Scattered Order - Career Of The Silly Thing (1985)
Scattered Order「Career Of The Silly Thing」について
Scattered Orderは、1979年にシドニーで結成されたオーストラリアのポストパンク・バンド。80年代前半の同国インダストリアル/ポストパンクの流れの中で重要な存在として語られてきたグループで、この「Career Of The Silly Thing」は、その活動の中でもひとつの節目に置かれる作品として扱われている。オリジナルは1985年にVolitionから登場し、ここで紹介するUK & Europe盤は1986年リリース。Ink RecordsのINK 17として流通した盤で、UKではNine MileとThe Cartel、ドイツではRough Trade Deutschlandが配給を担っている。
この作品の録音は、1984年8月のElectric Avenueと、1985年5月のM Squared Studioで行われた。インナー・スリーブには歌詞が印刷されており、レコードとしてのまとまりも意識された仕様になっている。レーベル面では、UKのインディペンデント・レーベルInk Recordsからのリリースで、Red Flame系列のレーベルとして知られる流通網に乗った形。オーストラリア発の作品が、英欧圏のインディー・ルートで広がっていった流れが見える盤でもある。
初期の実験性から、曲の輪郭へ
Scattered Orderは、M Squared周辺のコミュニティとも深く結びつきながら、オーストラリアのポストパンク/インダストリアルの土壌を作っていったバンドだが、「Career Of The Silly Thing」では、その初期のノイズ感や実験性を残しつつ、曲としての輪郭がよりはっきりしている。後年のバンド史でも、本作は「転機」として位置づけられている。制作費は約3000ドルと伝えられており、限られた条件の中で作られた作品らしく、音の配置や間の取り方に独特の緊張感がある。
メンバー編成はこの時期5人編成で、サンプルやfound soundsの要素も取り入れながら、従来よりも整理された楽曲構造へ寄っていく。とはいえ、単純に聴きやすくなったわけではなく、無機質なボーカル、硬いベース、乾いたリズムの組み合わせが前面に出る場面が多い。New Wave、Art Rock、Synth-pop、Experimentalといったタグが付くのも納得できる内容で、同時代のUK勢に引き寄せてみれば、初期のCabaret VoltaireやThe Fall周辺の、構造と逸脱が同居する感触に近い部分がある。
音の印象と作品の立ち位置
実際に耳を通すと、派手な展開で押すタイプではなく、一定のテンションを保ったまま細部で変化を積み重ねていく作りが目立つ。ベースの推進力が強く、ドラムは前に出すぎず、上物のシンセや断片的な音響がその上を行き来する。歌は感情を大きく振り回すというより、言葉を置いていくような感触がある。バンドがこの時期に、よりメロディックで比較的コンベンショナルな方向へ進みつつ、なお挑戦的な姿勢を保っていた、という後年の評価ともつながる内容だ。
作品全体には、オーストラリアのアンダーグラウンドらしい手触りも残る。欧州のポストパンクやインダストリアルを参照しながらも、そのまま模倣に寄らず、シドニーのローカルな空気を経由した感じがある。M Squaredの周辺で共有されていた実験精神、そしてライブ現場で育った粗さが、そのまま音に残っている印象だ。Scattered Orderがこの時期にNew OrderやThe Residentsのサポートを務めたという事実も、この作品の立ち位置を考えるうえで分かりやすい。先鋭的な場に接続しつつ、独自のやり方を崩していない。
1985年作品としての意味
「Career Of The Silly Thing」は、Scattered Orderの初期を代表する一枚として扱われることが多い。完全にポップへ寄ったわけでも、純粋なノイズ実験に留まったわけでもない中間地点で、バンドが次の段階へ進むための足場を作った作品だ。1985年という時期を考えると、シンセやサンプルを取り込みながらロックの形式をずらしていく動きは、UKやヨーロッパのアートロック/ニューウェーブとも呼応している。だが本作は、その文脈をなぞるだけで終わらず、オーストラリアのシーンで培われた独自の方法論がしっかり出ている。
1986年のUK & Europe盤は、オリジナルの1985年盤を英欧圏に広げた流通版として見ると分かりやすい。録音時期や内容の軸は1985年の作品そのものにあり、Ink Records盤はその存在を海外に伝える役割を担った。Scattered Orderの活動史を追うとき、このアルバムは単なる中継点ではなく、初期の実験から、より構造のある音楽へ踏み出した記録として残る一枚である。
トラックリスト
- A1 1,000 Gene Autrys
- A2 Tost Rust Host
- A3 Cut You Up
- A4 The Galaxy Is Dead
- A5 Life On A Bed
- A6 No Mattresses In Heaven
- B1 Career Of The Silly Thing
- B2 Escape Via Cessnock
- B3 4 Or 5
- B4 Remember May 12th
- B5 The Little Eye
- B6 The Entire Combine/Capital Of Sweden