Tiger Moth - Howling Moth (1988)
Tiger Moth『Howling Moth』
英フォーク・バンド、Tiger Mothが1988年に発表した『Howling Moth』は、Rogue RecordsからLPとCDで出た作品。ロンドンのIdeal Soundで1988年1月に録音され、制作はJon MooreとBen Mandelsonが担当した。ジャケットはRodney Matthewsが手がけており、作品全体の見た目にも統一感がある。
制作背景
本作の録音には、Rod Stradlingがメロディオンなどを担当し、Jon Mooreがギターとシンセ、Ian A. Andersonがスライド・ギター、Maggie Hollandがベースとバンジョー、Ian Carterがキーボード類、John Maxwellがドラムで参加している。さらにHijaz Mustaphaが複数曲でギター、ブズーキ、歌を担った。録音はDavie Kennyによるもので、制作面ではJon MooreとBen Mandelsonが作品の方向をまとめている。こうしたクレジットからは、演奏者それぞれの役割がはっきりした編成で作られたアルバムであることがわかる。
Tiger Mothは1983年のシングル、1984年の1作目LPを経てこの『Howling Moth』に至っている。1988年作のこのアルバムでは、英語圏のフォークを土台にしながら、ワールド・ミュージック寄りの要素を前面に出していったとされる。参加者の顔ぶれも、フォークの文脈と異なる要素を持ち込む構成になっている。
時代の文脈
FATEAはTiger Mothについて、英語以外の民謡やダンス音楽の要素を大胆に混ぜ、のちの90年代ルーツ・フュージョンの触媒になったと位置づけている。『Howling Moth』もその流れの中にあり、伝統曲の再解釈を、ロック、レゲエ、ジャズ、ブルースの感覚で広げていく作品として扱われている。
FATEAはこの周辺の音を「騒がしく即興的」と表現し、世界音楽、ロックンロール、レゲエ、ジャズ、ブルースを臆せず混ぜる点を挙げている。特に英舞曲レパートリーの解体と再構築に、このバンドの面白さがあるとしている。つまり本作は、フォークの枠組みの中で完結するのではなく、複数の要素を同時に持ち込む制作姿勢が見える一枚。
当時の媒体では、Music Weekが1988年4月に本作を流通品目として取り上げ、5月のチャート記事では25位に入っている。LP、CD、カセットで流通していたことも確認できる。
後世への影響
直接のカバーやサンプリングについて確かな情報は見つかっていない。ただし、FATEAはTiger Mothを90年代のルーツ・フュージョンの先駆けとして評価しており、後年のコンピレーション再編でも本作由来の曲が扱われている。バンド史の中では、単独のアルバムというだけでなく、後続の流れにつながる位置づけで残っている。
トラックリスト
- A1 Sloe Benga 2:59
- A2 Sumolleh? 3:20
- A3 Polka Volta 2:49
- A4 Olympia 3:23
- A5 Conquer Your Glasses 3:37
- A6 The First Wife 3:16
- B1 La Bastringue 3:21
- B2 Gone With The Lind 3:19
- B3 Flor Marchita 3:19
- B4 Mustapha's Home Schottische 3:16
- B5 Moth To California 3:27
- B6 Sestrina 3:37