モップス - モップスと16人の仲間 (1972)
モップス『モップスと16人の仲間』(1972)レビュー
モップスの『モップスと16人の仲間』は、1972年に発表された通算6作目のアルバムである。グループ・サウンズ出身のバンドとして知られるモップスが、サイケデリック期を経て、70年代初頭の日本のロック/フォーク・シーンと深く接続していく流れの中で作り上げた作品だ。初期の英米ロック志向から、日本語の歌、フォーク寄りの感覚、バンドとしての硬さが同居する内容で、モップスの活動の中でも位置づけのはっきりした一枚になっている。
作品の輪郭
このアルバムの特徴は、モップス自身の楽曲だけでなく、当時の第一線にいたフォーク/ニューミュージック系の作家たちの曲を取り込みながら、バンドとしての色を保っている点にある。収録曲には「たどりついたらいつも雨ふり」があり、本作を語るうえで外せない代表曲になっている。ほかにも「母さんまっ青」「窓をあけろ」といった曲が並び、曲ごとの温度差を保ちながらも、アルバム全体としてはまとまりがある。
モップスは、1960年代後半の日本でいち早くサイケデリック・ロックを打ち出したバンドとしても知られるが、本作ではその時期の実験性をそのまま引きずるというより、歌を中心に据えた構成が目立つ。ギターの硬さやバンドの推進力は残しつつ、メロディや言葉の運びに日本の歌謡曲やフォークの感触が入り込む。グループ・サウンズの延長線上にあるバンドが、70年代のロック・アルバムへ移っていく過程の記録としても興味深い。
「たどりついたらいつも雨ふり」の存在感
本作の代表曲「たどりついたらいつも雨ふり」は、モップスの後年を含めても最も知られた曲のひとつだろう。曲名どおりの情景がそのまま歌の軸になっていて、派手な装飾よりも、言葉の運びとメロディの反復で印象を残す。バンドの演奏は、歌を前に出しながらもきちんと踏み込んでいて、ロック・バンドとしての骨格がはっきりしている。
この曲がアルバムの知名度を支えているのは確かだが、全体を聴くと、単独のヒット曲だけで成り立つ作品ではない。バンド曲と外部作家の楽曲が並ぶことで、アルバムの表情が広がっている。モップスの演奏が、単なる伴奏ではなく、曲の性格をまとめ上げる役割を果たしている点も見逃せない。
モップスというバンドの位置
モップスは、1960年代後半の日本ロック史の中で、サイケデリック・バンドとして語られることが多い。だが70年代に入ると、より日本語の歌を前面に出し、フォークや歌謡曲とも接点を持ちながら活動を続けた。本作は、その変化がかなり見えやすい時期の作品である。初期の実験的な側面だけでなく、歌を成立させるためのバンド演奏、曲の構成、言葉の置き方がしっかりしている。
同時代の日本のロックを見渡すと、はっぴいえんど周辺の動きや、フォークからロックへ近づいていく流れがある。その中でモップスは、よりバンド色の強い編成感を保ちつつ、日本語の楽曲をロックとして鳴らしている。英米ロックの模倣にとどまらず、日本のポップスやフォークの文脈へ入り込んでいく姿勢が、本作ではよく見える。
サウンドと聴きどころ
聴感上は、ギターとリズム隊の押し出しがまず残る。サイケ期の派手な音響効果を前面に出すのではなく、比較的ストレートなバンド・サウンドで進む曲が多い。そこに歌のメロディが乗ることで、ロックとしての勢いと、日本語詞の自然さが両立している。耳に残るのは、音の奇抜さよりも、曲の進行と歌の運びだ。
また、モップスの作品群の中では、バンドの表現が整理されてきた段階にある。初期のような「何をやるか」を見せるアルバムではなく、曲の完成度で聴かせる方向へ寄っている。結果として、アルバム単位での流れがつかみやすい。派手に転調したり、極端な演出に頼ったりする場面は多くないが、そのぶん曲の輪郭が見えやすい。
1972年盤としての意味
1972年という年は、日本のロックが定着していく途中にある。グループ・サウンズの時代が過ぎ、サイケデリックの熱も一段落し、フォークやニューミュージックの言葉が強くなっていく時期だ。『モップスと16人の仲間』は、その変化の中で、モップスが自分たちの立ち位置を更新した作品として置ける。バンドの歴史を追うときにも、代表曲を知るときにも、外せない一枚である。
オリジナルのリリースは1972年、日本盤として登場した作品だ。後年の再評価でもよく取り上げられ、モップスのアルバムの中でも重要作として扱われている。サイケデリック・ロックの記憶を残しながら、70年代の日本語ロックへ接続していく、その途中の手触りがこの盤にはある。
トラックリスト
- A1 たどりついたらいつも雨ふり
- A2 大江戸冒険譚
- A3 いつか
- A4 マイ・ホーム
- A5 母さんまっ青
- A6 くるまとんぼ・アンドロメダ
- B1 あるがままに
- B2 ねえ、ちょいとそこゆくお嬢さん
- B3 当世少女気質
- B4 窓をあけろ
- B5 もう、いやだよ
- B6 輪廻