Boston - Boston (1976)
Boston / 『Boston』
Bostonのデビュー・アルバム『Boston』は、1976年にEpicから登場した作品で、後に邦題『幻想飛行』でも知られる。中心人物のトム・ショルツは、MITで修士号を取り、Polaroidで製品開発のエンジニアとして働きながら曲作りを進めていた。デビュー時のメンバーは、ショルツ、ボーカルのブラッド・デルプ、ギターのバリー・グドロー、ベースのフラン・シーハン、ドラムのシブ・ハッシャン。
制作背景・エピソード
ショルツはギターのグドローがいたバンドMother's Milkで曲を書くようになり、ジョー・ウォルシュの曲でオーディションを受けたデルプがヴォーカリストに加わった。1973年には6曲入りのデモが出回ったが、RCA、Capitol、Atlantic、Elektraに断られ、EpicのLennie Petzeにも「新しいものが何もない」と却下された。1975年には、ショルツが自宅の地下室でひとりデモを録音し、家の頭金のために貯めていた資金で中古の12トラック・レコーダーを買った。テープはPolaroidの同僚のいとこを通じてABC RecordsのCharles McKenzieに届き、そこから独立系プロモーターのPaul Ahern、さらにEpicのPetzeへと渡った。1975年11月、ボストンの倉庫で行ったショーケースを経て、Epicとの契約が決まっている。
Epicは本格的なスタジオでの録り直しを求め、プロデューサーにJohn Boylanが加わった。バンド名を「Boston」にする提案もBoylanによるものだった。レーベルを納得させるため、ショルツ以外のメンバーが西海岸で「Let Me Take You Home Tonight」を録音し、ショルツはこれを「おとり」と呼んでいる。実際には、アルバムの大半がショルツの自宅地下室「Foxglove Studios」で作られた。デルプのボーカルはロサンゼルスのCapitol Studiosで録音されている。
収録曲の成り立ちも具体的だ。「More Than A Feeling」は完成まで5年かかった曲で、ショルツはThe Left Bankeの「Walk Away Renée」を主なインスピレーションに挙げている。歌詞に出てくるMarianneの名は、いとこから取られたもの。「Peace Of Mind」はPolaroidの上司たちについて書かれた曲。「Rock & Roll Band」はMother's Milk時代のデモに由来し、「Smokin'」は1973年に「Shakin'」の題で書かれた曲で、デルプとの共作。「Hitch A Ride」の原題は「San Francisco Day」で、オルガンの音程が曲がる部分は、ショルツがテープのリールを指で押さえて遅くして作った。「Something About You」の原題は「Life Isn't Easy」、「Long Time」のイントロは1972年までさかのぼる。
演奏面では、ショルツがほぼすべての楽器を担い、元ドラマーのJim Masdeaが叩いたのは「Rock & Roll Band」のみ。それ以外のドラムはシブ・ハッシャンが担当した。グドローは「Long Time」と「Let Me Take You Home Tonight」でギター・ソロを弾き、フラン・シーハンは「Foreplay」と「Let Me Take You Home Tonight」でベースを担当している。ショルツは、ヒートシンクを使った自作の「パワーソーク」で小音量でも強いディストーションを得たり、固定したワウ・ペダルを中域のイコライザーとして使ったりと、機材にも工夫を凝らした。ミックスではショルツがギターを大きくしすぎて歌が聞き取りにくい箇所もあり、Boylanはそれが二人の唯一の本当の衝突だったと振り返っている。制作費は数千ドルだったという。
時代の文脈
1976年8月に発売されたこのアルバムは、クリーヴランドで火が付き、翌週には392局で取り上げられた。ブルースを基にしたハード・ロックから、メロディアスなフック、重ねたコーラス、アコースティックとエレクトリックの対比を組み合わせた、作り込まれたスタジオ・サウンドへと向かう流れの中で語られている。ショルツは、クラシック音楽やThe Kinks、The Yardbirds、Blue Cheer、The Left Bankeを下敷きにしていたという。
ジャケットの宇宙船のようなギターはショルツのアイデアで、デザインはPaula Scher、イラストはRoger Huyssen、ロゴはGerard Huerta。グラミー賞の最優秀新人賞にノミネートされたが、受賞はStarland Vocal Bandだった。全米では最高3位、シングル「More Than A Feeling」は全米5位を記録している。
後世への影響
このアルバムは、いわゆる「プロデューサー・ロック」のサウンドを確立した作品として扱われている。1992年のレディング・フェスティバルではNirvanaが「Smells Like Teen Spirit」の冒頭で「More Than A Feeling」の一部を弾き、両曲のギター・リフの近さをネタにしていた。「More Than A Feeling」はRolling Stoneの「史上最も偉大な500曲」(2021年版)で212位に入り、アルバム自体もロックの殿堂の「Definitive 200」で43位、『死ぬまでに聴きたいアルバム1001枚』にも選ばれている。
収録8曲は今もクラシック・ロック・ラジオの定番とされ、発売50周年に合わせて、ショルツとGary Pihlが復元・リマスターした、Epic契約前の地下室デモを収めた拡大版LPの発売も発表されている。RIAAでは17×プラチナに認定され、アメリカのデビュー・アルバムとしてはGuns N' Rosesの『Appetite for Destruction』に次ぐ売上とされている。
トラックリスト
- A1 More Than A Feeling 4:44
- A2 Peace Of Mind 4:55
- A3 Foreplay/Long Time 7:56
- B1 Rock & Roll Band 2:59
- B2 Smokin' 4:44
- B3 Hitch A Ride 3:18
- B4 Something About You 4:19
- B5 Let Me Take You Home Tonight 4:12
動画プレイリスト
このアーティストについて
Boston(ボストン)は、1976年にアメリカ・マサチューセッツ州ボストンで結成されたハード・ロック/アリーナ・ロック・バンドだ。中心人物は、MIT出...
Boston のプロフィール・作品一覧