Earth, Wind & Fire - Earth, Wind & Fire (1971)
Earth, Wind & Fire / Earth, Wind & Fire (1971)
アース・ウィンド&ファイアーのデビュー作にあたるセルフタイトル盤。1971年にワーナー・ブラザース・レコードからUS盤で登場した作品で、のちに大きな成功を収めるバンドの出発点をそのまま閉じ込めた1枚だ。編成の核にあるのは、モーリス・ホワイトが持ち込んだソウル、ファンク、ジャズ寄りの感覚と、そこに重なるロック的なバンド演奏。後年の華やかなブラス・アンサンブルや洗練されたメロディのイメージと比べると、この時点ではもっと生々しく、演奏主体の色合いが強い。
バンドの出発点が見える初期作
アース・ウィンド&ファイアーは1970年にシカゴで結成された。中心人物のモーリス・ホワイトは、チェス・レコード周辺やラムゼイ・ルイス・トリオでの経験を持つドラマー、コンポーザーでもあり、そのバックグラウンドがこの作品の骨格に反映されている。録音はハリウッドのSunset Sound Studiosで行われた。シカゴ出身のソウル・ファンク・バンドがロサンゼルスで録音する、この移動そのものも初期EW&Fの重要な背景になっている。
このデビュー作は、後年の大ヒット期を知っている耳で聴くと、かなり別の顔を見せる。ホーンやリズムの切れ味はすでにあり、グルーヴは前に進むが、サウンド全体はまだ整い切る前の段階にある。ソウル・アルバムとしてのまとまりと、サイケデリックな空気、ファンクの推進力が同居していて、70年代初頭のブラック・ミュージックが持っていた混ざり方がよく出ている。
収録曲と聴きどころ
代表曲としてまず挙がるのは「Help Somebody」。後年の“踊れるEW&F”のイメージとは少し違い、メッセージ性のあるソウル曲として聴こえる。もうひとつ重要なのが「Moment of Truth」。こちらは演奏の展開に余裕があり、バンドのタイトさと、まだ荒さの残る推進力が同時に感じられる。アルバム全体では、曲ごとの色分けがはっきりしていて、ファンク寄りのリズム、サイケデリックな響き、ソウルの歌心が順番に立ち上がってくる構成になっている。
実際に耳を通すと、のちの「September」や「Shining Star」のような一発で輪郭が伝わるヒット曲型ではなく、曲の中で演奏が組み上がっていく感触が強い。ボーカルの厚み、ベースの押し出し、ドラムの粘りが前面に出る場面が多く、スタジオでの生演奏感が残る。派手な装飾よりも、バンドがどう鳴っていたかをそのまま記録した作品として見やすい。
1971年当時の位置づけ
本作は、アース・ウィンド&ファイアーが後にポップ・チャートでも存在感を強める前段階の記録だ。リリース当時、バンドはメルヴィン・ヴァン・ピーブルズ監督の映画『Sweet Sweetback's Baadasssss Song』のサウンドトラックにも参加しており、同時期の黒人音楽シーンの中で動いていたことがわかる。このアルバムも、そうした流れの中で、ソウルとファンクを基盤にしながら独自のバンド・サウンドを固めていく途中経過として位置づけられる。
チャート面では、ビルボードのソウル・アルバム・チャートで24位を記録し、フランスではゴールド認定も受けた。世界的な大ブレイクの前に、すでに一定の反応を得ていた作品でもある。ロック、ソウル、ファンクの境界をまたぐ初期70年代のアルバム群、たとえば同時代のスライ&ザ・ファミリー・ストーンや、よりジャズ寄りのブラック・ロックと並べて聴くと、この作品の立ち位置が見えやすい。
US初回盤の見どころ
この1971年US盤は、Warner Bros. Recordsのグリーン・レーベル仕様。資料上でも、同じタイトルの初期プレスの中で、W7ロゴ版とは異なるWBシールド表記のグリーン・レーベルとして扱われている。初回期のワーナー盤らしい見た目で、後年のバーバンク・ラベルとは印象がかなり違う。ジャケットには折りたたみポスターが付属し、裏面に歌詞シートが印刷されている点も当時らしい作りだ。
盤そのものは、内容面でも装丁面でも、後の再発盤やリイシューで触れる“完成されたEW&F像”とは少し距離がある。だが、その距離こそが面白い。のちの大編成ホーン・ファンクへ向かう前の、ソウル・バンドとしての輪郭、サイケデリックな色合い、そして演奏で押し切る勢いが、この1枚にはそのまま残っている。
まとめ
Earth, Wind & Fireの1971年デビュー作は、ヒット曲集としてよりも、バンドがどこから始まったのかを示す記録として重要なアルバムだ。モーリス・ホワイトの構想、シカゴ由来のソウル感覚、ロサンゼルス録音の空気、そしてファンクへ向かう推進力が一体になっている。後年の華やかな成功作とは違うが、アース・ウィンド&ファイアーという名前の出発点を確認するには、これ以上ない1枚になっている。
トラックリスト
- A1 Help Somebody 3:34
- A2 Moment Of Truth 3:05
- A3 Love Is Life 5:04
- A4 Fan The Fire 5:11
- B1 C'mon Children 3:08
- B2 This World Today 3:28
- B3 Bad Tune 4:38