Art Blakey And The Jazz Messengers - Art Blakey And The Jazz Messengers (1959)
Art Blakey And The Jazz Messengers『Art Blakey And The Jazz Messengers』
アート・ブレイキー率いるジャズ・メッセンジャーズの1959年作『Art Blakey And The Jazz Messengers』は、ハード・バップの流れを語るうえで外せない一枚だ。録音は1958年10月30日、ニュージャージー州ハッケンサックのヴァン・ゲルダー・スタジオ。発売は1959年で、のちに代表曲「Moanin'」の存在感から、アルバム自体もその曲名で呼ばれることが多くなった作品でもある。
この時期のジャズ・メッセンジャーズは、バンドとしての推進力がはっきりしている。アート・ブレイキーのドラムは前へ押し出す役割を担い、リー・モーガンのトランペット、ベニー・ゴルソンのテナー・サックス、ボビー・ティモンズのピアノ、ジミー・メリットのベースが、各曲の輪郭をくっきりと支えている。単なるソロの寄せ集めではなく、テーマ、アンサンブル、ソロの流れが整理された演奏で、当時のハード・バップが持っていた実用性の高さがよく出ている。
「Moanin'」がアルバムの顔になった理由
やはり中心にあるのは「Moanin'」だろう。ボビー・ティモンズ作のこの曲は、冒頭のフレーズだけで印象が残る作りになっていて、ブルースの感覚とゴスペル由来のコール・アンド・レスポンスがはっきりしている。ジャズに慣れていない耳にも入りやすい一方で、演奏の中身はかなり濃い。ベニー・ゴルソンの書いた他の曲も含め、メロディの覚えやすさと即興の密度が両立しているのがこのアルバムの特徴だ。
後年の再発盤や紹介では、この作品が「Moanin'」として扱われることも多い。アルバム全体を通して聴くと、その曲だけが突出しているというより、他の収録曲も含めてバンドの設計がしっかりしていることがわかる。ヒット曲が単独で目立つだけでなく、作品全体の印象を引き上げているタイプの名盤だ。
ハード・バップの文脈で見る重要性
ジャズ・メッセンジャーズは、1950年代後半のハード・バップを代表するグループとして知られている。ブルース、ゴスペル、R&Bの感触を保ちながら、モダン・ジャズとしての洗練も失わない。そのバランス感覚は、同時代のホレス・シルヴァーのグループや、リー・モーガン、ウェイン・ショーターといったミュージシャンの仕事ともつながって見える。
このバンドのもう一つの重要な点は、若い演奏家の登竜門として機能したことだ。アート・ブレイキーは常に新しい人材を迎え入れ、バンドを更新し続けたが、この1959年盤はその中でも特に完成度の高い時期の記録として位置づけられる。ベニー・ゴルソンがアレンジ面で大きく貢献し、のちにウェイン・ショーターへと受け継がれていく流れの直前にあたる点も重要だ。
1959年盤としての手触り
オリジナルのリリースはBlue Noteの4003番で、US盤として登場している。録音の現場はヴァン・ゲルダー・スタジオらしく、音の輪郭が明確で、各楽器の位置関係がつかみやすい。ブレイキーのシンバルやスネアは前に出すぎず、リズム全体を押し上げる役に徹している。モーガンの音は鋭さがあり、ゴルソンのサックスはフレーズの組み立てに余裕がある。ピアノのティモンズは、単なる伴奏以上に曲の性格を決めている。
このアルバムを聴くと、当時のブルーノート作品に共通する録音の明瞭さと、バンドの現場感がよく伝わってくる。派手な実験性よりも、曲の構造と演奏の推進力で聴かせる一枚であり、1950年代後半のハード・バップがどこまで整理された音楽になっていたかを示す記録でもある。
まとめ
『Art Blakey And The Jazz Messengers』は、アート・ブレイキーのバンドが持っていた推進力、若い才能をまとめ上げる力、そしてブルーノートらしい録音美学が重なった作品だ。とくに「Moanin'」は、アルバムの象徴であると同時に、この時代のジャズが持っていた親しみやすさと緊張感を両方示す代表曲として記憶されている。ハード・バップという言葉だけでは収まりきらない、バンドの実際の動きがそのまま刻まれた一枚といえる。
トラックリスト
- A1 Moanin'
- A2 Are You Real
- A3 Along Came Betty
- The Drum Thunder (Miniature) Suite
- B2 Blues March
- B3 Come Rain Or Come Shine