The Lijadu Sisters - Danger (1976)
The Lijadu Sisters『Danger』
1976年、Decca Recordsのナイジェリア法人傘下の名門レーベルAfrodisiaよりリリースされたThe Lijadu Sistersの傑作アルバム。TaiwoとKehindeの一卵性双生児姉妹によるデュオで、アフロビートの巨人Fela Kutiの従姉妹にあたる名門音楽一家に生まれた。男性優位が根強かった当時のナイジェリア音楽シーンにおいて、女性自らが主体となって社会的・政治的なメッセージを発信し、その後の『Mother Africa』『Sunshine』『Horizon Unlimited』へと続く黄金期の幕開けを飾った記念碑的一枚である。
制作背景・エピソード
セッション・シンガーとして研鑽を積み、1970年代初頭にはGinger BakerのプロジェクトSaltとも共演した彼女たちの音楽的ヴィジョンを具現化したのが、ナイジェリア屈指の才人マルチ奏者兼プロデューサーのAdeniyi “Biddy” Wrightである。Biddy Wrightがギター、ベース、オルガンなど主要楽器の多くを手掛け、西アフリカの伝統的パーカッションと英米のエレクトリック・ロック/ファンクを融合。双子姉妹の神秘的なコーラスを主軸に据えた画期的なプロダクションを完成させた。
サウンドと聴きどころ
アフロビート、ファンク、初期レゲエ、ディスコ、そしてヨルバ族の伝統音楽とメンフィス・ソウルが見事なまでに交錯するアフロ・サイケデリック/アフロ・ファンクの最高峰である。
最大の特徴は、双子の姉妹が紡ぎ出す、まるでひとつの生命体のように寸分の狂いもなく重なり合うボーカル・ハーモニーにある。オープニングの表題曲「Danger」は、うねるベースラインとパーカッシヴなドラム、鋭利なワウ・ギターが疾走する緊迫感あふれるアフロ・ファンク。政府の腐敗や社会の偽善を痛烈に風刺しながらも軽快なダンス・グルーヴへと昇華した「Cashing In」、そしてレゲエのメロウな意匠を取り入れた美しいポップ・アフロ「Life's Gone Down Low」は、後に米ヒップホップの重鎮Nasにサンプリングされたことでも名高い。英語とヨルバ語が交錯する全6曲33分、無駄の一切ない濃密なグルーヴが聴き手を圧倒する。
時代の文脈
1970年代半ばのナイジェリアは、オイルブームに沸く一方で軍事政権下の汚職や貧困、社会的不公正が深刻化していた激動の時代であった。Fela Kutiをはじめとするミュージシャンたちがプロテスト・ソングを通じて体制を批判する中、Lijadu Sistersは女性の視点から日常の苦悩や政治への風刺をポップなグルーヴに忍ばせ、独自のレジスタンスを展開した。
後世への影響
長らく幻のアフロ・クラシックとして語り継がれていた本作は、2000年代以降のKnitting Factory RecordsやThe Numero Groupなどによる正規復刻を機に、世界的な熱狂とともに再評価された。Nasによるサンプリングをはじめ、Damon Albarn(Gorillaz / Blur)やDavid Byrneといったトップ・アーティストたちからも熱烈なオマージュが捧げられ、アフリカ音楽史上における最もクールで先進的なフィメール・アフロ・ファンクの金字塔として君臨し続けている。
トラックリスト
- A1 Danger 5:47
- A2 Amebo 4:00
- A3 Life's Gone Down Low 4:50
- B1 Cashing In 5:57
- B2 Bobby 4:20
- B3 Lord Have Mercy 7:08