Azymuth - Águia Não Come Mosca (1977)
Azymuth『Águia Não Come Mosca』(1977)レビュー
ブラジルのフュージョン・トリオ、Azymuthが1977年にAtlantic Brazilから発表した2作目のアルバムが『Águia Não Come Mosca』である。前作『Azimüth』(1975年)で示したサンバ、ジャズ、ソウルの接点を、ここではさらに整理しながら広げている。José Roberto Bertramiのキーボード、Alex Malheirosのベースとギター、Ivan “Mamão” Contiのドラムスとパーカッションという基本編成はそのままに、ゲストのソプラノ・サックスやパーカッション陣、コーラスも加わり、トリオの輪郭がいっそうはっきりした作品だ。
ブラジルの都市感覚とグルーヴの接点
本作の核にあるのは、ブラジル音楽のリズム感を土台にしながら、電気ピアノやシンセサイザー、ファンキーなベースラインを前面に出した演奏である。Azymuthは後年「MPB-jazz」と呼ばれる方向性の代表格として語られることが多いが、この時点ですでにその特徴はかなり完成している。サンバの細かな揺れ、ジャズの展開感、ソウル/ファンクの反復性が、ひとつの演奏の中で自然につながっている。
冒頭を飾る「Vôo Sobre O Horizonte」は、アルバムの顔としてよく知られる楽曲だ。TV Globoのテレノベラ『Locomotivas』でも使われ、ブラジル国内での知名度を押し上げた。曲自体も、軽やかな旋律と推進力のあるリズムがきれいに噛み合っていて、Azymuthの初期代表曲として扱われるのに納得がいく内容である。バンド名の表記が本作で「Azymuth」に定着していく点も、作品の位置づけを考えるうえで重要だ。
収録曲に見える広がり
収録曲では、メロウな曲調から、ディスコ寄りのジャズ・ファンク、サンバ・ファンク、シンセを使ったブギー感のある曲まで、かなり幅がある。とはいえ、どの曲もトリオのグルーヴ感でまとまっていて、方向が散らばる印象は少ない。Bertramiの鍵盤は、ローズの響きとシンセの音色を行き来しながら、旋律と伴奏の両方を担う。Malheirosはベースだけでなくギターも持ち替え、Contiはドラムセットとパーカッションを組み合わせて、細かいリズムの層を作る。
「Tarde」はMilton NascimentoとMárcio Borgesの作品、「Circo Marimbondo」はMilton NascimentoとRonaldo Bastosの作品を取り上げている。ブラジル音楽の作家性を持つ楽曲を、Azymuth流のリズムと音色で再構成している点が面白い。原曲の持つ歌心を残しつつ、演奏の芯はかなりファンク寄りに置かれている。
また、終盤にはバトゥカーダに近い推進力を持つ曲が置かれ、アルバム全体の流れを締めている。単にジャズ・ファンクを並べた作品ではなく、ブラジルの都市音楽としてのまとまりがある。
録音と制作、当時のブラジルでの広がり
録音は1977年、リオデジャネイロのEstúdio Levelで行われ、プロデュースはGuti Carvalho。録音エンジニアとしてAndy P. Mills、エンジニアとしてHumberto Gaticaがクレジットされている。ジャケットのイラストはAntonio Peticovによるもの。音の面では、各楽器の輪郭が比較的くっきりしていて、低音の動きとキーボードのレイヤーが聴き取りやすい。ファンク寄りの曲では特に、ベースとドラムの噛み合わせが前に出る。
この時期のAzymuthは、すでに国内シーンで独自の立ち位置を持っていたが、本作の成功はその後の国際展開にもつながった。1977年のモントルー・ジャズ・フェスティバル出演へ進み、翌年以降の活動拡大、さらに1979年のMilestone Recordsとの契約へとつながっていく流れの中で、本作は重要な節目に置かれている。
同時代の文脈の中で
1970年代後半のブラジルでは、MPB、サンバ、ジャズ、ファンクが互いに交わる作品が増えていたが、Azymuthはその中でも演奏の一体感が強い。Marcos ValleやMilton Nascimento周辺の音楽と並べて聴くと、Azymuthが持つ都会的な感触と、リズムの細かさが際立つ。後年の世界的なブラジリアン・フュージョンの文脈でも、彼らの初期作はしばしば参照される。
オリジナル盤は1977年のブラジル盤Atlantic。のちに再発も出ているが、初出時点で作品としての輪郭はすでに強い。『Águia Não Come Mosca』は、Azymuthが「ブラジルのジャズ・トリオ」という枠を超えて、独自のサウンドを定着させた時期を記録したアルバムである。デビュー作の延長線上にありながら、より明確にバンド名と音の個性を刻んだ1枚だ。
トラックリスト
- A1 Vôo Sobre O Horizonte 3:37
- A2 Águia Não Come Mosca 3:27
- A3 Despertar 3:53
- A4 Tarde 5:27
- A5 Circo Marimbondo 2:27
- B1 Tamborim, Cuíca, Ganzá, Berimbau 4:49
- B2 A Presa 3:40
- B3 A Caça 3:03
- B4 Falcon Love Call (Armazém No. 2) 3:55
- B5 Águia Negra X Dragão Negro 2:28