Tony, Caro & John - All On The First Day (1972)
Tony, Caro & John『All On The First Day』レビュー
Tony, Caro & Johnの『All On The First Day』は、1972年にUKで登場した作品だ。アーティストは英国のフォーク・ロック・トリオとして知られ、この時代のイギリスらしいアコースティック基調の組み立ての中に、素朴さと室内楽的なまとまりを持ち込んでいる。まず全体像としては、派手な演出で押すタイプではなく、声、ギター、曲そのものの輪郭で聴かせるアルバムという印象が強い。フォークを軸にしながらも、演奏の置き方やコーラスの重なりに、単純な弾き語り以上の設計が見える作品だ。
Tony, Caro & Johnは、Tony Doré、Caroline Doré、John Clarkを中心にした英国のフォーク・ロック・トリオで、70年代初頭のイギリスのフォーク文脈に位置づけられる。PentangleやTrees、Fairport Convention周辺の流れを思わせる部分はあるが、こちらはより親密で、演奏の密度をじわじわ見せるタイプに近い。大きな話題作として広く流通したというより、英国フォークの掘り下げで見つかる一枚、という立ち位置がしっくりくる。
作品の位置づけ
『All On The First Day』は、1972年というリリース年の空気をそのまま映したような作品だ。英国ではフォークの伝統とロックの感覚が近い距離で混ざり合っていた時期で、この作品もその中にある。メンバー表記にはSimon Burrett、John Clark、Caroline Doré、Tony Doré、Jonny Owen、Rod Jonesの名前が見えるが、中心にあるのはやはりトリオの歌と演奏のまとまりだろう。アルバム全体を通して、楽曲を前に出す作りで、過度な装飾を避けた印象が残る。
この作品を聴くと、当時の英国フォークにありがちな「伝統曲の再構成」や「ロック寄りの拡張」とは少し距離を取りつつ、歌の響きとアンサンブルの温度で進んでいく感じがある。フォーク・ロックという枠に収まりながら、実際の聴感はかなり素直で、曲の展開を追うこと自体が中心になる。録音の作りも含めて、派手な一発より積み重ねを重視した作品だと思える。
注目曲について
代表曲としてまず意識されるのは、タイトル曲の「All On The First Day」だろう。アルバムの顔にあたる曲で、作品全体の基調をわかりやすく示す存在だ。歌の運びが前に出て、その周囲にアコースティック楽器が静かに組み上がる構成が想像しやすい。タイトルにある「First Day」という言葉から受ける印象どおり、始まりや節目を思わせる感触があり、アルバムの入口として置かれている意味も大きい。
この曲の聴きどころは、派手なフックではなく、フレーズの繰り返しと声の重なりにある。フォーク作品では珍しくない作り方だが、Tony, Caro & Johnの場合は、その繰り返しが単調になりにくい。演奏が前に出すぎず、歌詞の流れや語感を支える方向に回っているため、曲全体の輪郭がくっきり残る。タイトル曲らしい落ち着きと、作品の核を示す役割がある。
もう一つの聴きどころとしては、アンサンブルのバランスが見えやすい曲群だ。Tony DoréとCaroline Doréの存在感、John Clarkの支え方が曲ごとに少しずつ変わり、同じフォークでも一色ではないことが伝わる。特定のヒット曲で引っ張るというより、曲ごとの配置や歌の受け渡しでアルバムを聴かせるタイプで、そこにこのグループの性格が出ている。
音の印象と聴きどころ
実際に聴くと、音数を増やして盛り上げる場面より、余白を保ったまま曲を進める場面が印象に残る。ギターの鳴り、声の距離感、コーラスの置き方が作品の骨格になっていて、派手さの代わりに手触りがある。英国フォークの中でも、土臭さだけに寄らず、整った歌の作りを持っているところが特徴的だ。
同時代の比較でいえば、Fairport Conventionのようなエレクトリックな推進力よりも、より内省的で、室内的な聴き方に向く。TreesやPentangleと並べて語られることがあるのも納得できるが、Tony, Caro & Johnはその中でも、編成の小ささをそのまま武器にしている感じがある。大きなドラマを作るより、曲の端々にある細かな動きで印象を残すタイプだ。
まとめ
『All On The First Day』は、1972年のUKフォーク・ロックの空気を、あくまで落ち着いた筆致で記録したアルバムだ。Tony, Caro & Johnというトリオの性格がよく出ていて、歌と演奏の距離感、曲の運び、アンサンブルのまとまりがそのまま作品の魅力になっている。大きな話題性よりも、英国フォークの文脈の中で静かに輪郭を保つ一枚、という見方がしっくりくる。
レーベル表記が一般的な商業レーベルではなく、EDEN LP 40 A/Bという識別で管理されている点も、この作品の流通のされ方を物語っているように見える。いわゆる定番名盤として一気に語られるタイプではないが、70年代初頭の英国フォークをたどるときには、きちんと目を向けたい作品だ。
トラックリスト
- A1 The Snowdon Song
- A2 Eclipse Of The Moon
- A3 Meg II
- A4 Snugglyug
- A5 Apocalypso
- A6 Sargasso Sea
- B1 Swordsman Of Samoa
- B2 There Are No Greater Heroes
- B3 Waltz For A Spaniel
- B4 Hole In My Heart
- B5 Morrison Heathcliff
- B6 Don't Sing This Song
- B7 Homecoming
動画
- Tony, Caron & John | The Snowdown Song
- Tony, Caro and John - Eclipse of the Moon
- ☞ Tony Caro & John ✩ There Are No Greater Heroes 1972
- Tony, Caro & John - All On The First Day
- Tony, Caro and John-Ton Tons Macoutes