Mr. Partridge - Take Away / The Lure Of Salvage (1980)
Andy Partridge 1980

Mr. Partridge - Take Away / The Lure Of Salvage (1980)

Electronic Rock Reggae Experimental Dub Minimal

Mr. Partridge『Take Away / The Lure Of Salvage』(1980)

1980年にUKのVirginから出た、Andy Partridgeのソロ名義作がこの『Take Away / The Lure Of Salvage』である。名義はMr. Partridge。XTCの中心人物として知られる彼が、バンドの楽曲や関連素材を素材として再構成した、かなり特殊な位置づけのアルバムだ。新曲を順に並べた作品ではなく、既発曲のバックトラックや断片、演奏素材を切り分け、重ね、速度や配置を変えながら別の曲として組み立てていく内容になっている。

この時期のパートリッジは、ソングライターとしての顔だけでなく、録音物そのものを素材として扱う視点を強く持っていたことがよくわかる。XTCの文脈で見ると、バンドの通常の作品とは別軸にある実験盤でありながら、単なる余技では終わっていない。後年のXTC周辺の編集感覚や、スタジオを使った構築的な発想を先取りするような一枚として語られることが多い。

作品の性格と聴こえ方

収録内容は、Side Oneの「Take Away」とSide Twoの「The Lure of Salvage」に分かれている。たとえば「Commerciality (Signal Ad)」は「Refrigeration Blues」のリミックス、「The Day They Pulled The North Pole Down」は「Heatwave」のバックトラックを使った再構成という具合で、元曲の輪郭を残しながら別の表情へ寄せている。「The Forgotten Language Of Light」や「Steam Fist Futurist」では、既存の演奏にギターや声、効果音が加わり、元の曲名を知っていると変化の仕方が見えやすい。

聴感としては、メロディを前面に出す通常のロック盤というより、テープ編集やスタジオ加工の手触りが強い。リズムが前に出る場面もあるが、全体としては断片の配置や音の重なりに耳が向く。ダブやミニマルの感触があり、レゲエ的な残響の扱い、ロックの素材を崩して再配置する手つきが同居している。XTCの楽曲を知っていると、原型の見え方と崩し方の両方を追えるのが面白いところだ。

収録曲と素材の再利用

  • 「Commerciality (Signal Ad)」: 「Refrigeration Blues」の再構成
  • 「The Day They Pulled The North Pole Down」: 「Heatwave」のバックトラックを変形
  • 「The Forgotten Language Of Light」: 「Millions」のパーカッションを軸に再構成
  • 「Steam Fist Futurist」: 「Real by Reel」の素材を使用
  • 「Shore Leave Ornithology (Another 1950)」: 「Pulsing Pulsing」を下敷きにした長めの再構成
  • 「Cairo」: 「Homo Safari」の速度変更を含む加工

Side Twoでは「The Rotary」が「Helicopter」をもとにした即興性の強いトラックになっており、「Work Away Tokyo Day」では「Red / Day In Day Out」の素材がさらに分解されている。特に「New Broom」は「Making Plans For Nigel」を下敷きにしている点が目を引く。XTCの代表曲として知られる曲の別解釈であり、原曲の輪郭を知るほどに、どこを残し、どこを崩したのかが見えてくる構成だ。

1980年という時代背景

1980年といえば、ポストパンク以後の編集感覚や、スタジオを楽器のように使う発想が広がっていた時期でもある。そうした流れの中で見ると、この作品はロックの曲を単にリミックスするのではなく、テープ編集、ダブ的処理、断片の再配置を通じて別の作品へ作り替える試みとして位置づけやすい。ラジカルな実験というより、既存の素材を使って作曲を続けるような感覚に近い。

制作はRegents Park Recording Companyで行われたとされ、低予算の中で組み立てられた作品としても知られている。大規模なプロダクションではなく、限られた素材をどう動かすかに焦点がある。そのため、音数の多さよりも、断片の配置や反復の仕方に耳が向きやすい。

レーベルとオリジナル盤

リリースはUKのVirgin、カタログ番号はV2145。1980年のオリジナル盤として登場した作品で、Virginの当時の流れの中にある一枚でもある。レーベル面では、80年代初頭のVirginらしい時代の空気を反映した盤といえる。後年の再発盤とは別に、まずは1980年のオリジナルリリースとして押さえておきたい作品だ。

位置づけ

『Take Away / The Lure Of Salvage』は、Andy Partridgeの作家性をXTCのアルバムとは別の角度から見せる作品である。曲を書く人としてだけでなく、素材を切り貼りし、音の断片から別の構造を作る人としての姿が見える。XTCのファンにとっては周辺作というより、後の仕事につながる感覚が早い段階で表れた記録として読むことができる。ロック、電子的処理、ダブ、実験の境目に置かれた一枚。そういう性格が、この作品の核になっている。

トラックリスト

  1. Take Away
  2. A1 Commerciality (Signal Ad) 3:09
  3. A2 The Day They Pulled The North Pole Down 3:53
  4. A3 The Forgotten Language Of Light 4:18
  5. A4 Steam Fist Futurist 3:11
  6. A5 Shore Leave Ornithology (Another 1950) 5:34
  7. A6 Cairo 1:52
  8. The Lure Of Salvage
  9. B1 The Rotary 3:20
  10. B2 Madhattan 3:18
  11. B3 I Sit In The Snow 3:11
  12. B4 Work Away Tokyo Day 4:08
  13. B5 New Broom 5:28

動画プレイリスト

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