Alexander Robotnick - Ce N'est Q'un Début (1984)
Alexander Robotnick 1984

Alexander Robotnick - Ce N'est Q'un Début (1984)

Electronic New Wave Synth-pop Electro Italo-Disco

Alexander Robotnick『Ce N'est Q'un Début』(1984)

Alexander Robotnickの『Ce N'est Q'un Début』は、1984年にイタリアのMateriali Sonoriから出た本人名義の初LPとして位置づけられる作品だ。1983年の「Problèmes d'Amour」で国際的に注目を集めた流れの中で発表されており、Robotnickの初期キャリアをまとめるうえで重要な1枚になっている。レーベルは実験電子音楽、現代音楽、フューチャー・ジャズまで扱うMateriali Sonoriで、当時のイタロ・ディスコやエレクトロの周辺にありながら、少し別の視点も感じさせるリリースだ。

作品の位置づけ

Alexander Robotnickはイタリア出身のプロデューサー、Maurizio Damiの名義として知られている。1983年の「Problèmes d'Amour」は、本人の回想でも短期間・少人数・安価な機材中心で録音された曲として語られていて、TR-808、Bassline、Korg Mono-Poly、Arp Quadraなどの機材が使われたという。そうした制作環境で生まれた楽曲が、イタリア国内よりも国外、とくにクラブや輸入盤市場で強く受け止められたのは、当時のシーンを考えると興味深い流れだ。

『Ce N'est Q'un Début』は、その勢いを受けて出た初LPという意味合いが強い。タイトルからも「まだ始まりにすぎない」というニュアンスが読み取れるが、実際に1984年の時点でRobotnickが単なる一発屋ではなく、エレクトロとイタロ・ディスコの接点を押さえた作り手として見られていたことがうかがえる。後年の回顧でも、この時期はダンス・プロデューサーとしての活動だけでなく、映像やインスタレーションへ表現を広げていく節目として語られている。

サウンドの輪郭

この時代のRobotnickの音は、いわゆるディスコの直線的な高揚感だけではなく、機械的なリズム、乾いたシンセの反復、声の処理が前面に出るところに特徴がある。『Ce N'est Q'un Début』もその延長線上にある作品として聴こえる。Electro、Italo-Disco、New Wave、Synth-popというタグが並ぶが、実際にはそれぞれがはっきり分かれているというより、同じ曲の中で混ざり合っている印象だ。

とくに「Problèmes d'Amour」で示された、打ち込みの軽さとフックの強さ、そしてどこかユーモラスな距離感は、このLP全体の基調にもなっている。ダンスフロア向けの推進力を持ちながら、イタロ・ディスコの中でも派手さ一辺倒ではなく、音の隙間やリズムの置き方に個性がある。後のハウスやエレクトロクラッシュの文脈で再評価されるのも、このあたりの設計が大きいのだろう。

代表曲とエピソード

この作品を語るうえで外せないのは、やはり「Problèmes d'Amour」だ。本人の話では、商業的に「ダンス・トラックを書けば儲かる」と助言されたことが制作のきっかけになり、フィレンツェ近郊のスタジオでわずか2日ほど録音されたという。女性コーラスはスイス人の友人Martine Michellodが担当したとされる。こうした制作背景を知ると、曲のシンプルな構造や、意図的に削ったような音数の少なさも見え方が変わる。

また、この曲はイタリア国内では大きな評価につながりにくかった一方で、シカゴの輸入業者が短期間で1万枚買ったというエピソードも残っている。ローカルなヒットというより、クラブ文化や輸入盤市場を通じて広がったタイプの成功であり、後のダンス・ミュージック史の中で語られやすい理由でもある。アルバム全体としても、その一曲に引っ張られながら、同時代のイタロ・ディスコやポスト・ディスコの空気をよく伝える内容になっている。

初版の仕様

1984年の初期プレスには、アルバムアートワークの12インチ・スクリーンプリントと、黒刷りのMateriali Sonori内袋が付属していたという。こうした仕様は、当時の作品が単なる音源ではなく、パッケージ全体で提示されていたことを示している。イタリア盤らしい細部へのこだわりも感じられる部分だ。

まとめ

『Ce N'est Q'un Début』は、Alexander Robotnickが1980年代前半のエレクトロ/イタロ・ディスコの流れの中でどの位置にいたかを示す1枚だ。『Problèmes d'Amour』の延長線上にありながら、本人の初LPとしてキャリアの輪郭をはっきりさせる作品でもある。クラブ向けの機能性、シンセ主体の構成、ニューウェイヴに近い乾いた感触が同居していて、当時のイタリア電子音楽の広がりをそのまま閉じ込めたような内容になっている。

トラックリスト

  1. A1 Problèmes D'amour 4:31
  2. A2 Computer Sourire 4:55
  3. A3 Dance Boy Dance 5:11
  4. B1 Hola Macci Kola 4:40
  5. B2 Ce N'est Q'un Début 4:03
  6. B3 Afrikan Kola 5:18

動画

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