Roxy Music - Avalon (1982)
Roxy Music『Avalon』(1982) レビュー
Roxy Musicの8作目となるスタジオアルバム『Avalon』は、1982年にUKでリリースされた作品で、バンドにとって現在まで最後のスタジオアルバムでもある。ブライアン・フェリーを中心に、フィル・マンザネラ、アンディ・マッケイら長年のメンバーが関わり、バンド後期の到達点としてよく語られる1枚だ。ロック色の強い初期作とは違い、ここでは音の輪郭が細かく整えられ、歌と演奏のあいだに余白が多い。華やかさよりも、夜の静けさや移動の気配が残るアルバムとして聴こえる。
制作とリリースの背景
録音はロンドンのギャラリー・スタジオでの基礎作業を経て、バハマのコンパス・ポイント・スタジオ、さらにニューヨークのパワー・ステーションへと移されて進められた。プロデュースはレット・デイヴィスとバンド自身の共同名義で、最終的なミックスはボブ・クリアマウンテンが担当している。こうした制作環境の変化もあってか、アルバム全体には空気の抜け方や響きの整理が行き届いている。1982年の作品らしいデジタル以前の手触りを保ちながら、音像はかなり滑らかだ。
このUK盤はジャケット裏にバーコードがない仕様で、印刷された内袋に歌詞が付属していた。レーベルはEG、品番はEGHP 50。EGは1970年代後半に成立したE.G. Records Ltd.系の印字で、当時のリリースらしいディテールがそのまま残っている。
アルバムの位置づけ
『Avalon』はRoxy Musicのディスコグラフィーの中でも、終盤の完成形として扱われることが多い。初期の実験性やアートロック的な尖り方とは距離があり、ブライアン・フェリーのボーカル、曲の間合い、サウンドの整え方が前面に出る。結果として、後年「ソフィスティ・ポップ」と呼ばれる流れの先駆けとして参照されることが多くなった。Roxy Music自身の変化を示すだけでなく、80年代ポップの質感を先取りした作品としても見られている。
同時代のロックと比べると、ギターリフで押す場面は少なく、シンセサイザーやリズムの配置で曲を運ぶ場面が目立つ。派手な展開よりも、音が重ならないように置かれていく感触が強い。後に洗練されたポップスやアダルト・コンテンポラリー寄りの作品を手がけるアーティストたちにも、少なからず影響を残したタイプのアルバムだ。
収録曲と代表曲
先行シングル「More Than This」は全英6位を記録し、アルバムの入口を決定づけた曲として知られる。メロディははっきりしているのに、演奏は前に出すぎない。音数を絞った構成の中で、ブライアン・フェリーの声が中心に残る作りだ。続く表題曲「Avalon」は全英13位、「Take A Chance With Me」は26位を記録している。いずれもアルバムの雰囲気をそのままシングルに切り出したような曲で、派手なフックよりも流れと質感で聴かせる。
実際に聴くと、各曲のテンポは落ち着いているのに、単調には寄らない。パーカッション、シンセ、ギター、ボーカルの位置関係が少しずつ変わり、曲ごとに景色が切り替わる。特にタイトル曲は、リズムの輪郭がやわらかいまま進み、アルバム全体の統一感をよく象徴している。「More Than This」も、ヒット曲らしいわかりやすさを持ちながら、録音の空間そのものが印象に残るタイプの曲だ。
チャートと評価
1982年5月にリリースされた本作は、全英アルバムチャートで1位を獲得し、3週にわたって首位を維持した。その後も長くチャートに残り、商業的にも大きな成功を収めている。全米ではビルボード200で53位だったが、のちにプラチナ認定を受けた。Roxy Musicにとって、批評面と商業面の両方で後期の代表作となったアルバムだ。
Roxy Musicは初期から実験性と洗練を行き来してきたバンドだが、『Avalon』ではその洗練がもっともはっきりした形でまとまっている。バンドの終盤に置かれた作品でありながら、停滞感よりも完成度の高さが先に立つ。1980年代ポップの入口にある1枚として、今もよく参照されるのはそのためだろう。
トラックリスト
- A1 More Than This 4:31
- A2 The Space Between 4:28
- A3 Avalon 4:15
- A4 India 1:45
- A5 While My Heart Is Still Beating 3:25
- B1 The Main Thing 3:47
- B2 Take A Chance With Me 4:43
- B3 To Turn You On 4:10
- B4 True To Life 4:20
- B5 Tara 1:32