Radiohead - Amnesiac (2001)
Radiohead 2001

Radiohead - Amnesiac (2001)

Electronic Rock Experimental Alternative Rock

Radiohead『Amnesiac』

Radioheadの『Amnesiac』は、2001年5月にリリースされた通算5作目のスタジオ・アルバム。前作『Kid A』(2000年)と同一の1999年から2000年にかけての長期セッションから生まれた作品であり、録音はパリ、コペンハーゲン、グロスター、そして地元オックスフォードシャーのスタジオで行われた。プロデュースは長年のコラボレーターであるナイジェル・ゴドリッチが務めている。

制作背景・エピソード

本作に収録された楽曲群は、前作『Kid A』と全く同一のセッションで録音された。当初は膨大な録音素材をまとめた2枚組アルバムとしてのリリースも検討されたが、バンド側が「内容が濃密すぎて一度に消化しきれない」と判断したため、約8か月のインターバルを置いて別々の単体作として発表されることとなった。

先行シングルとなった「Pyramid Song」は、チャールズ・ミンガスの「Freedom」やトム・ヨークが訪れたエジプト美術展の『死者の書』から着想を得ており、ジョニー・グリーンウッドが編曲を手がけたストリングスはオックスフォードシャーのドーチェスター寺院で録音された。「Knives Out」はザ・スミスのジョニー・マーを思わせるギター・ポップのアプローチが試みられ、完成までに373日もの試行錯誤が費やされた。「Like Spinning Plates」は未完に終わった楽曲「I Will」(後に『Hail to the Thief』で完成)のバッキングトラックを逆再生した音源の上に、トム・ヨークが逆再生した旋律の発音を練習して歌い、それを再度反転させて不気味な響きを生み出すという実験的手法が用いられている。また、アルバムのラストを飾る「Life in a Glasshouse」では、英国トラッド・ジャズ界の重鎮トランペッターであるハンフリー・リトルトンとそのバンドを招聘し、ニューオーリンズのジャズ・フューネラル(葬送行進)を思わせる哀愁と狂気を孕んだホーン演奏が展開された。

なお、ヨーロッパ盤アナログはマット仕様の見開きジャケットと印刷済みインナースリーブを備え、ランアウトには手作業のエッチングが施されている。A3曲は裏ジャケットで「Pulk/Pull Revolving Doors」、見開き内側およびラベル面では「Pull/Pulk Revolving Doors」と表記されている。また本作はトム・ヨークの息子Noahとコリン・グリーンウッドの息子Jamieに献辞が捧げられている。

時代の文脈

前作『Kid A』でギター・ロックの構造を解体し、エレクトロニック・ミュージックへ急激に舵を切って世界中に賛否両論と強烈な衝撃をもたらしたRadioheadだが、そのわずか数ヶ月後に届けられたのが本作『Amnesiac』であった。トム・ヨークは本作を「『Kid A』の別の解釈であり、説明のようなもの」「遠くから火災を眺めているのが『Kid A』だとすれば、その火の中に閉じ込められているのが『Amnesiac』だ」と語っている。『Kid A』の冷徹で抽象的なエレクトロニクスに対し、本作では生々しいジャズやブルース、現代音楽の不穏な響きが前面に出た作品として当時のシーンで受け止められた。

サウンド・聴きどころ

リズムマシンやモジュラー・シンセによるエレクトロニックなパルスと、アコースティック・ピアノ、ウッドベース、金管楽器、ストリングスといった生楽器のアンサンブルが不穏かつ美しく交錯する音像が本作の白眉である。「Pyramid Song」の拍子の重心が浮遊する幽玄なピアノとストリングス、「Packt Like Sardines in a Crushd Tin Box」の金属的なパーカッション、「Life in a Glasshouse」の咆哮するフリージャズ的ホーンセクションなど、先鋭的な電子音楽とアコースティックな伝統音楽が高次元で融合している。

後世への影響・評価

発売後は全英アルバムチャートで初登場1位、米ビルボード200で初登場2位を記録。第44回グラミー賞では最優秀オルタナティヴ・ミュージック・アルバム賞にノミネートされたほか、スタンリー・ドンウッドとトム・ヨーク(Tchocky名義)が手がけた図書館の古書を模したアートワークが最優秀レコーディング・パッケージ賞を受賞した。

『Kid A』と本作の連作は、2000年代以降のロックとエレクトロニカ、ジャズの境界線を決定的に曖昧にした転換点として今なお語り継がれている。2021年には両作の制作から21周年を記念した3枚組作品『Kid A Mnesia』がリリースされ、未発表音源集『Kid Amnesiae』とともに、この時期のバンドが到達した極限の創造性が改めて世界中で称賛された。

トラックリスト

  1. A1 Packt Like Sardines In A Crushd Tin Box
  2. A2 Pyramid Song
  3. A3 Pulk/Pull Revolving Doors
  4. B1 You And Whose Army?
  5. B2 I Might Be Wrong
  6. C1 Knives Out
  7. C2 Morning Bell / Amnesiac
  8. C3 Dollars And Cents
  9. D1 Hunting Bears
  10. D2 Like Spinning Plates
  11. D3 Life In A Glasshouse

動画プレイリスト

公開: 2026年10月

このアーティストについて

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