Annabella - Fever (1986)
Annabella『Fever』(1986)
Annabella名義で出た『Fever』は、1986年のソロ・アルバム。元Bow Wow Wowのヴォーカリスト、Annabella Lwinが、バンド脱退後に自分の名義で出した初のアルバムとして位置づけられる作品だ。リリース国はドイツで、RCAからの発表。盤面表記はPL 70890。ジャンルはElectronic、スタイルはElectro / Synth-popで、80年代半ばらしい打ち込み主体の作りが前面に出る。
Bow Wow Wow後のソロ第一歩
Annabella Lwinは1966年生まれ。幼少期にイングランドへ移り、1980年にMalcolm McLarenに見いだされてBow Wow Wowのリード・シンガーになった。そこから1983年にグループを離れ、ソロ活動へ進む流れになる。『Fever』は、その転身後にまとまった最初のアルバムという意味で重要な一枚だ。バンド時代の、パンクやニュー・ウェイヴ寄りの緊張感を引きずるというより、ここでは当時のダンス・ポップやシンセ・ポップの語法に寄せた構成が目立つ。
作品の輪郭
このアルバムは、複数のプロデューサーが関わる制作体制で組み立てられている。収録曲の中では「Fever」が表題曲として核に置かれ、カバーとして紹介される楽曲でもある。また「School’s Out」もカバー曲として触れられており、オリジナル中心のアルバムというより、当時のポップ/ダンス・シーンの感覚を取り込みながら構成した作品として見えてくる。
実際に聴くと、リズムの輪郭がはっきりしていて、ベースラインとシンセの層を前に出した作りが続く。音数は多いが、ロックのバンド演奏で押すタイプではなく、機械的な拍と整えられた音像が中心。Annabellaの歌はその上に乗る形で、感情を大きく揺らすというより、フレーズをくっきり置いていく印象が残る。Bow Wow Wow時代の荒さや跳ね方を期待すると、かなり別の方向へ振れている。
当時の受け止められ方
1986年当時の批評はかなり厳しい。Billboardのアルバム評では、複数のプロデューサーを起用しても彼女の表現力の弱さを補えていない、という趣旨で低評価だった。英国のRecord Mirrorでも、単調さを指摘するレビューが載っている。つまり『Fever』は、華やかな再出発というより、ソロ歌手としての方向性を模索する途中の記録として受け取られていた。
一方で、制作の流れを追うと、1985年のシングル「Don’t Dance With Strangers」を経てアルバムへ進んでいる。80年代中盤のソロ女性ヴォーカル作品には、クラブ志向のトラックメイクとポップな歌メロを接続する動きが多く、この作品もその文脈に置ける。同期の感触で並べるなら、ダンス・ポップ寄りのRCA作品群や、シンセを軸にした当時の欧米ポップと近い空気がある。
チャートよりも転機としての意味
今回確認できる範囲では、『Fever』自体が本国UKアルバム・チャートで大きく目立った記録は見当たらない。商業的な大ヒット作というより、Bow Wow WowのフロントウーマンだったAnnabellaが、ソロの立場でどこへ向かうかを示した作品として見るのが自然だ。後続シングル「War Boys」が米国のダンス系チャートで一定の動きを見せた点は、この時期の彼女がクラブ寄りの文脈に接続していたことを示している。
1986年のRCA盤として
このドイツ盤は1986年のオリジナル期に出たRCA盤で、のちの再発盤ではなく、当時の空気をそのまま持つ一枚。80年代中盤のRCAは、ロック、ポップ、ダンスを横断するカタログを広く抱えており、『Fever』もその中で、ニュー・ウェイヴ以後の女性ソロ作品の一つとして並ぶ。Bow Wow Wowの延長線だけでは収まらない、しかし完全に別物とも言い切れない、その中間の位置がこのアルバムの面白さだ。
Annabellaのソロ初作として、『Fever』は彼女の声をクラブ・サウンドの枠に置き直した記録になっている。派手な成功譚よりも、時代の音作りの中でアーティストがどう役割を変えたか、その流れが見えやすい作品だ。
トラックリスト
- A1 War Boys
- A2 High Powered Girl
- A3 Fever
- A4 Marry For Love
- A5 Wild In Me
- B1 School's Out
- B2 Under The Gun
- B3 Desire
- B4 Nightmare
- B5 Magdalen