The Orient Express - The Orient Express (1969)
The Orient Express 1969

The Orient Express - The Orient Express (1969)

Rock Psychedelic Rock Folk Rock

The Orient Express『The Orient Express』(1969)

『The Orient Express』は、ヨーロッパ出身の3人組がアメリカに渡って制作した、1969年発表の唯一のLPである。フランス人ギタリストのギィ・デュリス、ベルギー出身のブルーノ・ジエ、ペルシャ古典打楽器の名手ファルシド・ゴレシュキという編成で、当時のロックの語法に中東系の旋律や打楽器を持ち込んだ作品として知られている。ジャンル表記ではFolk Rock、Psychedelic Rockに置かれることが多いが、実際にはそれだけでは収まりきらない、かなり独特の手触りを持つ1枚だ。

異文化の接点としてのアルバム

この作品の面白さは、メンバーそれぞれの背景がそのまま音に反映されている点にある。ギィ・デュリスはオウドに惹かれたフランス人、ブルーノ・ジエはロック畑、ファルシド・ゴレシュキはペルシャの伝統打楽器を操る奏者で、出自も経歴もかなり異なる。そうした3人が、パリで出会い、その後アメリカへ渡って活動の場をニューヨーク、さらにカリフォルニアへと移していく流れ自体が、このアルバムの内容をそのまま示しているようでもある。

AllMusicでは、こうした作品をワールド・フュージョンの初期的な試みとして位置づけている。1969年という時点で、ロックの中に中東的な要素を取り込む発想はまだかなり先鋭的だったはずで、後年の感覚で聴くと、むしろ混ぜ方の自然さが印象に残る。オウド、シタール、ダンベクといった楽器が前面に出る場面でも、単なる異国趣味には寄らず、バンドとしての推進力が保たれているのが特徴だ。

サイケデリック期のロックの中で

音の芯はロックにあるが、当時のサイケデリック作品にしばしば見られるギター中心の展開とは少し違う。リズムの置き方や旋律の運びに、中東音楽の感覚が強く入り込んでいて、そこに西洋ロックのバンド編成が重なる構図になっている。英語詞ではあるものの、発音の癖が残っていることも含めて、歌そのものよりも、声の響きと演奏の往復で聴かせるタイプのアルバムといえる。

実際に通して聴くと、派手なヒット曲で押す作品というより、曲ごとの質感の差や、楽器同士のぶつかり方を味わう内容になっている。中東的な旋律が単なる装飾で終わらず、楽曲の骨格に組み込まれているため、耳に残るのはメロディ以上に、打楽器の細かな揺れや弦楽器の音色の重なりだ。サイケデリック・ロックの広がりと、フォーク由来の素朴さ、その間を行き来するような感触もある。

当時の受け止められ方とその後

リリース当時の業界誌でも一定の関心を集めたようで、『Cash Box』では好意的な紹介がなされ、『Record World』でも新奇な中東風サウンドとして取り上げられている。商業的な大成功に結びついた形跡は見えにくいが、その後に再発が繰り返されていることからも、後年になって評価が見直された作品であることはうかがえる。オリジナル盤の1969年版と、のちの再発盤とを比べると、作品の価値そのものはむしろ時間を経て強く意識されるようになったタイプだろう。

同時代の文脈で見れば、サイケデリック・ロックの拡張志向や、民族音楽への接近という流れの中に置ける。たとえば西洋ロックにインド的要素を持ち込んだ作品群と並べて考えると、このアルバムは中東側の感覚をより前景化している点が目立つ。結果として、1969年の作品でありながら、今聴いても「時代の見本市」ではなく、3人の演奏家が実際に交差した記録としてまとまっている印象がある。

まとめ

『The Orient Express』は、ヨーロッパ出身のメンバーがアメリカで形にした、異文化混交のロック作品である。Folk Rock、Psychedelic Rockの枠に置かれつつも、オウドやシタール、ダンベクの存在がはっきりと個性を作っている。唯一のLPという位置づけも含めて、バンドの出自、当時のサイケデリックの空気、そして中東音楽への接近がひとまとまりになった、1969年らしい1枚だ。

トラックリスト

  1. A1 Fruit Of The Desert
  2. A2 Dance For Me
  3. A3 Layla
  4. A4 Birds Of India
  5. A5 Train To Bombay
  6. A6 Caravan Of Silk
  7. B1 Azaar
  8. B2 For A Moment
  9. B3 Impulse (42 Drums)
  10. B4 A Little Star
  11. B5 Cobra Fever

動画プレイリスト

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