Sylvester - Sylvester (1977)
Sylvester 1977

Sylvester - Sylvester (1977)

Electronic Funk / Soul Funk Soul Disco

Sylvester『Sylvester』(1977)について

Sylvesterのセルフタイトル作『Sylvester』は、1977年にUSのFantasyから出たアルバムで、彼のキャリアの中でも初期の転換点にあたる作品だ。ゴスペル由来の歌唱力を土台にしながら、ソウル、ファンク、ディスコへと足を踏み出していく途中の姿が、そのまま盤に刻まれている。のちに「ディスコの象徴」として語られることの多いSylvesterだが、この時点ではまだ、ソウル歌手としての輪郭を強く残しているのが面白いところだ。

制作はFantasy Studios, Berkeleyで行われ、ミックスとマスタリングまで同じ環境でまとめられている。Fantasyというレーベル自体、ジャズやソウル、ルーツ音楽の蓄積を持つ会社で、当時のディスコ専業レーベルとは少し空気が違う。そのため、このアルバムにはクラブ向けの推進力だけでなく、バンド演奏をしっかり聴かせる構えがある。Sylvesterの歌を中心に置きつつ、サウンド全体はファンク寄りのグルーヴとダンス性を行き来する作りになっている。

作品の位置づけ

この1977年作は、Sylvesterにとって「本格的にディスコへ寄っていく前段階」として重要な一枚だ。後年の『Step II』ほど全面的にディスコへ振り切った作品ではなく、ソウル歌手としての表情、ファンクの硬さ、ダンス・トラックとしての機能が同居している。そうした中間地点のような位置にあるため、彼の音楽がどこからどこへ変化していったのかを追いやすい。

制作面ではHarvey Fuquaの関与が大きい。モータウン周辺の流れを知る人物が手がけたことで、単なるクラブ向けの音だけではなく、ヴォーカルの組み立てやコーラスの配置にソウル・レコードらしい感触が残る。Sylvesterの歌い方も、飾りを増やすより、声量と押し出しで曲を引っ張るタイプで、ここではその強さが前面に出ている。

収録曲と聴きどころ

このアルバムでまず触れたいのは「Down, Down, Down」だ。BillboardのDance chartで18位を記録した曲で、当時のSylvesterにとっては大きな足がかりになった。リズムの粘りとヴォーカルの押し返しがきれいに噛み合っていて、ダンスフロアで機能することをはっきり示している。

もう一つの代表曲が「Over and Over」だ。後の再プレスでは12インチ・リミックス版が収録されるが、オリジナル初回盤にはこの曲のオリジナル・ミックスが入っている。アルバムの初回盤と再プレス盤で内容が異なる点は、この作品を追ううえで重要だ。初回盤はオリジナルの流れをそのまま聴ける一方、後発盤はクラブ向けの延長線を意識した形になっている。

また、インナー・スリーブとレーベルで曲の時間表記が異なる曲が多いことも、この盤の特徴として知られている。B3はインナー・スリーブでは「I’ve Been Down」と表記されており、こうした細部からも当時の制作・流通の実務的な事情が見えてくる。

サウンドの印象

実際に聴くと、派手な装飾よりも、歌とリズムの組み立てが先に来るアルバムだとわかる。Sylvesterの声は高域で伸びるだけでなく、言葉の切り方に芯があるので、ダンス曲でも輪郭がぼやけない。バックを支えるMartha WashとIzora Rhodesのコーラスも重要で、主旋律を押し上げる役割が大きい。のちにTwo Tons O’ Fun、さらにWeather Girlsへつながる人脈を思うと、この時点ですでにサウンドの核ができている。

同時代のディスコ作品と比べると、ここにはまだサンフランシスコのクラブ文化とソウル・バンドの生っぽさが残る。New Yorkの洗練されたディスコとは少し違い、もっと歌の強度で押していく感じがある。Sylvester自身のルーツであるゴスペルの影も、そのまま力になっている印象だ。

この時期のSylvester

Sylvesterは1947年生まれのアメリカのディスコ/ソウル歌手で、のちにHi-NRGの先駆けのひとり、そしてディスコの“male diva”として知られる存在になる。このアルバムは、そうした後年のイメージが固まる前の段階を示す記録でもある。大きく振り切る前の作品だからこそ、歌手としての素地、クラブ向け音楽への接近、そしてソウルの文法が同じ場所に置かれている。

結果として『Sylvester』は、後年の大成功を直接なぞる作品というより、そこへ至る道筋を見せる一枚になっている。ヒット曲だけで押すタイプのアルバムではないが、「Down, Down, Down」や「Over and Over」を中心に、彼がどの地点からディスコの中心へ入っていったのかが見えやすい。1977年という年の空気と、Sylvesterの歌の強さが、そのまま記録された作品だ。

トラックリスト

  1. A1 Over And Over 7:02
  2. A2 I Tried To Forget You 5:02
  3. A3 Changes 3:08
  4. A4 Tipsong 3:55
  5. B1 Down, Down, Down 5:18
  6. B2 Loving Grows Up Slow 4:05
  7. B3 I Been Down 3:42
  8. B4 Never Too Late 2:57

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