The Jackson 5 - Diana Ross Presents The Jackson 5 (1969)
The Jackson 5『Diana Ross Presents The Jackson 5』(1969)
1969年のデビュー作にして、The Jackson 5の名前を一気に世界へ押し上げた重要なアルバム。題名にダイアナ・ロスの名を冠したこの作品は、モータウンが新人グループを大きく売り出すための企画性と、実際に音楽が持っていた勢いの両方がはっきり出ている1枚である。アメリカ・インディアナ州ゲーリー出身の5人兄弟を中心にしたグループで、父ジョセフ・ジャクソンの管理のもとで活動を始めた彼らが、モータウンの看板のもとで全国区へ進む、その入口にある作品だ。
デビュー作としての位置づけ
このアルバムは、1969年12月にアメリカで発売されたThe Jackson Fiveの初のアルバムで、先行シングル「I Want You Back」の大ヒットを受けて世に出た。グループ名がまだ「The Jackson Five」と表記されていた時期の作品で、後のThe Jacksons期とは当然ながら音の組み立てや売り方も異なる。モータウンにとっても、子ども世代のソウル・グループを本格的に前面へ押し出した意味合いが強い。
収録曲の中心にある「I Want You Back」は、この時点で彼らの代表曲として機能している。リリースから短期間で全米シングルチャート1位に到達し、アルバム全体の注目度を決定づけた。マイケル・ジャクソンの幼い声質と、兄弟たちのコーラスがきれいに絡む構造が、曲の推進力を作っている。ここには、後年のポップ・スターとしてのマイケルを予告するような要素も含まれているが、同時に兄弟グループとしてのまとまりが強く出ているのもポイントである。
タイトルにまつわる背景
アルバム・タイトルは、ダイアナ・ロスが彼らを発見したという物語を前面に出している。ただし、実際にはモータウン側のマーケティングの色が濃い。ダイアナ・ロスがライナーノーツを寄せたことで、そのイメージはさらに強まったが、発掘に関わったのはモータウンのプロデューサー、ボビー・テイラーであり、ジョー・ジャクソンの証言ではグラディス・ナイトがモータウン幹部へ連絡を入れたことも重要だったとされる。つまり、単独の“発見者”というより、複数の人物が関わった経緯がこのデビューの裏にある。
モータウンらしさと時代性
1969年のモータウンは、すでにヒット工場としての体制が整っていた時期で、この作品もその文脈にしっかり乗っている。洗練されたリズム隊、明快なメロディ、歌詞がすぐ耳に入る構成、そしてソウルとポップの境目を越える作り。The Jackson 5はその枠組みの中で、若い声と兄弟ならではのコーラスを武器にした。The SupremesやThe Temptationsなど、当時のモータウン勢と並べて考えると、彼らはより若い世代へ向けた入口として機能していた面が見えてくる。
AllMusicがこの作品をクロスオーヴァー・ポップとソウルの新しい流れの始まりに位置づけているのも、こうした背景と合っている。実際、ソウルの骨格を持ちながら、ポップ・チャートで大きく伸びた点は、当時の同ジャンル作品の中でも目立つ動きだった。R&Bアルバム・チャートで1位、ポップ・アルバム・チャートで5位という結果も、その跨ぎ方を示している。
聴感上の印象
耳に残るのは、まずマイケルの声の強さである。まだ幼さのある歌声なのに、フレーズの前へ出る力がはっきりしている。そこへ兄たちのコーラスが入ることで、曲が一人の子ども歌手のものではなく、グループ全体の推進力として鳴る。特にアップテンポの曲では、リズムの立ち上がりが早く、演奏の隙間を歌が埋めていく感覚がある。派手な装飾に寄らず、ビートとメロディの直線的な強さで押してくる作り。
アルバム全体を通すと、シングルの強さだけでなく、モータウン流の曲作りがしっかり通っている。単に「I Want You Back」だけの作品ではなく、グループの輪郭を固めるためのデビュー作としてまとまっている点が大きい。後のジャクソンズ時代のファンク寄りの展開を知っていると、ここではまだソウル・ポップの中での整理された魅力が前面にあることが分かる。
オリジナル盤について
1969年のオリジナル初版は、モータウンの当時のカタログに属する発売で、のちの再発盤とは時代の空気が違う。レーベル表記やデザインの細部、音の質感の受け止め方も、初期盤ならではの要素として語られることが多い。とくにこの時代のモータウン盤は、作品そのものだけでなく、レーベルの歴史の中でどう位置づけられるかも含めて見られている。
まとめ
『Diana Ross Presents The Jackson 5』は、The Jackson 5の出発点であり、同時にモータウンが新しいスター像を作り上げた記録でもある。ダイアナ・ロスの名義を借りたタイトル、マイケル・ジャクソンの存在感、兄弟のコーラス、そして「I Want You Back」の圧倒的な初速。1969年という年に、ソウルとポップの境界をまたいで広がっていった作品として、今見てもはっきりした輪郭を持っている。
トラックリスト
- A1 Zip A Dee Doo Dah 3:15
- A2 Nobody 2:42
- A3 I Want You Back 2:58
- A4 Can You Remember 2:57
- A5 Standing In The Shadows Of Love 4:05
- A6 You've Changed 3:05
- B1 My Cherie Amour 3:39
- B2 Who's Loving You 3:57
- B3 (I Know) I'm Losing You 2:50
- B4 Chained 2:13
- B5 Stand 2:34
- B6 Born To Love You 2:26