Nicolette Larson - Nicolette (1978)
Nicolette Larson 1978

Nicolette Larson - Nicolette (1978)

Rock Folk, World, & Country Funk / Soul Pop Rock Soul

Nicolette Larson『Nicolette』

リンダ・ロンシュタット、エミルー・ハリス、コマンダー・コディらのバック・コーラスとしてキャリアを積み、その卓越した歌唱力と可憐で澄み切った声質で西海岸のミュージシャンたちから絶大な信頼を集めていた女性シンガー、Nicolette Larson(ニコレット・ラーソン)。彼女が1978年に名門Warner Bros.から発表したソロ・デビュー・アルバムが、本作『Nicolette』である。名プロデューサーのテッド・テンプルマンが陣頭指揮を執り、当時のウェストコースト・ロック/AORシーン屈指の一流ミュージシャンたちが集結した本作は、全米チャートを席巻し、70年代後半のカリフォルニア・サウンドを象徴する金字塔となった。

制作背景・エピソード

本作の誕生における最大の契機は、Neil Young(ニール・ヤング)との親交にあった。ラーソンはヤングのアルバム『American Stars 'n Bars』(1977年)や『Comes a Time』(1978年)のレコーディングにバック・ヴォーカルとして参加。その歌声を絶賛したヤングが、自身の未発表曲「Lotta Love(邦題:愛の砦)」が入ったカセットテープを彼女に渡し、「この曲を歌ってみないか」と託したというエピソードは名高い。この楽曲をリード・シングルに据えたことで、ラーソンのソロ・キャリアは最高のスタートを切ることとなった。

プロデュースを手掛けたのは、ドゥービー・ブラザーズやヴァン・ヘイレンをヒットチャートの頂点へと導いた名匠テッド・テンプルマン。エンジニアには名手ドン・ランディーを起用し、緻密で抜けの良い最高峰のアメリカン・ポップ・プロダクションを構築した。また、「Can't Get Away From You」では、当時テンプルマンが手掛けていたデビュー直後のVan HalenからEddie Van Halen(エディ・ヴァン・ヘイレン)が参加し、ノンクレジットで鮮烈なエレクトリック・ギター・ソロを披露している点もロック史における大きな聴きどころとなっている。

時代の文脈

1970年代後半の南カリフォルニア/ローレル・キャニオンの音楽シーンは、初期のカントリー・ロックやフォーク・ロックの素朴さをベースにしつつ、洗練されたR&B/ソウルのグルーヴと贅沢なスタジオ・プロダクションを融合させたAOR(Adult Oriented Rock)や「ヨット・ロック」の黄金期を迎えていた。Linda Ronstadt(リンダ・ロンシュタット)がスタジアム級のトップ・ロック・シンガーとして頂点を極めるなか、ニコレット・ラーソンはその親しみやすいナチュラルな佇まいと温かみあふれる表現力でシーンに新たな息吹を吹き込んだ。フォーク、カントリー、モータウン・ソウル、ポップスを自在に行き交う本作のスタイルは、70年代ウェストコースト・ミュージックの芳醇な実りを象徴している。

サウンドと聴きどころ

バックを固めるミュージシャンの顔ぶれは、まさに70年代西海岸のドリームチームと呼ぶにふさわしい。Little FeatのBill Payne(キーボード)、Paul Barrère、Fred Tackett(ギター)、The Doobie BrothersのMichael McDonald(バッキング・ヴォーカル)、Patrick Simmons(ギター)、Bobby LaKind(パーカッション)をはじめ、名手Albert LeeやJames Burton、ベーシストのBob GlaubとKlaus Voormann、ドラマーのRick Shlosserらが鉄壁のアンサンブルを構築している。

全米シングル・チャート8位、アダルト・コンテンポラリー・チャートで見事1位を獲得した名曲「Lotta Love」は、Plas Johnson(プラス・ジョンソン)による哀愁漂うフルート・ソロとメロウなリズム隊が織りなす極上のヨット・ロック・クラシック。さらに、Jesse Winchester作の軽快な「Rhumba Girl」、Sam Cookeの名曲をレイドバックした味わいで歌い上げる「You Send Me」、Holland-Dozier-Holland作のモータウン・ナンバー「Baby, Don't You Do It」、そしてGlenn FreyとJ.D. Southerが共作した珠玉のバラード「Last in Love」まで、多彩な楽曲群が彼女の包容力ある歌声によって見事に束ねられている。

後世への影響と評価

リリースと同時に高いセールスを記録した『Nicolette』は、アメリカレコード協会(RIAA)によりゴールドディスクに認定され、ラーソン自身もグラミー賞最優秀新人賞(Best New Artist)にノミネートされるなど一躍スターダムに躍り出た。サンフランシスコのパレス・ホテル「ガーデン・コート」で撮影されたMichael Zagarisによる印象的なジャケット写真とともに、本作は1970年代ウェストコースト・ポップ/AORを代表するマスターピースとして愛聴され続けている。

1997年12月、脳浮腫のため45歳の若さで惜しまれつつこの世を去ったが、翌1998年にはキャロル・キング、エミルー・ハリス、ジャクソン・ブラウン、ボニー・レイット、リンダ・ロンシュタットらが集結した大規模な追悼コンサートが開催されるなど、同業ミュージシャンからも深く愛された彼女の温かな歌声と本作のエヴァーグリーンな輝きは、今なお色褪せることがない。

トラックリスト

  1. A1 Lotta Love 3:11
  2. A2 Rhumba Girl 3:50
  3. A3 You Send Me 3:50
  4. A4 Can't Get Away From You 3:14
  5. A5 Mexican Divorce 3:52
  6. B1 Baby, Don't You Do It 3:42
  7. B2 Give A Little 2:59
  8. B3 Angels Rejoiced 2:25
  9. B4 French Waltz 4:18
  10. B5 Come Early Mornin' 2:37
  11. B6 Last In Love 3:44

動画プレイリスト

公開: 2026年10月
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