Depeche Mode - Some Great Reward (1984)
Depeche Mode 1984

Depeche Mode - Some Great Reward (1984)

Electronic Synth-pop

Depeche Mode『Some Great Reward』――1984年の転機を刻んだ4作目

Depeche Modeの『Some Great Reward』は、1984年にUKのMuteから出た4作目のスタジオ・アルバム。前年の『Construction Time Again』で打ち出したサンプリング中心の作りをさらに進め、バンドの輪郭をはっきりさせた作品として知られている。Basildon出身の4人組として始まったDepeche Modeは、この時期にはMartin L. Goreが作曲の中心を担い、Alan Wilderの加入で音の設計がいっそう細かくなっていた。ここでのバンドは、ニューウェイヴの枠に収まりながらも、機械的なビートだけでは終わらない独自の質感を持っている。

ベルリンとロンドンで形になった硬質なサウンド

録音は1983年末から1984年夏にかけて、ロンドンのMusic WorksとベルリンのHansa Mischraumで行われ、ミックスもベルリンでまとめられた。裏面のクレジットにもある通り、制作にはDaniel Miller、バンド自身、Gareth Jonesが関わっている。実際に聴くと、音の隙間に置かれた打撃音や金属的な鳴りが目立つ。コンクリートや金属片、台所用品の音まで使い、リズムを組み立てている点がこの時期のDepeche Modeらしい。単にシンセで整えた音ではなく、手触りのあるノイズを曲の骨格にしている印象が強い。

Alan Wilderの役割も大きい。E-mu EmulatorやSynclavierを使って声や音を加工し、既製のプリセットに寄りかからない方向へ進めている。Martin Gore自身も、このアルバムでWilderのミックスへの関与が広がったことを転機として振り返っている。盤全体に、前作よりも整理された緊張感があるのはそのためかもしれない。

「People Are People」「Master and Servant」「Blasphemous Rumours」

収録曲では、やはり「People Are People」が代表曲として外せない。先行シングルとして全米13位まで伸び、Depeche Modeのアメリカでの認知を押し広げた曲でもある。歌詞の内容は、Goreが地元で受けた嘲りを踏まえて書かれたとされ、タイトル通り、人と人の距離感をそのまま投げ返すような作り。シングルとしての分かりやすさがありつつ、機械仕掛けの反復がはっきり耳に残る。

「Master and Servant」は、SM的なモチーフを扱ったことで一部のラジオ局が放送を避けた曲。とはいえ、Goreはこれを支配と服従をめぐる政治的な寓意として語っている。表面の刺激だけで終わらず、権力関係の比喩として読めるところが面白い。アルバムの中でも、硬いビートと短いフレーズの往復が特に強い。

「Blasphemous Rumours」は、教会での偽善を目にした経験が発想の元になった曲で、英国の聖職者から批判も受けた。宗教的な題材を扱いながら、説教臭くならず、淡々とした語り口で進むのがこの曲らしい。さらに「Somebody」は、当時のドイツ人の恋人Christina Friedrichに向けて書かれた曲として知られていて、アルバム中ではかなり温度の違う1曲になっている。

当時の位置づけとチャート成績

『Some Great Reward』は、Depeche Modeにとって当時の最高位級の成績を残した作品でもある。英国では5位、西ドイツでは3位を記録し、米国では51位。アルバム単体よりも、先行シングル「People Are People」のヒットがアメリカでの足場を作った流れが大きい。1980年代前半のシンセポップは、単純な明るさや軽さだけではなく、より硬い質感へ進んでいったが、この作品はその流れの中でもかなり具体的な形を見せている。

同時代の電子音楽と比べると、Depeche Modeは単なるダンス・ポップよりも、工業製品のような音の組み立てに寄っている。とはいえ、冷たさだけで閉じるわけではなく、Dave Gahanのボーカルが曲の中心を保っている。Gahan自身もこの作品の歌唱には満足していたとされ、実際、前の数作よりも声の置き方が落ち着いている。

このUK盤について

このUK盤はMuteのSTUMM 19で、内袋付きの仕様。クレジットには1984年の表記があり、録音はロンドンとベルリン、デザインはTown & Country Planning、写真はBrian Griffin。ジャケットはRound Oak製鉄所で撮影された工業的なイメージが印象的で、音の内容ともつながっている。再発盤ではバーコードの有無やプレス工場の違いなど複数のバリエーションがあるが、ここでのオリジナルUK盤は、当時のMute作品らしい簡潔な作りがそのまま残っている。

1984年の『Some Great Reward』は、Depeche Modeが単なるシンセポップ・バンドでは終わらないことを示した一枚。サンプリングの使い方、歌詞の題材、シングルの強さがまとまっていて、のちの大きな成功へつながる足場になった作品として見てよさそうだ。

トラックリスト

  1. A1 Something To Do 3:45
  2. A2 Lie To Me 5:04
  3. A3 People Are People 3:52
  4. A4 It Doesn't Matter 4:45
  5. A5 Stories Of Old 3:12
  6. B1 Somebody 4:26
  7. B2 Master And Servant 4:13
  8. B3 If You Want 4:40
  9. B4 Blasphemous Rumours 6:21

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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