Barrabas - Barrabas (1972)
Barrabás『Barrabás』(1972)
スペインのファンク・ロック・グループ、Barrabásが1972年に発表したデビュー作。Fernando Arbexを中心に結成されたバンドで、Los BrincosやAlacránを経たメンバーが集まり、マドリードのRCA Studiosで録音されている。RCAからUS盤として出た本作は、ラテン・ロックを土台に、ファンク、サイケデリック、プログレッシブ・ロックの要素を重ねた内容で、70年代初頭の欧州産クロスオーバー・ロックの流れの中でも存在感がある一枚だ。
バンドの出自と本作の位置
Barrabásは、Fernando Arbexが新たに組み上げたバンドで、当初はTito Duarte、Miguel Morales、Ricky Morales、Ignacio Egaña、Juan Vidalらが参加した。後にボーカルのJosé Luis Tejadaが加わり、編成の変化を経ながら活動を続けることになる。本作はその最初期の姿を記録したアルバムで、バンドの基本線がここでほぼ固まっている。スペインのグループでありながら、音の作りはローカルな枠に収まらず、英米のロックやソウルと接続する意識が強い。
同時代の文脈で見ると、Santanaに通じるラテン・ロックの推進力がまずあり、その上でファンクの反復、サイケデリックな展開、時にジャズ・ファンク寄りの運びが入る。Barrabásの作品群の中でも、このデビュー作はバンドの輪郭を最初に示したアルバムとして位置づけやすい。後年のディスコ寄りの色合いが強まる方向とは少し距離があり、より生々しいバンド・アンサンブルが前に出る印象だ。
収録曲と代表曲
このアルバムで特に知られているのが「Wild Safari」と「Woman」。どちらも当時のスペイン国内だけでなく、ニューヨークのアンダーグラウンドDJたちの間で早くから支持を集めた曲として語られている。Paradise GarageやThe Loft、David Mancusoのパーティーで回されたという話も残っていて、クラブ文化の文脈で長く参照されてきた。とくに「Woman」はレア・ブレイクとして扱われ、ブレイクダンサーやヒップホップ周辺でも重宝された経緯がある。
実際に聴くと、リズムの押し出しがはっきりしていて、パーカッションとベースの動きが曲の中心を作る。ギターは派手に前へ出るというより、リフを積み重ねて推進力を保つ役回り。そこにホーンやコーラスが絡み、ロックの直線性とダンス・ミュージック的な反復が同居している。派手な技巧を見せる場面もあるが、全体としては「曲を長く引っぱる」ための設計が目立つ。
録音とUS盤の特徴
リリース情報ではUS盤がRCA APL1-0219として出ており、Dynaflex仕様であることが記されている。Dynaflexは当時のRCAが採用した薄手の盤で、軽量な反面、盤質の個体差や扱い方で印象が変わりやすい。さらにこの盤では、裏ジャケットにRE表記がDynaflexロゴの上に印刷され、右下に小さな「2」が入るという細かな差異もある。プロモーション用のステッカー付きコピーも存在する。
オリジナル1972年盤としての意味は、Barrabásの初期像をそのまま伝える点にある。のちの再発盤ではなく、当時のRCAからの初出ということもあり、スペイン産バンドが国際市場へ出ていくタイミングの空気がそのまま封じ込められている。録音地がRCA Studios, Spainであることも含め、ローカルな制作環境とグローバルな流通網がつながった70年代らしい一作だ。
聴きどころ
この作品の聴きどころは、ジャンルの境界をまたぐ動きにある。ラテン・ロックの熱量だけで押し切るのではなく、ファンクの間合い、サイケデリックな色づけ、プログレ寄りの展開が自然に混ざる。歌ものとしての分かりやすさより、バンド全体のグルーヴで引っぱる作りなので、曲単位でもアルバム単位でも流れが見えやすい。クラブで消費された理由も、この反復の強さにある。
Barrabásはこの後も活動を続けるが、1972年のこのデビュー作は、バンドの核となる音像を最初に提示した重要盤として扱われている。スペインのロック史、ラテン・ロック、ファンク・コレクションのそれぞれで名前が挙がる一枚であり、「Wild Safari」「Woman」を軸に語られることが多い作品だ。
トラックリスト
- A1 Wild Safari 4:57
- A2 Try And Try 6:21
- A3 Only For Men 3:34
- A4 Never In This World 3:31
- B1 Woman 5:07
- B2 Cheer Up 3:51
- B3 Rock And Roll Everybody 3:34
- B4 Chicco 3:48