The 24-Carat Black - Ghetto: Misfortune's Wealth (1973)
The 24-Carat Black『Ghetto: Misfortune's Wealth』
The 24-Carat Blackは、オハイオ州シンシナティ出身のソウル・グループ。本作『Ghetto: Misfortune's Wealth』は1973年にEnterpriseから出た初期作で、グループ名と作品名を同時に強く印象づける一枚だ。ジャズとファンク、ソウルの要素を土台にしながら、都市の貧困と日常の閉塞をテーマに据えたコンセプト・アルバムとしてまとまっている。単なる曲の寄せ集めではなく、アルバム全体でひとつの物語を組み立てる作りが特徴で、当時のソウル作品の中でもかなり構成意識の高い部類に入る。
デイル・ウォーレンの存在
この作品を語るうえで、デイル・ウォーレンの存在は外せない。ウォーレンはモータウンでストリングス・アレンジャーとして経験を積み、その後スタックスに移ってアイザック・ヘイズの複数の作品で編曲と制作を担当した人物。そこで培った重厚な弦の扱い、曲を大きく構築していく手つきが、このアルバムにもそのまま持ち込まれている。シンシナティの若いソウル・グループだったザ・ディタリアンズと出会ったウォーレンが、彼らを24-Carat Blackへ改名させ、自らプロデュースしたという流れも、この作品の出発点として重要だ。
グループの初期メンバーの一部は、のちにShotgunを結成する。つまり本作は、単独のアルバムであると同時に、70年代ブラック・ミュージックの人脈の中で次の動きへつながる起点でもある。
アルバムの構成と内容
『Ghetto: Misfortune's Wealth』は、8つの“Synopsis”によって緩やかに結ばれた構成を取る。各曲が独立しながらも、ひとつの都市的な風景を分担して描く形で進むため、聴き進めるほどにテーマが輪郭を持ってくる。貧困、労働、生活の不安、家族、希望のなさといった要素が、歌詞とアレンジの両方から積み重ねられていく内容だ。
演奏面では、重いベースとリズム、硬質なホーン、そしてウォーレンらしいストリングスが軸になる。ソウル・ミュージックの感情表現を保ちながら、曲ごとの展開はかなり組曲的で、同時代のヒット志向のR&Bとは距離がある。収録曲の中で特定の大ヒット曲が前面に出るタイプではなく、アルバム全体の流れそのものが作品の核になっている。
当時の位置づけと後年の評価
1973年当時、この手の大掛かりな組曲形式をソウルやファンクの文脈でやり切った作品は多くない。プログレッシブ・ロック以外では珍しい作りで、商業的には広く浸透しにくかった背景も見えてくる。だが、のちに再発見されると評価の軸は変わった。1990年代初頭以降、Eric BやDr. Dre、Jay-Z、Kendrick Lamarといったヒップホップ・アーティストたちがサンプリング・ソースとしてこのアルバムを参照し、音の断片が現代のトラックに組み込まれていったことで、作品の存在感が一気に増した。
特にヒップホップ側からの再評価は大きい。もともとアルバムとしての完成度が高いだけでなく、断片的に取り出したくなるリズムやフレーズ、ストリングスの配置が多く、サンプリングとの相性が良かった。ソウルのアルバムが、後年のビートメイキングの素材として再び注目される流れの中で、本作は典型的な発掘対象になった。
再発と現在までの流れ
本作は1995年にCDで再発され、2009年には未発表音源集も出ている。オリジナルの1973年盤は、Enterpriseレーベルの時代を映す一枚として位置づけられ、後年の再発盤ではその歴史的価値がさらに見えやすくなった。もともと埋もれていた作品が、再発とサンプリング文化を通じて掘り起こされていった流れが、このアルバムにははっきりある。
Enterpriseは、テネシー州メンフィスのソウル/ジャズ系レーベルで、Staxの系列として知られる。本作もその文脈に置くと、メンフィス系の土臭さや重さを持ちながら、シンシナティ出身のグループとデイル・ウォーレンの編曲感覚が交わった作品として見えてくる。録音はミシガン州イプシランティのMorgan Sound Theatreで行われており、制作の場も含めて南部ソウル一辺倒ではない広がりがある。
まとめ
『Ghetto: Misfortune's Wealth』は、1973年のソウル/ファンク作品としてだけでなく、コンセプト・アルバムの手法、ストリングスを含む編曲、そして後年のヒップホップへの接続まで含めて重要な一枚だ。派手なヒット曲で押す作品ではないが、アルバム全体で都市の現実を描く構成と、デイル・ウォーレンの制作手腕がしっかり噛み合っている。オリジナル盤の時点で完成していた野心が、時間を経て別のジャンルからも読み直された作品として残っている。
トラックリスト
- A1 Synopsis One: In The Ghetto / God Save The World 8:34
- A2 Poverty's Paradise 12:40
- A3 Brown-Baggin' 6:45
- B1 Synopsis Two: Mother's Day 2:04
- B2 Mother's Day 9:46
- B3 Foodstamps 6:26
- B4 Ghetto: Misfortune's Wealth 3:41
- B5 24-Carat Black (Theme) 7:17