The Stooges - Fun House (1970)
The Stooges 1970

The Stooges - Fun House (1970)

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The Stooges『Fun House』――1970年、暴走するバンドの熱をそのまま封じた2作目

The Stoogesの『Fun House』は、1970年にUSのElektraから出た2作目のスタジオ・アルバムだ。デトロイト周辺のガレージ感覚を土台にしながら、より荒く、より長く、より即興性の高い方向へ進んだ作品で、バンドの初期像を知るうえで重要な一枚になっている。前作『The Stooges』の時点でかなりラフだったが、本作ではその粗さがさらに前面に出ていて、後のパンクやハードロックの流れを語るときに外せない内容になっている。

録音はロサンゼルス、バンドの生々しさを最優先した作り

録音は1970年5月11日から25日にかけて、ロサンゼルスのElektra Sound Recordersで行われた。プロデュースは元The Kingsmenのドン・ガルッチ。ライブを見た彼が、あの熱量をそのままテープに収めるのは難しいと感じたという話が残っているが、完成した音源はかなりその場の勢いを引きずっている。スタジオ録音でありながら、きっちり整えた作品というより、演奏の圧を優先した記録に近い。

とくにイギー・ポップの声は、歌というより叫びに近い場面が多い。そこにロン・アシュトンのギター、スコット・アシュトンのドラム、デイヴ・アレクサンダーのベースがぶつかっていく。後から手を入れたような滑らかさはあまりなく、曲が進むにつれてバンドの温度が上がっていく感じが強い。実際に聴くと、音数の多さよりも、音の押し出し方が印象に残るアルバムだ。

サックス加入が作る、前作との大きな差

本作の特徴として、スティーヴ・マッケイのサックスが3曲でフィーチャーされている点がある。マッケイはイギー・ポップの誘いでこの年5月に正式加入しており、その演奏が入ることで、The Stoogesの音は単なるギター・バンドの荒さだけでは収まらない。ロックの基本編成に、フリージャズに接近するような線が差し込まれた感触がある。

代表的なのはタイトル曲「Fun House」や「1970」、そして「Down on the Street」あたりだろう。とくに「Down on the Street」は、このアルバムの入口としても機能していて、リフの反復、リズムの粘り、イギーの投げる言葉が、作品全体の性格をそのまま示している。「Loose」や「T.V. Eye」も含めて、曲ごとの完成度を競うというより、演奏の圧力を保ったまま最後まで走る構成になっている。

当時の評価と、その後の再評価

発売当初の反応は厳しかった。商業的には前作以上に振るわず、全米チャートのトップ200にも入らなかったとされる。今の耳で聴くと、むしろその反応のほうが不思議に思えるが、1970年の時点では、ここまで荒い音像をアルバムとしてまとめること自体がかなり珍しかったのだろう。

ただ、後年になると評価は大きく変わる。パンク・ロックの原点をたどる流れの中で、The Stoogesは「元祖」として見直され、その中心にある作品として『Fun House』も扱われるようになった。デビュー作『The Stooges』、そして後の『Raw Power』と並べて語られることが多く、The Stoogesの中でも特に実験性と暴力性が近い位置で同居したアルバムとして見られている。

この盤の仕様について

ここで扱うのは1970年US盤のオリジナル・ラベル仕様。マーブル調のElektra “butterfly” ラベルで、プレスはジャケット内の刻印からPlastylite系とされる。ゲートフォールド・ジャケットに加えて、Elektra Records / Nonesuch Recordsの紙製インナー・スリーブが付属している。レーベル表記は当時のElektraらしい、ニューヨークの住所表記が入る時期のものだ。

同時代のロックで比べるなら、The DoorsのようなElektra所属バンドの作品群や、当時のハードなブルース・ロックと並べても、The Stoogesのこのアルバムはかなり切迫した鳴り方をしている。後のパンク、ガレージ・リバイバル、ノイズ寄りのロックにまで影響が及んだ流れも、この作品の粗い手触りを聴くと理解しやすい。

『Fun House』は、完成度で整えるタイプのアルバムではない。だが、1970年の空気の中で、バンドの体温、演奏の持続、叫びの質感をそのまま残した記録としては非常に強い。The Stoogesの中でも、バンドの核がもっとも露出している作品だ。

トラックリスト

  1. A1 Down On The Street 3:42
  2. A2 Loose 3:33
  3. A3 T.V. Eye 4:17
  4. A4 Dirt 7:00
  5. B1 1970 5:15
  6. B2 Fun House 7:46
  7. B3 L.A. Blues 4:55

動画プレイリスト

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