Joan Baez - Joan Baez (1960)
Joan Baez 1960

Joan Baez - Joan Baez (1960)

Folk, World, & Country Folk

Joan Baez / Joan Baez(1960, Vanguard VSD 2077)

ジョーン・バエズのデビュー・アルバム『Joan Baez』は、1960年にUSのVanguardから登場した作品だ。のちにフォーク・リバイバルを代表する歌い手として知られる彼女が、まだ10代の終わりに歌声だけで強い印象を残した初期の記録である。収録内容は伝承曲やカバーを中心に組まれていて、当時のフォーク・シーンで重視された「歌い継がれてきた曲を、いまの声でどう響かせるか」という感覚がよく出ている。

デビュー作としての位置づけ

このアルバムは、1960年前後のフォーク・リバイバルの空気をそのまま伝える一枚でもある。バエズは1959年のニューポート・フォーク・フェスティバルで注目を集め、その流れのままVanguardと契約したとされる。制作は、フェスでも彼女を支えたフレッド・ヘルマンが担っており、過度な装飾を避けた構成が作品全体の輪郭をはっきりさせている。伴奏は必要最小限で、中心にあるのは彼女のソプラノだ。

この時期のバエズは、後年のように強い社会的メッセージを前面に出す以前の段階にある。とはいえ、単なる「若いフォーク歌手」の記録では終わらない。歌い方は感情を押しつける方向ではなく、言葉の芯をまっすぐに置いていくタイプで、そのため伝統曲の輪郭がかなり明瞭に聞こえる。19歳の歌手とは思えない声の純度がある、という評価が残っているのも納得しやすい内容だ。

収録曲と耳に残るポイント

代表的なのは「Silver Dagger」だろう。のちに彼女の代表曲として定着する一曲で、静かな入り方と、伸びのある声の運びがこのアルバムの印象を決めている。「East Virginia」や「Mary Hamilton」も、民謡的な素材をそのまま並べるのではなく、バエズの声の質感によって現在形に引き戻しているように聞こえる。

また、盤面の表記では「Fare Thee Well」とジャケット記載の曲名があり、レーベル面では「Ten Thousand Miles」となっているが、同じ曲として扱われている。「El Preso Numero Nuevo」と「El Preso Numero Nueve」も同様で、こうした表記差は初期盤ならではの細かな違いとして面白い。US盤の黒地ラベル、Vanguard Stereolab Corp., New Yorkの表記、Printed in U.S.A. という情報も、当時のオリジナル盤らしさを感じさせる要素だ。

同時代の文脈

1960年のフォーク・シーンでは、伝承曲の再解釈が大きな役割を持っていた。ボブ・ディランが登場する少し前の段階で、バエズはすでに「声そのものの説得力」で場をつかむ歌手として位置づけられていた。比較対象としては、同時代のフォーク・シンガーたちと並べられることが多いが、バエズはとくに声域の広さと、速いビブラートを持つ発声がはっきりしている。そこが、単なる伴奏付きの民謡再生とは違うところだ。

彼女はのちにロック、ポップ、カントリー、ゴスペルへも活動範囲を広げるが、このデビュー作ではまだフォークの核にいる。その意味で本作は、バエズの原点を確認するための重要な一枚というより、彼女がどうやって初期の評価を得たのかをそのまま示す作品として聴こえる。政治的な発言やプロテストのイメージが強くなる前に、まず歌そのものが強かったことがよくわかる。

評価とその後

発売当時から評判はよく、のちにはBillboard 200に載り、ゴールド化もしている。2015年には米国議会図書館のNational Recording Registryにも選ばれていて、歴史的・文化的価値が認められた作品として扱われている。こうした後年の評価を抜きにしても、アルバム単体で見たときの完成度は高い。無駄を削った編成、伝統曲の選び方、そして何より声の置き方が、最初の一枚としてかなり明快だ。

ジョーン・バエズという歌い手は、後のボブ・ディランとの関係や社会運動への関わりでも知られるが、その出発点はここにある。1960年の『Joan Baez』は、フォーク・リバイバルの一断面を記録した作品であり、同時に、ひとりの歌手が自分の声で伝統曲を更新していく始まりの記録でもある。

トラックリスト

  1. A1 Silver Dagger 2:30
  2. A2 East Virginia 3:38
  3. A3 Fare Thee Well 3:15
  4. A4 House Of The Rising Sun 2:52
  5. A5 All My Trials 4:36
  6. A6 Wildwood Flower 2:30
  7. A7 Donna Donna 3:09
  8. B1 John Riley 3:50
  9. B2 Rake And Rambling Boy 1:52
  10. B3 Little Moses 3:25
  11. B4 Mary Hamilton 5:54
  12. B5 Henry Martin 4:10
  13. B6 El Preso Numero Nueve 2:47

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