The Dramatics - Whatcha See Is Whatcha Get (1971)
The Dramatics『Whatcha See Is Whatcha Get』(1971)
The Dramaticsは、1964年にデトロイトで結成されたソウル・ヴォーカル・グループだ。本作『Whatcha See Is Whatcha Get』は、彼らがStax傘下のVoltから1971年に発表したデビュー・アルバムで、グループの輪郭が最もはっきり見える初期代表作として扱われている。タイトル曲のヒットで名前を広く知られるようになり、以後の活動の基盤を作った一枚でもある。
デトロイトで鍛えられた歌の説得力
The Dramaticsは、モータウンの本拠地でもあるデトロイトの空気の中で育ったグループだが、活動の始まりは平坦ではない。1967年のデトロイト暴動のさなか、彼らはアルジェ・モーテル事件に巻き込まれ、付き人だったFred Templeが射殺されるという痛ましい出来事も経験している。その後、プロデューサーのDon DavisとTony Hesterのもとで体制を整え、1971年にVoltと契約。本作がようやくアルバムとしてまとまった。
録音はデトロイトのUnited Sound Recording Studioで行われている。ここでの演奏と歌の組み立ては、いわゆる洗練された都会型ソウルの流れを持ちながら、声の重なりにしっかりした芯がある。The Dramaticsの持ち味は、リードとコーラスの切り替えが早く、フレーズの受け渡しが細かいところに出る点にある。きっちり整った合唱というより、複数の声が前へ出てきては引く、その動き自体が曲の推進力になっている。
タイトル曲の存在感
本作を語るうえで外せないのが、Tony Hester作の「Whatcha See Is Whatcha Get」だ。シングルとして大きくヒットし、Billboard Hot 100ではトップ10入り、R&Bチャートでも上位を記録した。グループ初のゴールド・ディスクにもつながった曲で、アルバムの顔として機能している。
この曲は、歌詞の主張がそのままタイトルになっていて、飾りの少ない言い切りの強さがある。演奏は派手に鳴らしすぎず、歌の輪郭をはっきり見せる作り。イントロからリズムの刻みが安定していて、そこにリードが乗ると、グループの声が前後に押し出される。聴感上のポイントは、メロディの流れよりも、言葉の置き方とコーラスの返し方にある。
アルバムとしての位置づけ
『Whatcha See Is Whatcha Get』は、The Dramaticsにとって最初のアルバムであると同時に、70年代の活動を決定づけた入口の作品でもある。翌1972年には「In The Rain」がR&Bチャート1位、Hot 100でも上位に入る大きなヒットとなり、1973年には「Hey You! Get Off My Mountain」も続く。本作はその前段階にありながら、すでにグループの売り物がはっきりしている。つまり、メロディの甘さだけで押すのではなく、歌い回しの緊張感とアンサンブルのまとまりで勝負する型が、この時点で固まっている。
批評家のRobert Christgauが彼らを「デトロイト版テンプテーションズ」と呼んだことも知られている。モータウンの洗練と比べられやすいが、The Dramaticsはもっと直接的で、声のぶつかり合いが前に出る。Stax系のサザン・ソウルの文脈に置かれながらも、デトロイト育ちの感覚が残っている点が面白い。華やかな装飾より、歌の運びと感情の切り替えで聴かせる作りだ。
レーベルと盤の見どころ
オリジナルはUS盤のVolt、カタログ番号はVOS-6018。VoltはStaxの傘下レーベルで、60番台後半から70年代初頭にかけて多くの重要作を出している。本作の時期には、Voltのレーベル・デザインもオレンジ地に黒文字の仕様へ移行しており、VOS-6018以降のタイトルに使われたものとして知られる。作品そのものが1971年のリリースで、後年の再発とは別に、この時点のオリジナル・リリースとして押さえられる一枚だ。
収録曲はいずれもGroovesville Music (BMI)出版。タイトル曲の成功だけでなく、アルバム全体がその周辺の空気を共有していて、シングルのための寄せ集めではなく、グループの初期像をまとめた作品として読める。ソウル・グループのアルバムでありながら、各曲の配置に無駄が少なく、声の重ね方とリズムの置き方に集中しているのが印象に残る。
まとめ
『Whatcha See Is Whatcha Get』は、The Dramaticsが苦難を越えて本格的に表舞台へ出た瞬間を記録したデビュー作だ。デトロイトの背景、Stax/Voltの制作環境、Tony HesterとDon Davisの手つき、そしてタイトル曲のヒットが重なって、グループの個性が最初から濃く出ている。70年代ソウルの中でも、歌の説得力とアンサンブルの密度を軸にした一枚として印象が残る作品だ。
トラックリスト
- A1 Get Up And Get Down 3:10
- A2 Thank You For Your Love 4:25
- A3 Hot Pants In The Summertime 3:57
- A4 Whatcha See Is Whatcha Get 3:56
- B1 In The Rain 5:08
- B2 Gimme Some (Good Soul Music) 2:35
- B3 Fall In Love, Lady Love 4:34
- B4 Mary Don't Cha Wanna 3:41