Heart - Heart (1985)
Heart『Heart』
Heartの8作目にあたる『Heart』は、1985年にCapitol Recordsから出た作品で、バンドにとってCapitol移籍後の第1作でもある。1983年以降の大きな編成変更とマネジメント刷新を経たあとの再出発の作品で、アンは2022年のインタビューで、自分たちで書いた曲があまり多くなかったので、タイトルを決めるのが難しかったと話している。録音は1985年1月から4月にかけて、ロサンゼルスのRecord PlantとサウサリートのPlant Studiosで行われ、プロデュースとエンジニアはRon Nevisonが担当した。
制作背景と曲作りの変化
この時期のHeartは、アン・ウィルソンが「大きなメンバー交代とマネジメントの変更のあと、浜に打ち上げられたような状態だった」と振り返る状況にあった。前作『Passionworks』は思うような結果を残せず、Howard Leeseによれば『Thriller』と同時期だったため、レコードのプレスすらままならなかったという。そうした流れのなかで契約を失い、Capitolで彼女たちを迎えたのがDon Griersonだった。アルバムには彼への謝辞も入っている。アンは「彼は、私たち自身がまだ考えてもいなかったバンドのビジョンを持っていた」と語り、期待は「それほど高くなかった」が、「ヒット・レコードを作らなければ、レコード契約を失うかもしれないとわかっていた」と振り返っている。新しいマネージャーのTrudy Greenは、衣装やヘア、メイクを含めてバンドに新しいイメージを打ち出させた。
それまでウィルソン姉妹はすべての曲を自分たちで書いてきたが、そのスタイルはもうラジオでかからなくなっており、本作では外部ソングライターの曲を多く取り入れている。アンは後年、この方向転換を受け入れるには「大ハンマーで頭を2、3回殴られる」必要があったと語っている。収録曲では「What About Love」がTorontoの曲、「If Looks Could Kill」がPamala Stanleyの曲のカバー。「These Dreams」はBernie TaupinとMartin Pageの共作で、もともとはStevie Nicks向けに書かれたが使われず、Heart版が最初に録音・発売されたものとされる。さらに「Never」と「All Eyes」はHolly KnightとGene Blochに、アン、ナンシー、Sue Ennisの3人による共同名義「Connie」が加わった共作、「Nothin' At All」はMark Muellerの曲だ。
参加ミュージシャンとしては、Grace SlickとMickey Thomasがコーラスで加わり、Holly Knightがキーボード、Peter Wolfがシンセサイザーとピアノを担当している。「These Dreams」はナンシー・ウィルソンが初めてリード・ヴォーカルを取ったシングルで、録音時に風邪をひいて声がかすれていたため、後でプロデューサーから「また風邪をひけない?」と聞かれたという。作者のMartin Pageは、Orchestral Manoeuvres in the Dark風の「エレクトリックな讃美歌」をイメージしていた。曲は、発売直前に白血病で亡くなったナンシーの友人Sharon Hessに捧げられている。
時代の文脈とキャリアの中での位置
『Heart』は1985年6月21日に発売された。アンは、レーベル側が「新しいビデオの世界」を作っていた一方で、自分たちは「アメリカの真ん中にいた」と語っている。実際、「These Dreams」のビデオはJeff Steinが監督し、MTVで繰り返し流された。プールサイドでナンシーが歌いギターを弾き、アンは影の中から歌う構成だった。
作品は全米1位を記録し、カナダ3位、全英19位。RIAAでは5×プラチナ認定を受け、グラミー賞の最優秀ロック・パフォーマンス(デュオ/グループ)にもノミネートされた。シングルでは「What About Love」「Never」「These Dreams」「Nothin' At All」が全米トップ10入りし、「These Dreams」は1986年3月にバンド初の全米1位シングルになっている。
その後の受け止められ方
本作はHeartの経歴のなかで唯一の全米1位アルバムとなった。アン・ウィルソンは、80年代の「何でもやる」という勢いが「かなりすごいグループ」を作り上げたと語っている一方で、「他人の曲で1位を取った」ことを「ある種の悪魔との取引」と表現したこともある。ただし、それも自分たちの自由意志で行ったことだと強調している。のちに外部曲の使用が当たり前になっていくにつれ、バンドはここまでだと判断したという発言も残っている。2024年にはLoudwireが1985年の最高のハード・ロック・アルバムに選出している。
トラックリスト
- A1 If Looks Could Kill 3:40
- A2 What About Love 3:41
- A3 Never 4:05
- A4 These Dreams 4:12
- A5 The Wolf 4:03
- B1 All Eyes 3:55
- B2 Nobody Home 4:01
- B3 Nothin' At All 4:08
- B4 What He Don't Know 3:40
- B5 Shell Shock 3:42
動画プレイリスト
このアーティストについて
Heartは、1967年にシアトルで結成されたロック・バンドだ。前身は「The Army」で、その後にWhite Heart、Hocus Pocusと改名を重ね、1972年に現在のHea...
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