Zopp - Dominion (2023)
Zopp『Dominion』について
英国ノッティンガムを拠点に活動するZoppの『Dominion』は、Ryan Stevensonを中心に制作された2023年の作品だ。カンタベリー・シーンの流れを意識しつつ、プログ・ロック、実験音楽、ジャズの要素を横断するような構成で、同時代のプログ作品の中でもかなり情報量の多い一枚として位置づけられている。Andy Tillison(The Tangent)やAndrea Monetaらの参加もあり、個人プロジェクトでありながら演奏面の厚みがはっきりしている。
制作は2019年から2022年にかけてノッティンガムで進められ、ドラムは2021年5月から6月に録音された。クレジットを見るだけでも、作曲、録音、編曲、プロデュース、ミックスまでをStevenson自身が担っており、作品全体の輪郭がかなり明確にコントロールされていることがわかる。Zoppという名義は、単なるソロ名義というより、複数の演奏者を集めながらも中心軸は一貫したプロジェクトとして読める。
作品の内容と聴きどころ
『Dominion』は、前作の器楽中心の作りからさらに踏み込んで、ボーカルを本格的に導入している点が大きい。曲の流れを追うと、インストゥルメンタルの緻密さに加えて、歌が入ることで構成の重心が変わり、展開の見通しが少し立ちやすくなっている。単に歌ものになったというより、長い組曲的な展開の中で声がひとつの楽器として機能している印象だ。
実際に聴くと、リズムの切り替えや拍子感の揺れ、鍵盤とギターの受け渡しが細かく組まれていて、耳が休まる瞬間があまりない。とはいえ、技巧の見せ合いに終始するタイプではなく、テーマの反復や場面転換に意味がある。長尺曲の「You」や「Toxicity」は、その構成力がよく出る場面として語られることが多い。特に「You」は、デモ段階ではインストゥルメンタルだったことが後に明かされており、完成版での歌の入り方を含めて制作の変化が見えやすい。
Zoppにおける位置づけ
Zoppは、カンタベリー・シーンの系譜を現代的に更新するバンドとして見られることが多い。『Dominion』では、その土台に加えて、ネオ・プログ、シンフォニック・プログ、アヴァンギャルド、アンビエント、フォーク、サイケデリック・ロックまでが混ざり合い、前作よりもスケールを広げた作りになっている。本人が「より爆発力のある、よりボンバスティックな作品」と語ったという点も、この盤の方向性をそのまま表している。
比較対象としては、The Tangentのような知的なプログの流れや、Canterbury系の流麗さ、さらにジャズ由来の展開感を持つバンド群が思い浮かぶ。だが、単純に既存の文脈へ寄せるというより、複数の要素を一つの長い流れにまとめる手つきが印象に残る。演奏の密度だけでなく、曲ごとの表情の変化がはっきりしているのもこの作品の特徴だ。
リリース形態について
今回のUK盤はRepose RecordsのREPOSE066で、250枚限定のエディション。マット仕上げのシングルジャケットに3mmスパイン、4ページの歌詞インサート、黒いポリライニング付きのLPスリーブをポリプロピレンの外袋に収めた仕様となっている。レーベルのRepose Recordsは、ブラックメタルやダーク・アンビエントをアナログで扱うことで知られるが、この盤ではそうしたレーベルの手触りに、Zoppのプログ・ロック的な構築美が乗っている。
『Dominion』は、2023年という年のプログ・ロック作品の中でも、個人主導の制作とバンド的なアンサンブルの両方が見えやすい一枚だ。ノッティンガムで積み上げられた録音、ゲストを含む演奏陣、そして歌を導入したことで広がった表現の幅。その積み重ねが、作品全体の密度につながっている。
トラックリスト
- A1 Amor Fati 2:10
- A2 You 10:56
- A3 Bushnell Keeler 5:06
- A4 Uppmärksamhet 3:13
- B5 Reality Tunnels 4:11
- B6 Wetiko Approaching 1:59
- B7 Toxicity 14:21