Assagai - Assagai (1971)
Assagai『Assagai』(1971)
Assagaiのデビュー作『Assagai』は、1971年にUKのVertigoから出たアフロ・ロック作品。ロンドンのインディペンデントな音楽環境の中で、南アフリカとナイジェリアのミュージシャンたちが集まり、ジャズ、ロック、ファンク、アフロビートの要素を交差させたアルバムである。Vertigoといえば当時はプログレッシヴ・ロックの印象が強いが、この作品はそのレーベルの中でもかなり異色の位置にある。黒人ミュージシャン主体のバンドが、Vertigoの大きなスワール・ラベルで送り出された点も含めて、1971年という時代の空気をよく映している。
ロンドンのアフロ・ロック文脈にある作品
Assagaiは、当時ロンドンで活動していたアフリカ系ミュージシャンたちが結成したグループで、中心にはドゥドゥ・プクワナ、モンゲジ・フェザ、ルイス・モホロといった南アフリカ出身のプレイヤーがいる。彼らは1960年代に南アフリカから渡英したジャズ・グループ、The Blue Notesの流れも引いており、演奏の芯にはジャズの感覚がある。一方で、ギターのフレッド・コーカーらナイジェリア系のメンバーも加わり、ロンドンの移民コミュニティの中で生まれた混成バンドとしてまとまっている。
同時代の文脈では、Osibisaと並べて語られることが多い。どちらもアフロ・ロックの初期を支えた存在だが、Assagaiはより短命で、Vertigoからの活動もこのデビュー作と翌年の『Zimbabwe』が中心になる。Vertigoがこうしたバンドを抱えていた事実は、当時の英国のロック市場が、プログレ以外にもかなり広い受け皿を持っていたことを示している。
Jade Warriorとの関係、収録曲の特徴
このアルバムで重要なのが、同じVertigo所属だったJade Warriorとの関わりである。録音にはトニー・デュイグ、ジョン・フィールド、グリン・ハヴァードが参加し、オープニングの「Telephone Girl」はJade Warriorが1971年のデビュー作で発表した曲のカヴァー。つまり本作は、アフロ・ロック側から見たVertigo内部の交流も刻んでいる。さらに「Irin Ajolawa」はデュイグとの共作で、バンド外の作家との接点もある。
収録曲にはフレッド・コーカーやプクワナのオリジナル曲が並び、さらにビートルズ「Hey Jude」のカヴァーも入る。こうした選曲からは、当時のロンドンで共有されていたポップス、ロック、ジャズの語法がそのまま持ち込まれている感じがある。
また、バンドは「Telephone Girl」でBBCの『Top of the Pops』に出演したとされ、アフロ・ロックが英国のテレビ番組に乗った例としても記録されている。
演奏の印象
実際に聴くと、曲ごとの派手な展開よりも、リズムの持続感とホーンの差し込み方が先に立つ。ドラムとベースが前に出て、その上でサックスやトランペットが細かくフレーズを重ねる作りで、ロックの直進性とジャズの組み立てが同居している。歌ものでも、メロディを強く押し出すというより、フレーズの反復とリズムの圧で引っ張る場面が多い。録音年代を考えると、1971年時点のロンドンでこうした音像を出していたこと自体が興味深い。
アルバム全体は、アフロビートの語法を土台にしつつ、英国のプログレ/フォーク系レーベルにいるバンドらしい整理された構成も見せる。Vertigoの大型スワール・ラベルと見開きのマット・ゲートフォールド仕様も、この内容にふさわしい当時のLPらしさを持っている。
発売当時から再評価へ
発売当時の反応は大きくはなかったが、アフロ・ロックへの関心が高まるにつれて評価が上がった作品である。1994年にはRepertoireからCD再発、2016年にはProg Templeからもリイシューされている。オリジナル盤は1971年のUK Vertigo盤で、B面ラベルに「6360 030」、スパインやジャケット右上に「6360030」が記載される仕様。再発を経ても、この初期Vertigo盤ならではの重さと、ロンドンの多文化的な空気を閉じ込めた記録としての性格は変わらない。
Assagaiは、Vertigoのカタログの中でもかなり異質で、同時に1970年代初頭の英国でアフリカ系ミュージシャンがどのようにロック市場へ入っていったかを示す一枚。プクワナ、フェザ、モホロらの経歴、Jade Warriorとの接点、そして「Hey Jude」まで含めた選曲が、このアルバムの輪郭をはっきりさせている。
トラックリスト
- A1 Telephone Girl
- A2 Akasa
- A3 Hey Jude
- A4 Cocoa
- B1 Irin Ajolawa
- B2 Ayieo
- B3 Beka
- B4 I'll Wait For You