Willie Hutch - The Mack (1973)
Willie Hutch 1973

Willie Hutch - The Mack (1973)

Funk / Soul Funk Soul Rhythm & Blues

Willie Hutch『The Mack』(1973) レビュー

ウィリー・ハッチは、モータウンの現場で長く仕事をしてきたソングライター/プロデューサーであり、自身の歌唱でも存在感を残した人物だ。本作『The Mack』は、1973年公開の同名映画のオリジナル・サウンドトラックで、ハッチにとって初のサウンドトラック作品でもある。アルバムとしてはMotownからの4作目にあたり、彼のキャリアの中でも重要な位置を占める一枚として扱われている。

映画と結びついた、機能性の高いソウル/ファンク盤

『The Mack』は、映画のために作られた音楽でありながら、単なる付随音源にとどまらないまとまりを持つ。収録曲はすべてウィリー・ハッチ自身の作曲、編曲、プロデュース、演奏によるもので、作品全体に統一感がある。クレジットには、MoWest Studioのスタッフへの謝辞や、Eddy Theodorouによるマネジメント/ディレクション、Jim Brittによるカバー写真なども記されている。制作の輪郭がはっきりしていて、モータウンのサウンドトラック作品の中でも、個人作家の色が強い内容になっている。

サウンドは、ソウルを基調にしながらファンクのリズムが前に出る。ベースとドラムの押し出しが強く、ホーンやギターが細かく絡む場面も多い。映画の題材がブラックスプロイテーションの文脈にあるため、音楽もその空気を支える役割を持つが、ハッチの手つきは粗くならず、メロディとグルーヴの両方を整理している。モータウンの洗練と、70年代初頭の黒人音楽らしい硬さが同居した作りだ。

代表曲「Brother’s Gonna Work It Out」

このアルバムで最も知られているのが「Brother’s Gonna Work It Out」だ。ウィリー・ハッチにとってソロ名義で初めてビルボード・チャート入りした楽曲としても知られ、作品の象徴的な一曲になっている。力の入ったビートと、前へ進むような展開が印象に残る曲で、サウンドトラックの中でも独立した強さを持つ。

この曲は後年のDJや編集盤の文脈でも参照され、1998年にはThe Chemical Brothersが『Brothers Gonna Work It Out』というタイトルでミックス/コンピレーション作品を発表した。タイトルだけでなく、収録の冒頭にハッチのオリジナルを置いている点も、この曲の影響の大きさを示している。70年代ファンクの素材として、後世に拾い上げられた例のひとつだ。

ウィリー・ハッチのキャリアの中での位置づけ

ウィリー・ハッチは、モータウンの裏方としても重要な仕事を数多く残している。スモーキー・ロビンソン、マーヴィン・ゲイ、ダイアナ・ロス、マイケル・ジャクソン、アレサ・フランクリンらの作品に関わり、The Jackson 5の「I’ll Be There」でも知られる。本作は、そうした作家・職人的な仕事の延長線上にありながら、自分自身を前面に出した作品でもある。

特に『The Mack』では、ハッチのソングライターとしての整理された構成力と、ファンクの現場感がそのまま結びついている。マーヴィン・ゲイやカーティス・メイフィールドのように、社会の空気を音に落とし込むタイプのソウル・アーティストと並べて語られることが多いのも、このアルバムの性格と重なる。映画音楽でありながら、ハッチ自身の表現として聴こえる点がはっきりしている。

オリジナル盤としての魅力

今回のUS盤は1973年リリースのオリジナル期にあたるMotown盤で、レーベル表記はM 766L。モータウンの70年代前半らしい資料性の高い一枚でもある。サウンドトラック盤は映画の宣伝物として見られがちだが、この作品はアルバム単体でも流れが作られていて、曲間のつながりやリズムの配置にハッチの意図が感じられる。映画の内容を知らなくても、ファンク/ソウル作品として筋の通った聴き方ができる盤だ。

『The Mack』は、ウィリー・ハッチの作家性、モータウンの制作力、70年代ブラックシネマの空気が重なった記録として残る。代表曲「Brother’s Gonna Work It Out」を中心に、当時のファンク/ソウルの実用性と表現性が同時に見えるアルバムである。

トラックリスト

  1. A1 Vampin' 2:45
  2. A2 Theme Of The Mack 5:36
  3. A3 I Choose You 3:42
  4. A4 Mack's Stroll / The Getaway (Chase Scene) 3:08
  5. B1 Slick 3:36
  6. B2 Mack Man (Got To Get Over) 5:10
  7. B3 Mother's Theme (Mama) 3:56
  8. B4 Now That It's All Over 4:31
  9. B5 Brother's Gonna Work It Out 4:46

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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