The Glass Sun Band - Cyclonic Review (2018)
The Glass Sun Band『Cyclonic Review』について
『Cyclonic Review』は、米ミシガン州ウエストランド出身のサイケデリック・ロック・バンド、The Glass Sun Bandによる作品で、2018年に登場したタイトルである。バンドはリック・ロール、ブルース・ロール、ダニー・シルズの3人組で、1960年代半ばに前身バンドを組み、ベトナム従軍を経て1970年代初頭にThe Glass Sunとして活動を再開した経緯を持つ。70年代前半のアメリカ地方都市のロック・シーンに根を張ったグループで、当時はローカルなシングルを2枚残したが、長く広く知られる存在ではなかった。その後の再評価を踏まえて、2018年にこの名義の作品が改めて形になったのが本作という位置づけになる。
音の軸はロックで、表記上はExperimental、Psychedelic Rockに置かれている。バンド紹介でも触れられている通り、当時の重めの新しいロックの流れから影響を受けていたグループで、単なる懐古ではなく、歪んだギター、前に出るリズム、反復の効いた展開に重心があるタイプのバンドとして捉えられる。いわゆる60年代末から70年代初頭のアメリカン・サイケ/ハード・ロックの文脈に置きやすく、後年の発掘盤や再評価盤でよく語られるローカル・バンドの手触りに近い。
バンドの背景と、この作品の立ち位置
The Glass Sun Bandの来歴は比較的はっきりしている。リックとブルースのロール兄弟が、友人のダニー・シルズとともに1964年にThe Cyclonesを結成し、地元のダンスやバンド・コンテスト系の催しで演奏していた。その後、兄弟がベトナム従軍へ向かい、70年代初頭に戻ったあとでThe Glass Sunとして再始動する流れである。1971年から1972年にかけては、ローカル・レーベルから45回転シングルを2枚出しているが、いずれもプレス数は300枚と少なく、当時は大きな反響を得るタイプの作品ではなかったようだ。
そうした経緯を踏まえると、『Cyclonic Review』はバンドの活動史を後から見直すうえでの重要なまとまりとして受け取れる。70年代初頭の録音に連なる感触を持ちながら、2018年という時点で作品として流通しているため、オリジナル時代の資料性と、後年の編集・再提示の意味合いが重なる。The Glass Sun Bandにとっては、当時の断片的な記録を現在のリスナーが追うための入口になっている。
同時代の文脈
このバンドが活動していた時期のアメリカでは、地方のロック・バンドがブルース、ハードなギター・ロック、サイケデリックな演出を混ぜながら、各地で独自の音を作っていた。The Glass Sun Bandもその流れの中にあり、いわゆる大都市発の有名バンドとは別の、ミシガン州周辺のロックの厚みを感じさせる存在として見える。デトロイト近郊という土地柄もあり、後のガレージ/サイケ・ファンが好む“荒さのある演奏”の文脈に自然につながる。
比較対象として名前が挙がりやすいのは、同時代の重いギターを前面に出したバンドや、発掘系コンピレーションで再評価されたローカル・サイケ・バンドだろう。ただし、The Glass Sun Bandは大きく派手に売れるタイプというより、限られた流通の中で地元の熱量を残したグループとして見るほうが実像に近い。
注目曲について
収録曲の詳細な構成は手元の情報だけでは追い切れないが、タイトル曲『Cyclonic Review』は本作を代表する軸として意識されやすい。タイトルにある“Cyclonic”という言葉どおり、回転感やうねりを思わせるイメージが強く、バンド名の“Glass Sun”と並べても、70年代初頭のサイケデリック・ロックらしい視覚的な語感が前に出る。こうした曲名を冠した作品は、バンドの音像や姿勢を端的に示す役割を持つことが多く、本作でもその印象がある。
また、The Glass Sun Bandが1971〜72年に残した2枚のシングルを踏まえると、単発の楽曲だけではなく、バンド全体の演奏感に注目したくなる。小規模プレスのシングルで知られるローカル・バンドは、1曲ごとの完成度だけでなく、ギターの鳴り方、リズムの粘り方、ボーカルの置き方に個性が出やすい。『Cyclonic Review』もそうした文脈で聴かれる作品で、曲単体のヒット性より、バンドの輪郭をまとめて確認する意味が大きい。
レコードとしての見どころ
この盤はアメリカ盤で、レーベル表記はNot On Labelとなっている。つまり、一般的な商業レーベルのカタログに載るというより、バンドの既存音源や記録を後年にまとめた性格が強い。The Glass Sun Bandは長い活動歴のわりに正式なリリースが多いグループではないため、こうした形で作品が残ること自体に意味がある。オリジナル時代のシングルを知る人にとっては資料性が高く、初めて触れる人には70年代アメリカ地方ロックの空気を手早く掴める一枚として見えてくる。
全体として『Cyclonic Review』は、The Glass Sun Bandの活動史を現在に接続するための記録的な作品であり、同時にデトロイト近郊のローカル・サイケ/ハード・ロックの文脈を映すものでもある。派手な成功譚ではなく、少数プレスのシングルと、後年の再評価で輪郭が見えてくるタイプのバンド。その流れをたどるうえで、このタイトルは重要な位置を占めている。
トラックリスト
- A1 Silence Of The Morning
- A2 Stick Over Me
- A3 Oh Sandy
- A4 How Christmas Goes
- A5 My Baby Is Gone
- B1 For Another Girl
- B2 Him Or Me
- B3 No One Knows About Me
- B4 Does That Little Girl Know
- B5 Oh Yes It Is
- B6 I Can See The Light