Scientist - Scientist Meets The Space Invaders (1981)
Scientist 1981

Scientist - Scientist Meets The Space Invaders (1981)

Reggae Dub

Scientist『Scientist Meets The Space Invaders』

Scientistことオーヴァートン・ブラウン(Hopeton Brown)が、1981年に英Greensleeves Recordsからリリースした傑作ダブ・アルバム(カタログ番号:GREL 19)。キング・タビーのスタジオで電波工学と音響技術を叩き込まれたScientistが、チャンネル・ワン録音の強靭なリディム音源をタビーズのカスタム・コンソールで先鋭的なダブへと解体・再構築した、80年代初頭のダンスホール/ルバダブ黎明期を象徴する名盤である。トニー・マクダーモット(Tony McDermott)が手掛けたスペースインベーダーをモチーフとするコミック調のアートワークは、ダブという音楽のパブリック・イメージを一変させ、その後のGreensleevesによる一連のキャラクター対決シリーズの礎となった。

制作背景・エピソード

録音は名門Channel Oneにてマキシー(Maxie)、バーナバス(Barnabas)、クルーシャル・バニー(Crucial Bunny)の敏腕エンジニア陣が担当し、ミックスはウォータールー・ロードにあったKing Tubby'sスタジオでScientist自身の手により敢行された。プロデュースはルーツ/ダンスホールの名匠リンヴァル・トンプソン(Linval Thompson)とミッキー・“ルーツ”・スコット(Mickey "Roots" Scott)が務めている。

バックを務めるのは、80年代初頭のジャマイカ音楽界を牽引した名グループRoots Radics Band。素材として用いられたのは、サミー・ドレッド(Sammy Dread)の「Rainy Days」「I’m A Dreadlocks」「Morning Love」「Follow Fashion」、バニー・ライ・ライ(Bunny Lie Lie)の「Babylonian」、ウェイン・ウェイド(Wayne Wade)の「Poor & Humble」、ウェイリング・ソウルズ(Wailing Souls)の「Who No Waan Come」「Don’t Be Downhearted」、リンヴァル・トンプソンの「Dreadlocks Nah Run」、ジョニー・オズボーン(Johnny Osbourne)の「Kiss Somebody」といった、当時の実力派シンガー陣のキラー・トラックである。アナログ盤の曲名はA面・B面通しの連番(1〜10)となっており、バックカバーとレーベル面で「De Materialize / Dematerialise」「Super Nova Explosion / Supernova Explosion」など表記揺れが見られる点も初期オリジナル盤の時代背景を物語る。

時代の文脈

1980年代初頭のジャマイカでは、政治的混乱や暴力の激化とともに70年代の精神的・メッセージ性の強いルーツ・レゲエから、ストリートのサウンドシステムと現場のダンスを直撃するダンスホール/ルバダブ(Rub-a-Dub)への劇的なパラダイムシフトが起きていた。その変化の主役となったのがRoots Radicsのミリタントでヘヴィなビートであり、エロール・“フラバ”・ホルト(Erroll "Flabba" Holt)の骨太な重低音ベース、スタイル・スコット(Lincoln "Style" Scott)の正確無比なリムショット、ビンジー・バニー(Bingy Bunny)のリズムギター、スティーリー・ジョンソン(Wycliffe "Steely" Johnson)のファンキーな鍵盤がタイトなグルーヴを生み出した。

Scientistはこのミニマルで隙間の多いRadicsのリディムを素材に、キング・タビー直伝のスプリング・リバーブやテープ・ディレイ、ハイパス・フィルターを限界まで駆使。唐突なミュートで音を削ぎ落とし、宇宙空間の光線銃を思わせるシンセ/エフェクト音を差し挟むことで、アーケードゲームの熱狂とレゲエの最新ビートを完璧に同期させた。

後世への影響

本作の成功は、Greensleeves Recordsにおけるコンセプチュアルなダブ・シリーズの黄金パターンを決定づけた。次作『Scientist Rids the World of the Evil Curse of the Vampires』(吸血鬼)、『Scientist Encounters Pac-Man』(パックマン)、『Scientist Wins the World Cup』(ワールドカップ)と続くシリーズは、いずれもトニー・マクダーモットのイラストと結びつき、世界中のロックやポストパンク、ニューウェイヴのリスナーへダブの魅力を浸透させる決定打となった。

また、Scientistが切り開いた極端な音響空間の構築術とソリッドな低域処理は、エイドリアン・シャーウッド(On-U Sound)をはじめとするUKダブ/インダストリアル勢や、マッシヴ・アタックらブリストル・サウンド、さらには2000年代以降のダブステップ(Dubstep)のプロデューサー陣にもダイレクトな影響を与え続けている。70年代のルーツ・ダブの神秘主義から脱却し、ポップカルチャーとクラブカルチャーが交錯する80年代型ハイテク・ダブの金字塔として、現在も絶大な評価を誇る一作である。

トラックリスト

  1. First Wall
  2. A1 Beam Down
  3. A2 Red Shift
  4. A3 Time Warp
  5. A4 Cloning Process
  6. A5 Pulsar
  7. Second Wall
  8. B1 Laser Attack
  9. B2 De Materialize
  10. B3 Fission
  11. B4 Super Nova Explosion
  12. B5 Quasar

動画プレイリスト

公開: 2026年11月
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