。
アルバム・オブ・ザ・イヤーでは批評家スコア80、ユーザースコア73を記録しており、2025年のスペースロック/プログレ系作品の中でも存在感を示した。評判の中心にあるのは、派手な技巧よりも、曲ごとの流れを崩さずに聴かせる構成力と、バンド全員の演奏が噛み合う感触だ。Naxatrasらしい粘りのあるリフ、空間を広げる鍵盤、前へ進むリズム、その3つが『V』ではきれいに揃っている。
盤面の作り
この2025年盤には帯と、歌詞および暗号テキストを収めたインサートが付属する。セルフリリース作品らしく、音だけでなく物としての完成度にも目が向けられている。レコードとして手に取ったとき、アルバムの神話的な世界観を補強する作りになっているのが分かる。
Naxatras『V』は、ギリシャのバンドが自国の空気感を保ちながら、ストーナー・ロック、サイケデリック・ロック、プログレッシブ・ロックの交点を更新した一枚。重さと広がり、反復と展開、その両方をきちんと並べた作品として記録されている。
トラックリスト
- A1 Celestial Gaze 5:05
- A2 Spacekeeper 5:09
- A3 Numenia 5:09
- A4 Utopian Structures 5:29
- B1 Breathing Fire 5:17
- B2 Legion 4:51
- B3 Sand Halo 6:01
- B4 The Citadel 5:55