Ann Peebles - I Can't Stand The Rain (1974)
Ann Peebles『I Can't Stand The Rain』(1974)について
Ann Peeblesの『I Can't Stand The Rain』は、1974年にHi Recordsから発表されたソウル・アルバムである。タイトル曲の存在感が非常に大きく、彼女の代表作として長く語られてきた一枚だ。Ann Peeblesはアメリカ・イリノイ州イースト・セントルイス出身のシンガー/ソングライターで、1970年代のメンフィス・ソウルを代表する歌い手のひとりとして知られる。この作品でも、その落ち着いた歌い回しと、Hiレーベルらしい引き締まった伴奏がきれいに噛み合っている。
メンフィス・ソウルの中での位置づけ
Hi Recordsは、メンフィスを拠点にしたソウル/ロカビリーの重要レーベルで、Willie Mitchellの存在でもよく知られている。Ann PeeblesはそのHiで頭角を現したアーティストのひとりで、本作は彼女のキャリアの中でも特に印象が強い時期の作品に当たる。後に夫となるDon Bryantとの共作も含め、レーベル内の作家性と演奏力がまとまった形で出たアルバムという見方がしやすい。
AllMusicでは、Willie Mitchell率いるHiの堅実な演出の中で、Peeblesの「落ち着いていて妖艶な歌声」がよく映える作品と評されている。実際、派手な装飾で押すタイプのアルバムではなく、リズム隊、ホーン、コーラスの配置がきっちりしていて、その上で歌が前に出る作りになっている。メンフィス・ソウルらしい、過不足の少ない設計が印象に残る。
タイトル曲の強さ
このアルバムを語るうえで、やはりタイトル曲「I Can't Stand the Rain」は外せない。失恋や孤独の感情を、雨音を使った印象的な仕掛けで描いた曲で、アルバム全体の核になっている。シングルとしても評価が高く、アメリカではR&Bチャート6位、Billboard Hot 100で38位を記録した。英国でも1974年にチャート入りしており、作品の代表曲として国をまたいで認知された形である。
曲の成立については、Ann Peebles、Don Bryant、DJのBernard Millerの共作とされ、後年の証言では、雷雨のさなかに生まれたアイデアだったとも語られている。こうした背景を踏まえると、タイトル曲の雨というモチーフは単なる比喩ではなく、制作の発端そのものにも結びついているように見える。曲の入り口にある雨音の使い方も含めて、アルバムの顔として強い記憶を残す。
聴きどころと作品の質感
収録曲全体を通してみると、Ann Peeblesの歌は大きく張り上げるのではなく、抑えた温度のまま感情を運ぶ。そのため、歌詞の内容が前に出やすい。聴感上は、声の芯が細くならず、言葉の切れ方も明確で、低めのテンポの曲でも間がもたない。メンフィス録音らしいタイトさが、そのまま彼女の歌の輪郭を支えている印象だ。
演奏面では、Royal Recording Studiosで録音され、Mastercraftでディスク・マスタリングされたことがクレジットに残っている。Hiの作品群に共通する、音の整理のよさと、ソウルのグルーヴをきっちり保つ作りがここでも確認できる。アルバムとしては、派手な展開よりも、曲ごとの温度差や歌の置き方で聴かせるタイプである。
当時の評価と後年の見られ方
発売当時の商業成績は、アルバム単体ではBillboard 200で155位まで上昇したとされ、大ヒット作というよりは、シングルの強さで支えられた作品だった。とはいえ、時間がたつにつれて評価がはっきりしてきたタイプでもある。特にタイトル曲は、後年にかけて多くのカバーやサンプリングの対象となり、Ann Peebles自身の名をさらに広く知らしめることになった。
また、この曲はジョン・レノンにも高く評価されたことで知られ、ソウルの枠を超えて耳に届いた事例としても重要だろう。Hip-Hopの文脈でも、Ann PeeblesはRZAやWu-Tang Clan、Missy Elliottなどにサンプリングされてきた。『I Can't Stand The Rain』は、その後のブラック・ミュージックにおける参照点のひとつとして機能してきた作品でもある。
1974年のソウル作品として
1974年のソウルは、フィリー・ソウルの洗練、モータウン以後のR&B、南部ソウルの粘りが、それぞれ別の形で存在感を持っていた時期である。その中で本作は、メンフィスの空気を保ったまま、過度に華やかにせず、歌と演奏の関係で勝負するアルバムとして置ける。Ann Peeblesの作品群の中でも、代表曲の強さとアルバムとしてのまとまりが同居した一枚という印象が残る。
なお、今回の盤は1974年のUSオリジナル期のリリースで、Hi RecordsのXSHL 32079。ラベルには「Hi」表記が見られ、AL(Audio Manufacturing Record Co.)プレスとして区別される版である。再発盤ではなく、当時の空気をそのまま反映したオリジナル時代の一枚として見るのが自然だろう。
トラックリスト
- A1 I Can't Stand The Rain 2:29
- A2 Do I Need You 2:32
- A3 Until You Came Into My Life 3:10
- A4 (You Keep Me) Hangin' On 2:39
- A5 Run, Run, Run 2:34
- B1 If We Can't Trust Each Other 2:50
- B2 A Love Vibration 2:45
- B3 You Got To Feed The Fire 2:20
- B4 I'm Gonna Tear Your Playhouse Down 2:44
- B5 One Way Street 2:51
動画プレイリスト
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Ann Peebles - Can't Stand the Rain (Official Album Stream)
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Ann Peebles - I Can't Stand the Rain (Official Audio)
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Ann Peebles - Do I Need You (Official Audio)
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Ann Peebles - Until You Came Into My Life (Official Audio)
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Ann Peebles - (You Keep Me) Hangin' On (Official Audio)
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Ann Peebles - Run, Run, Run (Official Audio)
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Ann Peebles - If We Can't Trust Each Other (Official Audio)
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Ann Peebles - A Love Vibration (Official Audio)
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Ann Peebles - You Got to Feed the Fire (Official Audio)
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Ann Peebles - I'm Gonna Tear Your Playhouse Down (Official Audio)
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Ann Peebles - One Way Street (Official Audio)