The Pretty Reckless - Dear God (2026)
The Pretty Reckless『Dear God』レビュー
The Pretty Recklessの『Dear God』は、2026年にFearless Recordsからリリースされた5作目のスタジオ・アルバム。Taylor Momsenの歌声を軸にしたオルタナティヴ・ロック、ポスト・グランジ、ハード・ロックの要素を、より直接的な言葉と強い推進力でまとめた作品として位置づけられる。バンドの現在の編成は、Taylor Momsen、Ben Phillips、Mark Damon、Jamie Perkins。ニューヨークとペンシルベニアを拠点に活動してきた彼らのディスコグラフィーの中でも、本作はかなり私的な色合いが強いアルバムとして語られている。
作品の輪郭
『Dear God』は、先行曲「When I Wake Up」や2025年の「For I Am Death」を含む全14曲構成。Taylor Momsenは制作について、AC/DCのツアーの合間に録音を進めたこと、完成までに2年ほどかかったことを明かしている。ツアーと並行して制作したため、まとまった時間を取りにくい状態が続いたようだが、そのぶん楽曲には生活の断片がそのまま入っている印象がある。Momsen自身も、このアルバムは自分にとって“therapy”のようなものだと話しており、感情をかなり深く掘り下げた内容として受け止められている。
Fearless Recordsからのリリースという点も、この作品の性格をよく表している。レーベルはUSのロック/メタル系に強く、オルタナティヴ・ロックからポップ・パンク、メタルコアまで幅広く抱えるが、その中でThe Pretty Recklessはより正面からロックの骨格を鳴らす存在。『Dear God』も、そのレーベル・カラーとバンドの持ち味がきれいに重なる盤と言える。
先行曲とアルバムの手触り
「When I Wake Up」は、メディアでも“thrashy”でパンク色の強い曲として紹介されている。The Pretty Recklessというと、重さのあるリフとTaylor Momsenの歌が前に出る構図がまず思い浮かぶが、この曲ではその輪郭がさらに鋭く出ている。攻撃性を前面に置きながらも、ただ荒く鳴らすだけではなく、フックの作り方にバンドらしい整理があるあたりがポイントだろう。英米のロック系メディアが発売直後から注目したのも、その分かりやすさと切迫感が理由になっているように見える。
アルバム全体についても、Momsenが「自分自身に最も近い作品」と感じていると伝えられている通り、これまでの作品よりさらに内面を直接扱う方向に寄っている。The Pretty Recklessはもともと、2010年代のモダン・ロック/ハード・ロックの文脈で、Alice in Chains以降の重さと、ラジオ向けの押し出しを両立させるバンドとして見られてきたが、『Dear God』ではそのバランスの中で、より告白的な書き方が目立つ。
バンドの位置づけと文脈
このアルバムは、The Pretty Recklessにとって単なる新作というより、活動の積み重ねを更新する一枚でもある。2025年の「For I Am Death」を含みつつ、2026年の本編としてまとめられたことで、近年の制作とツアーの流れがそのまま作品化された形。さらに、2025年のRock and Roll Hall of FameでのSoundgarden関連出演や、2026年のMusiCares出演など、バンド周辺の大きな舞台経験も続いていた時期で、そうした外側の動きが、結果的にこのアルバムの勢いを支えていたことがうかがえる。
同時代のロックの中では、The Pretty Recklessは派手な実験よりも、歌、リフ、リズムの直線的な強さで勝負するタイプ。比較対象としては、90年代以降のオルタナティヴ・ロックやポスト・グランジの流れ、あるいはAC/DCのような硬質なロックの推進力が思い浮かぶが、『Dear God』ではその要素が比較的わかりやすく結びついている。Taylor Momsenの声が前に出た瞬間に曲の輪郭が決まる感覚は、このバンドならではのものだ。
盤の情報と流通
この盤はUSプレスで、ジャケットやラベルには14曲表記、盤面はMade in U.S.A.。カタログ番号は背表紙にFEAR05177、バーコードステッカーにFEAR05293が記載されている。流通面ではインディー・レコードストア限定の要素があり、カセット版も複数のカラー仕様で展開されている。バリエーションの多さは、近年のロック作品らしいコレクター向けの動きとしても目を引く。
『Dear God』は、The Pretty Recklessの現在地をそのまま記録したようなアルバム。勢いのある曲、個人的な言葉、長めの制作期間、そのすべてが作品の性格に反映されている。華やかさよりも、積み重ねた時間が音に残るタイプの一枚だ。
トラックリスト
- A1 Life Evermore Pt. 2
- A2 For I Am Death
- A3 When I Wake Up
- A4 Love Me
- B5 Dragonfire
- B6 Dear God
- B7 Life Evermore Pt. 3
- B8 About You
- C9 Spell On You
- C10 Rollercoaster Of Life
- C11 Eye Of The Storm
- D12 Devil In Disguise
- D13 Dark Days
- D14 Life Evermore Pt. 1