Chicago - Chicago III (1971)
Chicago 1971

Chicago - Chicago III (1971)

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Chicago『Chicago III』(1971)

シカゴの『Chicago III』は、1971年にColumbiaから発表された3作目のアルバムで、2枚組の大作として組まれている。デビュー作『Chicago Transit Authority』、続く『Chicago』(通称『Chicago II』)に続き、短い間隔で立て続けに2枚組を出した時期の作品で、バンドの勢いと制作規模の大きさがそのまま形になった1枚だ。ブラス・ロックを軸にしながら、ポップ、ブルース、ジャズ・ロックの要素を広く取り込み、曲単位の聴きやすさと組曲的な構成が同居している。

作品の位置づけ

この時期のChicagoは、ホーン・セクションを前面に出した編成をロックの中で成立させた代表格として見られていた。『Chicago III』では、その持ち味を保ちながら、より長い構成やテーマ性のある曲に踏み込んでいる。ロバート・ラム、ジェイムズ・パンコウ、テリー・キャスらがそれぞれ曲を持ち寄り、バンド内の作家性がはっきり分かる作りになっているのも特徴だ。

録音は1970年6月から12月にかけてニューヨークのCBS 30th Street Studioで行われ、プロデュースは初期からバンドを支えてきたジェームズ・ウィリアム・ガルシオ。ツアーが非常に多かった時期でもあり、メンバーが疲労した状態でスタジオに入ったという回想も残っている。そうした背景もあってか、演奏には勢いだけでなく、やや張りつめた空気が感じられる。

曲の構成と聴きどころ

収録曲は、単独で完結する曲と、複数パートから成る組曲が交互に並ぶ構成になっている。ロバート・ラムの「Travel Suite」は、ツアー生活の退屈さ、孤独、美しさを題材にした組曲で、バンドの移動と演奏の繰り返しがそのまま音になったような流れを持つ。ジェイムズ・パンコウの「Elegy」は環境問題への意識を反映した組曲として知られ、同時代のロックが扱っていた社会的テーマの一端も見える。

テリー・キャスの「An Hour in the Shower」も重要な曲で、ホーンの切れ味とギターの推進力が同じ位置で動く。Chicagoの魅力は、ブラスが伴奏に回るのではなく、曲の骨格そのものを作っているところにあるが、このアルバムではその性格がよく出ている。ジャズ・ロックの複雑さを持ちながら、メロディの輪郭は比較的はっきりしていて、長尺でも流れが途切れにくい。

シングルと代表曲

アルバムからは「Free」がシングル・ヒットしている。ロバート・ラム作のこの曲は、『Travel Suite』の一部にあたり、Billboard Hot 100で20位を記録した。ホーンのフレーズとコーラスの動きが分かりやすく、Chicagoらしさがまとまった1曲だ。もう1曲、ピーター・セテラとダニー・セラフィンの共作「Lowdown」もシングルとして出され、こちらもチャート入りしている。

アルバム全体としては、Billboard 200で最高2位を記録し、全英でも9位に入った。発売後まもなくゴールド認定を受け、その後プラチナにも達している。商業面でも、当時のChicagoの存在感を示す作品だった。

同時代の文脈

1971年のアメリカン・ロックには、長めの組曲やコンセプト志向の作品が多く見られるが、『Chicago III』はその流れを、ホーン・セクションを持つバンドの文法で展開している点が面白い。似た時代感を共有するバンドとしてはBlood, Sweat & Tearsのようなブラス・ロック勢が挙がるが、Chicagoはより作曲面の分担が明確で、ポップソングとしての輪郭も保っている。フリー・インプロヴィゼーションやミュージック・コンクレート的な要素まで含む一方で、アルバムとしてのまとまりを崩していないのがこの作品の持ち味だ。

当時の批評は一様ではなく、部分ごとに評価が分かれた記録が残っている。とはいえ、バンドの規模感、作曲の幅、ホーン・アンサンブルの精度が一体になった作品であることは変わらない。『Chicago III』は、初期Chicagoが持っていた実験性と大衆性、その両方が強く出た2枚組として位置づけられる1枚だ。

USオリジナル盤について

US盤の初回リリースはゲートフォールド仕様で、大型の折り込みポスターと専用インナー・スリーブが付属していた。ラベルはColumbiaの1970年代初頭らしい仕様で、カタログ番号はC2 30110。ランアウトには「S」が入るカッティングがあり、Customatrixの刻印と手書きの刻みが混在している。オリジナル盤らしい物理的な情報も多く、2枚組の大作として丁寧にパッケージされたことが伝わる。

『Chicago III』は、Chicagoが初期に築いたブラス・ロックの形を、より大きなスケールへ押し広げたアルバムとして残っている。曲ごとの色合いがはっきりしていて、組曲の流れとシングル向きの曲が同居するところに、この時期のバンドの強さがある。

トラックリスト

  1. A1 Sing A Mean Tune Kid 9:15
  2. A2 Loneliness Is Just A Word 2:35
  3. A3 What Else Can I Say 3:11
  4. A4 I Don't Want Your Money 4:48
  5. Travel Suite
  6. C1 Mother 4:28
  7. C2 Lowdown 3:34
  8. An Hour In The Shower
  9. Elegy

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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