The Nice - Elegy (1971)
The Nice 1971

The Nice - Elegy (1971)

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The Nice『Elegy』――解散後に届いた、バンドの終章をまとめた1枚

The Niceの『Elegy』は、1971年に発表されたアルバムで、Keith Emerson在籍期のバンドを代表する作品のひとつだ。The Niceは、のちのEmerson, Lake & Palmerへつながる前史として語られることが多いが、この作品ではすでにその核がはっきり見える。クラシック曲の引用、ロック・バンドとしての強い推進力、そしてライヴ演奏の緊張感。そうした要素が、解散後のリリースという形でひとつにまとまっている。

UKチャートでは最高5位を記録しており、活動末期の作品でありながら当時の英国ではかなり大きな反応を得た。The Niceのアルバムの中でも、バンドの到達点と終わりの両方を抱えた位置づけがはっきりしている。しかも収録曲はスタジオ録音だけでなく、ライヴ録音も含む構成で、The Niceが舞台上でどんなバンドだったかをそのまま残している。

収録内容と音の印象

この盤を聴くと、まずKeith Emersonの存在感が前に出る。ピアノ、オルガン、アレンジの組み立て方まで、どの曲でも中心にいる。The Niceはもともと、P.P. Arnoldのバック・バンドとして始まり、そこから独立していった経緯を持つが、『Elegy』ではその出自よりも、バンドがロックとクラシックを接続する方向へ進んだ結果がそのまま鳴っている。

「Hang On to a Dream」はTim Hardinの曲で、フォーク寄りの素材をThe Nice流に引き伸ばしたような仕上がり。「My Back Pages」はBob Dylanの楽曲で、原曲の輪郭を残しつつも、キーボード主体の展開で別の曲のように聞こえる。「3rd Movement Pathetique」はチャイコフスキーの「悲愴」第3楽章をもとにした構成で、The Niceらしいクラシック引用の代表例だ。「America 2nd Amendment」はバーンスタイン/ソンドハイムの「America」を下敷きにしたトラックで、原曲の知名度を借りながら、演奏の勢いで押し切るタイプの曲になっている。

とくに「Hang On to a Dream」と「America 2nd Amendment」はフィルモア・イーストで録音されたライヴ音源で、観客の空気や会場の広さまで含めて記録されている感じが強い。スタジオ録音の整った響きと比べると、こちらは演奏の立ち上がりや間の取り方に生々しさがある。The Niceが“聴かせるバンド”であると同時に、“見せるバンド”でもあったことが伝わる部分だ。

1971年の文脈の中で

1971年の英国ロックは、シンフォニック・ロックがひとつの流れとして強まっていた時期でもある。Yes、Genesis、Van der Graaf Generator、King Crimsonといったバンドが、それぞれ別の方向で長尺化や構築性を進めていた。その中でThe Niceは、かなり早い段階からクラシック音楽の要素をロックに持ち込んでいたグループとして重要だ。後発のバンドがより大きな編成や精密な構成へ進む前に、The Niceはすでに“ロックでクラシックを扱う”ことを実地で試していた。

その意味で『Elegy』は、単なる編集盤や余り物の集成ではなく、The Niceの方法論が最後まで残った記録になっている。Keith Emersonの演奏が目立つのはもちろんだが、Lee Jackson、Brian Davisonとのアンサンブルも含めて、バンドとしての推進力がある。ジャズ寄りの即興というより、曲の骨格を大きく揺らしながら進めるタイプの演奏で、そこにこのグループの個性がある。

1982年盤について

今回の盤は1982年リリースのUK盤で、オリジナルの1971年盤とはレーベル面の仕様が異なる。Charismaの青いレーベルに小さなMad Hatterロゴが入り、「Marketed and distributed by Phonogram Ltd.」の表記があるタイプで、70年代初頭の初回仕様とは見分けがつく。CharismaはThe NiceやGenesis、Van Der Graaf Generatorなどを抱えた英国の重要レーベルで、この時期の再発・流通形態も含めて、英国プログレの歴史を追ううえで見どころが多い。

一方で、作品そのものは1971年の空気を強く残している。録音の質感や選曲、ライヴ音源の入り方まで、時代の流れをそのまま閉じ込めたような内容だ。再発盤であっても、聴こえてくる中心は変わらない。The Niceが解散へ向かう中で、どこまで自分たちの語法を押し広げられたか、その答えがまとまったアルバムとして受け取れる。

まとめ

『Elegy』は、The Niceの終盤を記録した作品であり、Keith Emersonの存在感、クラシックとロックの接続、ライヴの緊張感が同居したアルバムだ。ヒット面でも英国で好成績を残し、バンドの評価を支えた一枚でもある。Emerson, Lake & Palmerへつながる前の段階で、The Niceが何をやっていたのかを確認するには、かなりわかりやすい作品になっている。

トラックリスト

  1. A1 Hang On To A Dream 12:43
  2. A2 My Back Pages 9:12
  3. B1 3rd Movement Pathetique 7:05
  4. B2 America 2nd Amendment 10:27

動画プレイリスト

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