Pozvakowski - Rapid (2026)
Pozvakowski『Rapid』
東欧ハンガリーのアンダーグラウンド・シーンで2000年の結成以来、20年以上にわたって孤高の音響表現を追究してきたインストゥルメンタル/ノイズ・ロック/ポスト・ロック・トリオ、ポズヴァコフスキ(Pozvakowski)。2026年1月に完全自主制作で世に放たれた本作『Rapid』は、彼らが長年培ってきた圧倒的なライブの肉体性と轟音のダイナミズムを、一切の妥協なく封じじ込めたスタジオ・アルバムである。
特異な録音環境と制作背景
メンバーは、ダーヴァシュ・アーダーム(ギター、サンプラー)、ソンバトヘイ・シェベシュチェーン(ベース)、バーナーティ・ジョンボル(ドラム)の3人。本作の最大の特徴は、その徹底した現場主義にある。過剰な編集やポストプロダクションに頼るスタジオワークを退け、2025年10月、ハンガリーの地方都市センテシュ近郊の釣り池のほとりに設営されたパオ(ユルト=移動式円形テント)に機材を持ち込み、特設スタジオにて濃密な合宿ライブ録音を敢行した。
テントの布越しに伝わる自然の空気感と、バンドの生々しい演奏の息遣いを余すところなく捉えた音響空間は圧巻である。ミックスおよびマスタリングは、同じくハンガリーの先鋭ポスト・メタル・バンドPerihelionのフロントマンであるヴァシュヴァーリ・ジュラが手掛け、重厚かつ鋭利な音像に仕上げられた。なお、本作には伝説的バンドFleetwood Macの生ける記憶への献辞が添えられている。
楽曲の構成と音響の魅力
アルバムは全5曲で構成され、幕を開ける「Orbital Breakneck」から、歪んだ極太のベースラインと鋭く切り込むギターノイズ、重量感に満ちたドラムの連打が聴き手を圧倒する。さらに8分超に及ぶ長尺の音響絵巻「Thorazine Sunrise」では、静謐なアンビエンスから激情のクレッシェンドへと至るドラマチックな展開を聴かせ、タイトなグルーヴが疾走する「The Backmarker」、そして幕を引く「Vomit Comet」に至るまで、緊張感の途切れない展開が続く。
作品の意義
日本のMONOや、ペリカン(Pelican)、トーチ(Torche)ら世界のポスト・ロック/ヘヴィ・インストの先駆者たちと共演を重ね、アナログ映写機を用いた独自の視覚表現とともにヨーロッパ各地でカルト的な支持を集めてきた彼ら。『Rapid』は、彼らが鳴らし続ける轟音美学の純度を極限まで研ぎ澄ました、東欧エクスペリメンタル・ロックの真骨頂と呼ぶべき快作である。
トラックリスト
- 1 Orbital Breakneck
- 2 RedshiFt
- 3 Thorazine Sunrise
- 4 The Backmarker
- 5 Vomit Comet