Lee Moses - Time And Place (1971)
Lee Moses 1971

Lee Moses - Time And Place (1971)

Funk / Soul Soul

Lee Moses『Time And Place』

1971年にUSのMaple Recordsから出たLee Mosesの唯一のアルバム。アトランタ出身のR&B/ソウル歌手でギタリストだった彼が、短い録音キャリアの中で残した1枚である。シングルを8枚だけ発表し、LPはこの作品のみ。そうした経歴そのものが、このレコードの位置づけを強くしている。華やかなヒット作というより、限られた機会の中で録音された濃い内容の作品集として受け止められてきた盤だ。

Lee Mosesという人物

Lee Mosesは1941年3月13日、ジョージア州アトランタ生まれ。1950年代後半には地元でShowstoppersを率い、Royal Peacockのハウスバンドも務めていたという。1960年代半ばにはニューヨークへ移り、セッション・ミュージシャンとして活動。プロデューサーのJohnny Brantleyのもとで1965年に「My Adorable One」を録音している。ギターの鳴らし方はかなり荒く、歪んだフレーズを前面に出すタイプで、同時代のジミ・ヘンドリックスと並べて語られることもある。もっとも、本人のキャリアは大きく広がらず、このアルバムが長く代表作として扱われてきた。

ソウルとファンクのあいだで鳴る1枚

『Time And Place』は、ディープ・ソウルの熱量とファンク寄りの骨太さが同居した内容。制作にはOhio Playersのメンバーらも参加しており、演奏の芯が太い。Lee Mosesの歌は、声をきれいに整える方向ではなく、感情をそのまま押し出すタイプで、ギターも同じく切れ味重視。曲によっては荒さが前に出るが、そのぶん歌と演奏の距離が近い。

この盤で特に知られているのが、The Mamas & the Papasの「California Dreaming」と、Tim Roseで知られる「Hey Joe」のカバー。前者は原曲の整ったフォーク・ポップ感を崩し、ざらついたソウル表現に置き換えている。後者も、すでに多くのカバーがある曲だが、Lee Moses版はギターの押し出しと歌の粘りが前に出ていて、曲の輪郭がかなり変わって聴こえる。どちらも、単なるカバーというより、素材を自分の声で塗り替えた録音として印象に残る。

当時は静かに終わり、後年に評価が広がった盤

1971年のリリース当時、このアルバムは商業的に大きな注目を集めなかった。Lee Moses自身も1970年代前半にアトランタへ戻り、その後は新たな録音を残さず地元での活動に専念したとされる。結果として、『Time And Place』は長く埋もれた存在になったが、後年、ディープ・ソウルを掘り続けるコレクターやリスナーのあいだで再発見が進んだ。現在では、Lee Mosesの名を語るうえで避けて通れない1枚として扱われている。

アルバム単位で見ると、収録曲の並びにも無駄が少ない。派手な売り場向けの構成ではなく、歌、ギター、リズム隊のぶつかり方をそのまま残したような作りで、1970年代初頭のソウル・アルバムらしい生々しさがある。ヒット曲中心の作品ではないが、「California Dreaming」や「Hey Joe」のように、曲名を手がかりに入ってもLee Mosesの色が強く出る構成になっている。

オリジナル盤としての『Time And Place』

本作は1971年にMaple RecordsのLP 6001として出たオリジナル盤。Maple Recordsはニュージャージー州イングルウッドのソウル/ロック系レーベルで、このアルバムもその文脈に置かれる。後年にはLee Mosesの再評価に伴って編集盤やシングル集も登場したが、オリジナルのLPとしての『Time And Place』は、彼の録音活動の到達点をそのまま封じ込めた資料性の高い一枚として見られている。

Lee Mosesの作品数は少ないが、このアルバムにはその少なさを補って余りある密度がある。歌の荒さ、ギターの切迫感、カバー曲の解釈、そして当時のソウル/ファンクの現場感。その全部がまとまっている。派手な成功の記録ではなく、ひとりのシンガー/ギタリストが残した具体的な音の記録として、今も強く印象に残る作品である。

トラックリスト

  1. A1 Time And Place 3:05
  2. A2 Got That Will 3:00
  3. A3 What You Don't Want Me To Be 2:53
  4. A4 California Dreaming 4:28
  5. A5 Every Boy And Girl 2:43
  6. B1 Hey Joe 6:05
  7. B2 Free At Last 3:50
  8. B3 Would You Give Up Everything 3:28
  9. B4 Adorable One 3:48

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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