The Boomtown Rats - In The Long Grass (1984)
The Boomtown Rats『In The Long Grass』
The Boomtown Ratsが1984年に発表した6作目のスタジオ盤。タイトル曲を持たない本作は、1983年に録音され、英国ではEnsignから、米国では改訂版として翌1985年に出たが、日本盤は1984年のオリジナル期にあたるMercury(25PP-139)からの発売で、Made In Japan表記の国内盤になっている。
制作背景・エピソード
録音は1983年に行われたが、当初は米コロンビアに拒否されたという経緯がある。制作にはPete Walshとバンド自身が関わり、「Tonight」にはJames Guthrieが参加している。Bob Geldofは後年、この時期の録音について、Electric LadyでBob Clearmountainが無料でミックスしてくれたと語っている。曲の背景では、「Dave」が元サックス奏者Dave MacHaleの私的な出来事に由来する、という回想も残っている。
このあたりは、単にアルバムを作ったというより、レーベルや録音環境の制約の中で形にした作品として見えてくる。制作の中心にはバンド自身の判断があり、外部プロデューサーとの共同作業も交えながら進んだ一枚だった。
時代の文脈
1984年前後のブームタウン・ラッツは、1970年代後半の成功期を経たあとで、商業的な失速とレーベル事情の影響を受けていた。本作は、その流れの中で作られた作品として位置づけられている。初期作品で目立った政治性や都市風景の感覚を残しつつ、より内省的で成熟した方向へ寄ったアルバムとして語られている。
Irish Timesは、ラッツの初期作品が「現代世界」と結びついた苛立ちを持っていた一方で、『In the Long Grass』は「実は彼らのベスト・アルバムだった」が、Band Aid参加後の多忙で十分に宣伝できなかったと述べている。キャリアの流れで見ると、ヒット期の勢いが落ちたあとに出た再起の試みであり、結果としてはバンド終盤の重要作になった。
曲と評価
批評では、「This Is the World Calling」や「Pulled Apart by Horses」がよく取り上げられている。Trouser Pressは前者を“Rat tracks”らしい曲調として挙げ、後者を優れた曲だと評している。また「In the Pouring Rain」については、『The Fine Art of Surfacing』期の曲でもおかしくないと述べた。AllMusicも、本作を振り返る中で、バンドの勢いが落ちた時期の作品ではあるが、後のGeldofの活動を踏まえると受け止め方が変わる、としている。
商業面では、英国アルバム・チャートに入らず、米Billboard 200では188位を記録した。とはいえ、このアルバムをめぐる記述で目立つのは順位よりも、制作の経緯と、当時のバンドが置かれていた状況のほうだ。1984年のThe Boomtown Ratsを知るうえで、ひとつの節目になっている作品である。
トラックリスト
- A1 A Hold Of Me 4:55
- A2 Drag Me Down 4:08
- A3 Dave 4:30
- A4 Over Again 3:44
- A5 Another Sad Story 3:40
- B1 Tonight 3:54
- B2 Hard Times 3:55
- B3 Lucky 3:37
- B4 An Icicle In The Sun 4:07
- B5 Up Or Down 3:30
動画プレイリスト
このアーティストについて
ブームタウン・ラッツ(The Boomtown Rats)は、1975年にアイルランドのダブリン近郊ダン・レアリーで結成されたパンク/ニュー・ウェイヴ/ロック・...
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