Queen - A Day At The Races (1976)
Queen『A Day At The Races』
Queenの5作目のスタジオ・アルバム『A Day At The Races』は、前作『A Night at the Opera』と同じくマルクス兄弟の映画からタイトルを取った作品で、英国盤はEMIから1976年に登場した。ジャケットの内側には「No Synths!」の表記があり、録音は1976年7月から11月にかけて、イングランドで行われている。盤のクレジットには「Made and printed in Great Britain」とあり、厚手のカード製インナー・スリーブが付属していた。
制作背景と録音の流れ
この作品では、前作までの4作を手がけたRoy Thomas Bakerとの契約が切れたため、バンドが初めて完全に自分たちだけでプロデュースを担当した。エンジニアはMike StoneとGary Langanが支え、Stoneは「Good Old-Fashioned Lover Boy」のブリッジの一部を歌っている。録音は1976年6月にRidge Farmでのリハーサルから始まり、The Manor、Sarm East、Wessex Soundなどを使って進められた。セッションは7月12日から8月24日、9月5日から11月19日までの2期に分かれ、約16週と、それまでで最も長い制作期間になった。夏のツアー中にもSarmでオーバーダブが続き、9月18日にはハイド・パークでのコンサートも挟まれている。
曲ごとの来歴もはっきりしている。「Tie Your Mother Down」はBrian Mayが1968年にテネリフェ島で書いた曲で、Freddie Mercuryが元のバージョンを気に入ったため、歌詞とサビが残された。冒頭は無限に上昇していくように聞こえるシェパード・トーンで始まり、アルバムの最後の「Teo Torriatte」もこのシェパード・トーンの再現で終わる。「Somebody To Love」はゴスペル、特にAretha Franklinに触発された曲として語られており、メンバーの声を何度も重ねて大人数の聖歌隊のように仕上げている。「The Millionaire Waltz」は当時のマネージャーJohn Reidについての曲で、John Deaconのベースが前に出る場面がある。「Long Away」はMayが書いて自ら歌い、Burnsの12弦ギターを使った。「White Man」はヨーロッパ人の入植で苦しめられたアメリカ先住民の視点で書かれたMayの曲で、バンドの中でも特に重い曲のひとつ。「You And I」はDeacon、「Drowse」はRoger Taylorの作品で、それぞれ本作での唯一の曲になっている。
アルバムの最後を飾る「Teo Torriatte (Let Us Cling Together)」は、日本のファンへの感謝を込めてMayが書いた曲で、サビの2回分が日本語で歌われる。2018年のNHKのインタビューでは、英語のサビは早い段階で書き上げた一方、日本語詞は通訳で友人のChika Kujiraokaに付けてもらい、完成までかなり時間がかかったと語っている。アルバムには彼女への謝辞も記されている。
時代の文脈とリリース時の位置づけ
『A Day At The Races』は1976年12月10日にEMIから発売され、米国ではElektraから出た。先行シングル「Somebody To Love」は全英2位を記録し、アルバム自体は全英1位、日本1位、オランダ1位、全米5位を記録している。シングルでは「Tie Your Mother Down」が全英31位、「Good Old-Fashioned Lover Boy」が全英17位。評価は分かれ、The Washington Postは「ヘヴィ・メタルのロック曲とクラシックの影響を受けた曲」の組み合わせを称え、Circusは「今やばかげている」と書いた。
後世への足跡
「Teo Torriatte (Let Us Cling Together)」は1977年3月25日に日本だけでシングル化され、オリコン49位を記録した。ライブではFreddie Mercury在籍時に1979年、1981年、1982年の日本公演でのみ演奏されている。2011年の東日本大震災後にはチャリティー・アルバム『Songs for Japan』に収録され、2021年の東京オリンピック開会式では聖火リレーの映像の伴奏に使われた。2020年の日本でのファン投票では、「Bohemian Rhapsody」や「Killer Queen」を上回る3位に入っている。アルバム全体についても、後年の批評ではChicago TribuneのGreg Kotがバンドの芸術的な頂点のひとつに挙げている。
トラックリスト
- A1 Tie Your Mother Down
- A2 You Take My Breath Away
- A3 Long Away
- A4 The Millionaire Waltz
- A5 You And I
- B1 Somebody To Love
- B2 White Man
- B3 Good Old-Fashioned Lover Boy
- B4 Drowse
- B5 Teo Torriatte (Let Us Cling Together)
動画プレイリスト
このアーティストについて
Queenは、1970年にロンドンで結成されたイギリスのロックバンドだ。前身バンドのSmileで活動していたブライアン・メイとロジャー・テイラーに、フレデ...
Queen のプロフィール・作品一覧Queen の他のレビュー