Pentangle = ペンタングル - Cruel Sister = クルーエル・シスター (1970)
Pentangle 1970

Pentangle = ペンタングル - Cruel Sister = クルーエル・シスター (1970)

Rock Folk Rock

Pentangle『Cruel Sister』――英国フォークの芯をそのまま録った一枚

Pentangleの『Cruel Sister』は、1970年に発表された4作目のアルバムだ。ジャズ寄りの技巧、アコースティック楽器の絡み、そして英国伝承曲への強いまなざしで知られるバンドだが、この作品ではその中でもいちばんフォークの側に寄った姿がはっきり出ている。収録曲はすべて伝承曲で、スタジオ録音でありながら、演奏の手触りはかなり生々しい。日本盤は1980年リリースで、帯付き、2ページの解説インサート付き、裏ジャケットにも英詞が載る仕様になっている。

録音はSound Techniques、プロデュースはBill Leader。英国のフォーク録音を多く手がけた人物らしく、音作りは過度に整えられていない。楽器の輪郭や声の位置がそのまま前に出てくるタイプで、Pentangleの持っていたアンサンブルの精度がよく見える。前作『Basket of Light』のような広い層を意識した作りからは少し離れ、伝統曲を長い尺でじっくり聴かせる方向へ振れている。

作品の中心にある「Jack Orion」

このアルバムでまず触れられるのは、やはり「Jack Orion」だろう。約19分に及ぶ長尺で、盤面のかなりの部分を占める。もともと伝承曲を大きく展開した曲で、Bert Janschのギター、John Renbournのギター、Danny Thompsonのコントラバス、Terry Coxのドラムが、ひとつずつ役割を持ちながら進んでいく。演奏が派手に盛り上がるというより、細かい音の受け渡しで曲を保っていく構成。聴き進めるほど、Pentangleが単なるフォーク・リバイバルではなく、演奏そのものを組み立てるバンドだったことが見えてくる。

表題曲「Cruel Sister」も重要だ。英国の伝承歌「The Two Sisters」系統の曲で、Jacqui McSheeの歌が中心に立つ。バンドの中でも彼女の声はこの作品でいっそう印象に残る。過度に飾らず、旋律をまっすぐ運ぶ歌い方で、曲の古い物語性をそのまま残している。Pentangleの作品の中でも、歌の存在感が強い場面として記憶されやすい一曲だ。

1970年のPentangleという位置づけ

『Cruel Sister』は、Pentangleの中でかなり明確な転換点に置かれる。デビューから数作で、彼らはフォーク、ジャズ、ブルースの要素を行き来しながら独自の音を作ってきたが、このアルバムでは商業的な広がりよりも、伝承曲をどう鳴らすかに重心がある。1970年当時の英国フォーク・ロック周辺では、Fairport ConventionやSteeleye Spanのように伝承曲を現代のロック編成へ持ち込む流れがあったが、Pentangleはそこでも少し立ち位置が違う。電気的な押し出しより、アコースティック楽器の重なりと、室内楽的なまとまりが前面にある。

同時代の評価では、前作ほどの広い反応を得た作品ではなかった。英国アルバム・チャートでは最高51位、1970年12月にチャート入りし、在位は2週。数字だけ見ると大きなヒットではないが、内容面ではむしろバンドの核がよく出た盤として見られることが多い。回顧的には、音の厚みやJacqui McSheeの歌唱に目を向ける声が目立つ。

日本盤の見どころ

この1980年の日本盤は、マット仕上げの非ゲートフォールド仕様で、帯と2ページのインサートが付く。インサートには日本語の曲目、演奏時間、ライナーノーツが載り、反対面には英詞が収録されている。さらにジャケット裏にも英詞があり、当時の国内盤としては情報量がしっかりある部類だ。Transatlantic Recordsのロゴも、オリジナル期の英国盤とは違う流通・製造の文脈が見える部分で、日本盤ならではのまとまり方をしている。

まとめ

『Cruel Sister』は、Pentangleが持っていた演奏力、伝承曲への理解、そしてJacqui McSheeの声を、かなりストレートに残したアルバムだ。派手なヒット曲で押す作品ではないが、「Jack Orion」の長い展開や、表題曲の静かな重みを聴くと、このバンドが英国フォークの流れの中でどこにいたのかがよく分かる。技巧のための技巧ではなく、古い歌をどう並べ、どう鳴らすかに集中した一枚。Pentangleの中でも、特にフォーク側の顔が見える作品として記憶される盤だ。

トラックリスト

  1. A1 A Maid That's Deep In Love = 恋する女 5:25
  2. A2 When I Was In My Prime = 若かりし頃 2:54
  3. A3 Lord Franklin = ロード・フランクリン 3:22
  4. A4 Cruel Sister = クルーエル・シスター 6:58
  5. B Jack Orion = ジャック・オリオン 18:40

動画プレイリスト

公開: 2026年10月

このアーティストについて

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Pentangleは、イギリスのフォーク・ロック・バンドです。ジャンル表記としてはRock、Folk、World、& Countryにまたがり、スタイル面ではFolk、Fol...

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