Light Asylum - Light Asylum (2012)
Light Asylum『Light Asylum』(2012)レビュー
Light Asylumのセルフタイトル作『Light Asylum』は、2012年にMexican Summerから発表されたデビュー・アルバムだ。ブルックリンを拠点に活動してきたこのユニットの輪郭が、ここではかなりはっきり見える。Shannon Funchessの声を中心に、Bruno Coviello Jr.のシンセとキーボードが前に出る構成で、収録曲全体がダンスフロア向けの推進力と、暗い色調の空気を両立させている。
本作の盤は、Mexican Summerのカタログ番号MEX108で出たUS盤。カラー・ヴァイナル仕様で1000枚限定、しかもハンドナンバリングという扱いだった。音そのものだけでなく、物としての存在感も強いタイトルで、2012年当時のインディー・ダンス文脈の中でも、かなり目を引く出方をしていた。
ブルックリンの空気を持つ、暗めのシンセ・アルバム
Light Asylumは2007年にShannon Funchessが立ち上げたプロジェクトで、ブルックリンのシーンから出てきたバンドとして語られることが多い。前身EP『In Tension』で見えていた輪郭を、アルバムでそのまま押し広げた形だ。録音は2011年にニューヨークのStratosphere Sound、2012年1月にブルックリンのGary's Electric Studioで行われている。制作はFunchessとCovielloの二人が担当し、全曲共作というまとまりもある。
サウンドの中心はシンセポップ、ダークウェーブ、エレクトロ寄りのビート。そこにインダストリアルっぽい硬さが差し込まれる。音数は多すぎず、打ち込みの輪郭はくっきりしている一方で、空間の広がりはかなり強い。ヘッドホンで聴くと、低音のうねりとシンセの反復が前に出て、ヴォーカルがその上を切り裂くように乗る。Funchessの歌は、艶やかさよりも圧を感じるタイプで、曲ごとの温度差をその声がまとめている印象がある。
代表曲「Shallow Tears」と収録曲の流れ
リード・シングルは「Shallow Tears」。この曲は後年、2019年のNetflixドラマ『Russian Doll』でも使われた。アルバムの中でも特に輪郭がはっきりした曲で、反復するビートとメロディの押し出しが強い。音の作りはシンプルだが、Funchessの歌が入ることで一気に緊張感が増す。
「A Certain Person」はEP『In Tension』ですでに発表されていた曲で、アルバム版では作品全体の中での位置づけがより明確になる。先にEPで出ていた素材をアルバムに再配置することで、Light Asylumが持つ初期の輪郭をそのまま記録したような構成になっている。「Heart of Dust」にはミュージックビデオも作られていて、こちらもバンドの視覚的なイメージを補強している。
比較される文脈と、Funchessの存在感
このアルバムは、1980年代の音楽を参照しながらも、単なるレトロ再現には寄っていない。The GuardianはNine Inch NailsやDepeche Modeを引き合いに出していたが、実際にはそのあたりの陰影に加えて、Grace Jonesのような身体性の強いヴォーカル感覚も重なって聞こえる。ViceがFunchessを「いま米国で最も面白いヴォーカリストの一人」と評したのも、声がこの作品の中心にあるからだろう。
Funchessは本作以前からTV on the Radio、!!!、Telepatheなどの録音に参加してきた人物で、後にはThe Knifeの2013年作『Shaking the Habitual』収録曲「Stay Out Here」にも関わっている。そうした周辺の動きも含めると、Light Asylumは単なる一回きりのバンドではなく、2010年代前半のアート寄りエレクトロ/ダークウェーブの流れの中で、声の強さを前面に出したプロジェクトとして見えてくる。
作品の位置づけ
『Light Asylum』は、バンドにとって最初のフルアルバムであり、同時にBruno Covielloが在籍した時期を記録した作品でもある。Covielloはこの後2012年にバンドを離れており、2012〜2013年には別のキーボード担当がツアーを支えた。そうした意味でも、このアルバムは初期Light Asylumの核をそのまま封じ込めた一枚として捉えやすい。
評価は一様ではなく、Metacriticでは65点、Pitchforkは6.1/10、Under the Radarは7/10と、かなり幅のある受け止められ方をしている。一方で、Funchessの声に対する評価は高く、楽曲そのものよりも、その歌い方と存在感が記憶に残るアルバムとして語られることが多い。シンセの反復、硬いビート、暗い色のコード進行、その上に乗る強いヴォーカル。2012年の時点でのLight Asylumの輪郭は、このデビュー作でかなり明確になっている。
トラックリスト
- A1 Hour Fortress
- A2 Pope Will Roll
- A3 IPC
- A4 Heart Of Dust
- A5 Sins Of The Flesh
- B1 Angel Tongue
- B2 Shallow Tears
- B3 At Will
- B4 End Of Days
- B5 A Certain Person