Strawberry Path - When The Raven Has Come To The Earth (1971)
Strawberry Path『When The Raven Has Come To The Earth』レビュー
ストロベリー・パスの『When The Raven Has Come To The Earth』は、1971年に発表された日本の初期ハードロック/プログレッシブ・ロックを語るうえで外せない一枚だ。演奏の中心にいるのは、成毛滋とつのだ☆ひろ。ギター、オルガン、ベースを広く担う成毛の動きと、ドラムとヴォーカルを受け持つつのだの存在感が、そのまま作品の骨格になっている。日本で生まれた作品でありながら、当時のブリティッシュ・ロック、とくに重たい質感のハードロックに強く接続している点が、このアルバムの大きな特徴になっている。
2022年にユニバーサル・ミュージックから出たこの盤は、オリジナルの1971年盤を現代のフォーマットで聴ける再登場盤として位置づけられる。作品そのものは1971年の記録であり、2022年盤はその再発にあたる。ジャケットや収録曲の並びに、当時の空気がそのまま残っているのも面白いところで、録音年代の古さよりも、演奏の押し出しの強さが先に立つ。
作品の輪郭
アルバムを通してまず目につくのは、成毛滋のギターとハモンド・オルガンの使い方だ。単に歪ませたギターが前に出るだけではなく、キーボードが厚みを作り、その上でリフが前進していく。ブルースの型を土台にしながら、曲の展開にはプログレッシブ・ロック的な組み立ても見える。演奏の熱量は高いが、ただ勢いだけで押し切るタイプではなく、曲ごとの場面転換がはっきりしている。
つのだ☆ひろのドラムとヴォーカルも重要だ。リズムは重く、音数で埋めるというより、拍の置き方で曲を引っ張る印象が強い。ヴォーカルは英語詞中心の時代的な空気を持ちながら、音の密度に負けていない。日本のロックがまだ輸入音楽の影響を強く受けていた時期に、ここまで踏み込んだ音像を作っていたこと自体が、この作品の価値になっている。
「Mary Jane on My Mind」の存在感
収録曲の中では「Mary Jane on My Mind」がよく知られている。後年に単独で取り上げられた経緯もあり、このアルバムの中でも特に印象に残る曲として扱われてきた。曲単体での輪郭が立っている一方で、アルバム全体の流れの中でも浮かない。こうした曲があることで、作品全体の記憶が残りやすくなっている。
日本ロック史の中での位置
ストロベリー・パスは、のちのフライド・エッグへつながる前史としても見られる。つまり、この作品は単独の名盤としてだけでなく、その後の日本のヘヴィ・ロックやプログレの流れを考えるうえでの起点のひとつでもある。海外の文脈でいえば、英国のハードロックやアート・ロックの影響を受けながら、日本独自のバンド編成と録音感覚でまとめた作品。比較対象としては、同時代の英ロックの重さや、初期プログレの組曲性が思い浮かぶが、模倣にとどまらない日本のロックとしての手触りがある。
当時の一般的なヒット作というより、後年に再評価が進んだタイプの作品でもある。商業的な数字より、作品史の中で語られることが多い。そうした背景を踏まえると、このアルバムは「流行した盤」ではなく、「あとから重要性が見えてきた盤」として扱うのが自然だ。
2022年盤について
2022年の再発盤では、1971年当時のオリジナル作品を改めて手に取りやすくなっている。初出時の空気をそのまま持つ音源を、現代の流通で聴けることに意味がある。録音の時代性ははっきりしているが、ギター、オルガン、ドラムのぶつかり方には古びにくい部分がある。ハードロックの直進性と、プログレ的な構成感、その両方が同居しているためだ。
まとめ
『When The Raven Has Come To The Earth』は、成毛滋とつのだ☆ひろを中心に、日本の初期ハードロック/プログレッシブ・ロックがどこまで踏み込めたかを示す作品だ。ブルース・ロックの土台、重いギター、ハモンド・オルガンの厚み、曲の展開の作り方。そうした要素が、1971年という時代の中で一つにまとまっている。後の日本ロック史を考えるときにも、ここはかなり重要な通過点として見えてくる。
トラックリスト
- A1 I Gotta See My Gypsy Woman 5:20
- A2 Woman Called Yellow "Z" 5:52
- A3 The Second Fate 4:50
- A4 Five More Pennies 6:47
- B1 Maximum Speed Of Muji Bird 1:10
- B2 Leave Me Woman 4:42
- B3 Mary Jane On My Mind 5:10
- B4 Spherical Illusion 5:55
- B5 When The Raven Has Come To The Earth 6:40